近年では、事業承継や経営の安定化を求めて、会社売却を選択する中小企業が増えています。
そのような時流の中で、会社売却を検討し始める中小企業の経営者も多いのではないでしょうか。
中には、業績が悪化してしまった会社をM&Aで売却し、なんとか経営を立て直したいと考えている方もいるかもしれません。
そこで気になるのが「倒産しそうな会社はM&Aで売却できるのか」という点です。
この記事では上記の疑問にお答えし、倒産しそうな会社を売却するコツやメリットについても解説しています。
- 倒産しそうな会社は売却できるのか
- 倒産しそうな会社を売却するコツ
- 倒産しそうな会社を売却するメリット
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:倒産しそうな会社でもM&Aで売却できる?
結論からいうと、倒産しそうな会社をM&Aで売却することは可能です。ただし、困難をともなうケースがほとんどであることを念頭に置いてください。
難しいけど、売却への希望はあるんですね。
1-1 会社が倒産しそうな状態について
実は「倒産」という言葉は、厳密に定義された用語ではありません。しかし一般的には資金繰りに窮し、事業の継続が困難になる状態を指しています。
そしてその一歩手前の状態こそが、会社が倒産しそうな状態といえるのです。
具体的に以下の状態に当てはまる場合は、会社が倒産しそうな状態にあると考えられるでしょう。
- 債務の弁済ができなくなりそう
- 自ら振出した約束手形や小切手が不渡りになりそう
- 銀行取引停止処分になりそう
- 債務超過に陥った
1-2 倒産しそうな会社でもM&Aによる売却は可能
前述の通り倒産しそうな会社、つまり資金繰りが行き詰まりそうになっている会社でも、M&Aによる売却は可能です。
ただし買い手にとって倒産しそうな会社を買収するということは、かなりのリスクを伴います。
倒産しそうな会社を買収する買い手の気持ちとしては、よっぽど再建に自信があるか、リスクを冒してでも買収したい資産があるかのどちらかだといえるでしょう。
なるほど。買い手にとってリスク以上の魅力がある会社なら、売却への希望が持てるというわけですね。
その通りです。自社の強みや資産が相手の弱みを補える買い手を探すと、売却できる可能性がアップしますよ。
2章:倒産しそうな会社を売却するコツ
倒産しそうな会社の売却活動は、困難を極めることが予想されます。ただしいくつかのポイントを押さえておくと、比較的スムーズに買い手が見つかる可能性があります。
- 売却価格にこだわらない
- 従業員に不安を抱かせないよう気を配る
- 場合によっては事業譲渡を選択する
- 今すぐ会社売却活動を開始する
上記の各項目について、それぞれ詳しくみていきましょう。
2-1 売却価格にこだわらない
今にも倒産しそうな会社を売却したいなら、売却価格にこだわっている場合ではありません。
買収してもらえるだけで御の字だと考えよう
中小企業の場合は会社が倒産すると、社長個人の破産をともなうケースがほとんどです。
極論ではありますが、M&Aで売却して少額でも売却益を受け取るか、ご自身の破産かの2択で考えてみてください。
破産との2択だったら断然M&Aで売却するに軍配が上がりますね。
会社を守るためにも、ご自身を守るためにも、価格にこだわらずとにかく売り切ることを目的にしましょう。
2-2 従業員に不安を抱かせないよう気を配る
毎日働いている従業員たちは、何となく肌で会社の雰囲気を察知しているものです。
倒産しそうな会社に勤めている従業員の中には「ウチの会社、ヤバいのでは?」とうすうす感じている従業員も出てくるでしょう。
M&Aで会社を売却する際には、従業員も大切な資産として譲渡対象になります。
したがってM&A前に退職者が出てしまうことは、会社にとって資産の流出に他なりません。そのため、従業員に不安を抱かせないような配慮が必要です。
具体的にはどうしたらよいのでしょうか。
ネガティブな発言はしない・常に胸を張って堂々と振舞う・従業員には積極的に明るく声掛けをする、などの行動を心がけると良いですよ。
2-3 場合によっては事業譲渡を選択する
倒産しそうな会社は、多額の負債を抱えているケースが大半です。
抱えている負債の金額によっては、売却が難しいケースも
負債の大きさが売却のネックになっていると考えられる場合は、負債を会社に残したまま事業のみを売却する事業譲渡を選択するのも1つの方法です。
会社が行っている事業の一部または全部を第三者へ譲渡するM&Aスキーム
なるほど。負債がなければ買収してくれる企業が現れるかもしれないということですね。
その通りです。得た売却益で負債を返済し、会社を清算する流れになりますよ。
2-4 今すぐ会社売却活動を開始する
倒産しそうな会社を売却したいのであれば、今すぐ売却活動を開始しましょう。
迷っている間やM&Aプロセスを進めている間に更に経営状態が悪化し、倒産せざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。
M&Aで会社売却を行う際は、最低でもおよそ6ヶ月~1年半の期間が必要です。その間、買い手企業へ経営を引き継ぐまでは、何としてでも倒産を避けなければなりません。
迷っている間にもどんどん時間は流れています。一刻も早く売却活動を始めてください。
倒産しそうな会社はただでさえ売却が難しいですものね。尚更迷っているヒマはありませんね。
3章:倒産しそうな会社を売却するメリット
倒産しそうな会社の売却に成功したら、売り手である社長(経営者)には多くのメリットがもたらされます。
むしろメリットしかないといえます。会社の倒産と比較したら、間違いなく天国と地獄ですよ。
3-1 倒産を免れられる
会社売却後は、買い手が持っている経営資源を使用できるようになります。具体的には、主に以下の項目が挙げられます。
- 資本力
- 技術力
- 営業力
- 販売網
- 仕入れルート
- ブランド力 など
その結果、金融機関からの借入がしやすくなる・新製品の開発に成功する・コスト削減に成功するなどの良い影響を受け、業績の回復が見込まれるでしょう。
業績が回復すれば倒産が免れられますね。
その通りです。そのためには自社にない経営資源を持っていたり、弱みを補ってくれる要素を持っていたりする買い手を選ぶことが重要ですよ。
3-2 経営者個人の破産を避けられる
中小企業の倒産は、ほとんどのケースで経営者個人の破産手続きがセットになっています。
なぜなら、中小企業の経営者の多くは、会社の連帯保証人になっているからです。
そのため会社が倒産すると、負債の支払いが社長個人にも請求されることとなり、ひいては社長個人の破産へとつながるのです。
M&Aで会社を売却し倒産をまぬがれることで、経営者個人の破産も避けられるというわけですね。
その通りです。さらにM&Aの交渉次第では、社長の連帯保証を解除できる可能性が高いですよ。
3-3 従業員の雇用が守られる
会社が倒産すれば、当然ながら従業員は全員解雇となります。しかしM&Aで会社を売却した場合、従業員の雇用は基本的にそのまま引き継がれます。
従業員は、M&A後もそのままの条件で働き続けられるということです。
なるほど。会社が潰れない限り従業員の雇用は守られるのですね。さらにM&Aがきっかけで業績が回復すれば、従業員の未来も安泰ですね。
3-4 取引先に迷惑を掛けずに済む
M&Aで会社を売却する際には、取引先との関係もそのまま継続となるケースが一般的です。
そのため取引先にも迷惑をかけずに、事業の継続が可能になる可能性が高いのです。
倒産したら取引先との関係も終わってしまいますもんね…。
それだけではありません。倒産したら買掛金の支払いができなくなってしまうなど、取引先に多大な迷惑をかけてしまう可能性がありますよ。
3-5 経営者の威厳が保たれる
会社が倒産すると、経営者は会社を潰した人物として、後ろ指を指される可能性が高いでしょう。
さらに前述のとおり、中小企業の倒産はほとんどのケースで社長個人の破産をともないます。
会社を倒産させたうえに自身も破産となると、経営者としての威厳や信頼などが完全に失墜するであろうことは、想像に難くありません。
プライドがズタボロになりそうですね…。
しかしM&Aで会社売却を成功させれば会社は存続し、さらなる発展が期待できます。その結果として経営者の威厳は保たれ、平和で穏やかな引退が実現するのです。
まとめ
倒産しそうな会社でも、M&Aによる売却は可能です。ただし、売却活動は困難を極めることが予想されるため、覚悟が必要です。
倒産しそうな会社を売却するためのポイントは、主に以下の4点が挙げられます。
- 売却価格にこだわらない
- 従業員に不安を抱かせないよう細心の注意を払う
- 場合によっては事業譲渡に切り替える
- 今すぐ売却活動を開始する
倒産しそうな会社を売却したいのであれば、条件等にこだわらず「とにかく売り切る」ことを目標に売却活動を行いましょう。
倒産しそうな会社の売却に成功すると、倒産を免れるだけでなく、以下のメリットを得られるでしょう。
- 経営者個人の破産を避けられる
- 従業員の雇用が守られる
- 取引先に迷惑を掛けずに済む
- 経営者の威厳が保たれる
倒産は会社にとっても経営者にとっても最悪の結末であり、何としてでも避けるべき事態です。
万が一倒産の危機が迫っていると感じた際には、会社の立て直しと共に、M&Aでの売却を検討すると良いでしょう。
倒産の2文字が脳裏にチラついたら、とにかくすぐに専門家へ相談してください。