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M&Aの失敗事例17選|要因と失敗しないためのポイントも解説

Icatch094

M&Aは企業規模の大小を問わず、国内外で活発に行われている取引です。特に昨今では、後継者不足問題の解決をM&Aに求める中小企業の存在が増えています。

しかし実は、M&Aの全てが成功するとは限りません。

実際に失敗事例も多く、一度M&Aに失敗してしまうとその後買い手が付かなくなってしまうといった事例も後を絶ちません。

この記事ではM&Aの失敗事例を紹介し、失敗の要因と失敗しないためのポイントも併せて解説しています。

この記事をおすすめしたいのはこんな方
  • M&Aの失敗事例について知りたい方
  • M&Aの失敗事例から成功のポイントを学びたい方
齋藤さん

M&Aを検討中の方や、成功させたいと強く思っている方にもおすすめです。ぜひ参考にしてくださいね。

1章:M&Aにおける失敗とは?

悩む男性

まずは、M&Aにおける失敗とは何かを定義しておきましょう。

M&Aにおける失敗の定義
  • 金銭面において大きな損失やそれに伴う賠償請求が発生すること
  • M&A取引そのものが破談になること
  • M&Aがきっかけで会社の資産が著しく減少してしまうこと

M&Aにおいて金銭面の損失が発生するのは主に買い手側(譲受企業)です。

ここからは、M&Aが失敗した際に発生する金銭的な損失の種類についてを詳しくみていきましょう。

1-1 投資対効果が見合わない

M&Aの失敗としてまず挙げられるのが、企業を買収するために投じた投資金額を回収できないケースです。

これは、売り手企業に支払った買収金額が高すぎたために起こります。

その他にも、買収対象企業に対する調査が不十分だった場合には、実際の企業評価額よりも高い価格でM&Aを実行してしまう、いわゆる「高値掴み」が発生しています。

齋藤さん

M&Aで企業買収を実施する際には、買収対象となる企業を綿密かつ正確に調査することが必要不可欠なんですよ。

さらには適正価格での買収でも、M&A後に買い手が事業を上手く運営できず利益が減少してしまうケースが見られます。

この場合も結果的に高値掴みとなり、投資金額の回収が困難になってしまいます。

1-2 のれんの減損損失が起きる

事業譲渡でのM&Aを実行した場合、買収価格に付けられたのれん代を長期に渡り償却していくことになります。

のれん代とは

買収価格から譲渡対象企業の純資産額を引いた金額

しかしM&Aで当初想定していた効果が得られなかった場合、のれんの減損処理による損失計上を行わなければなりません。

社長

ざっくりいうと、M&Aの実施で買い手が損をしてしまったということですよね。

齋藤さん

そうですね。こちらもM&Aで投資した金額の回収が見込めない際に行われる処理です。M&Aで当初見込んでいた利益を生めなかった場合などに起こる失敗ですね。

1-3 買収後に粉飾が明らかになる

M&Aでは、買い手が買収対象企業に対してデューデリジェンス(買収監査)を実施します。

デューデリジェンスとは

買い手企業が買収対象企業の企業価値を調査すること。デューデリジェンスの結果を踏まえて、最終譲渡価格が決定される

デューデリジェンスでは通常、粉飾や簿外債務などの有無を徹底的に調査します。

しかし調査が不十分なままM&Aが成立した場合、取引完了後に売り手の粉飾や不正会計が見つかり、買い手企業の経営がかえって悪化してしまうケースがあるのです。

齋藤さん

最悪の場合、買い手が経営破綻に追い込まれる可能性もあるため注意が必要です。

社長

事前の調査を怠るとM&Aが失敗に終わるだけでなく、経営の破綻をも招いてしまう可能性があるということですね。怖いですね…。

2章:大企業におけるM&Aの失敗事例

ビル群のイメージ
社長

M&Aが失敗する可能性があるとはいえ、そうそう発生するケースではありませんよね?

齋藤さん

失敗の大小にもよりますが、意外と失敗事例が多いのも事実なのですよ。

中小企業のM&Aに関しては事実が公表されることが少ないため分かりませんが、大企業のM&Aにおける具体的な失敗例をみてみましょう。

失敗例を知ると、失敗しないための対策についてのヒントが得られるでしょう。

2-1 東芝

東芝は2006年、アメリカの原子力会社ウェスチングハウスを54億ドル(約6,600億円)で買収しました。

しかし2011年に起きた東日本大震災時の福島第一原発の事故により、世界中で原発の安全性が問われる事態となります。

さらに2015年には東芝の粉飾決算が明らかとなり、買収したウェスチングハウスが巨額の赤字を抱えていたことまでもが発覚します。

  • 競合に競り勝つために「高値掴み」をしてしまったこと
  • PMIをおろそかにしてしまったこと

上記の2点が原因で、東芝はウエスチングハウス関連で最大7,000億円に及ぶ巨額の損失を出したのです。

2-2 キリン

国内のビール市場で上位のシェアを誇るキリンホールディングスは、過去に海外M&Aに失敗しています。

キリンホールディングスは2011年11月に、ブラジルで第二位の市場シェアを持つビール企業スキンカリオールを総額3,000億円で買収しました。

当時のブラジルは年10%の成長が見込める市場でしたが、景気悪化の影響を受けてベルギーのビール企業との価格競争に敗れました。

その結果2015年12月期の決算でブラジルキリンは1,100億円の減損を計上し、上場以来初となる473億円の赤字を出したのです。

最終的にブラジルキリンは2017年6月にオランダのハイネケングループへ770億円で売却されました。

この買収の失敗要因は、市場調査の不足だといわれています。

2-3 第一三共

薬

大手製薬会社の第一三共は、2008年に約4,900億円でインドの医薬品メーカーであるランバクシー・ラボラトリーズを買収しました。

ところが第一三共によるランバクシーのTOB(株式公開買付)期間中に問題が発覚。

アメリカから30種以上の医薬品の輸入を禁止された結果、ランバクシーの株価は大暴落したのです。

その影響を受けて第一三共も3,595億円の評価損が発生し、2009年3月期連結決算で2,154億円の最終赤字を計上することになりました。

2-4 丸紅

総合商社の大手である丸紅は、2012年に同社の買収額としては過去最大となる約2,800億円で、アメリカの有名な穀物会社ガビロンを買収しました。

当時の丸紅は、ガビロンを含めたアメリカの複数拠点での穀物集荷事業と、中国を中心としたアジアでの販路拡大を期待して買収を実施しています。

しかし、丸紅の想定通りのスケジュールでシナジーを発揮できなかったこともあり、1,000億円と巨額だったガビロンののれん代のうち500億円の減損損失を出す結果となりました。

2-5 富士通

総合エレクトロニクスメーカーの富士通は、イギリスの国策IT事業であったICL株式の80%を1990年11月に1,890億円で取得。その後1998年に完全子会社化しました。

このM&Aにより富士通は電算機で世界2位となり、一旦は成功したように思われました。

さらに欧州の拠点とするべくドイツ企業などを買収しましたが、業績は徐々に悪化。2007年3月期の個別決算で2,900億円の評価損を計上することになったのです。

2-6 古河電工

2001年7月、非鉄金属メーカーの古河電気工業は、アメリカの光ファイバー事業のルーセント・テクノロジーを22.27億ドルで買収しました。

このM&Aで古川電工は、世界ファイバー業界で2位にまで上り詰めました。

M&A実行当時は成功したかにみえましたが、業績は徐々に悪化しピーク時の5分の1にまで減少。2004年3月期には1,000億円の評価損を計上しています。

2-7 日立

テレビ

2002年12月、大手の家電メーカー日立製作所は、アメリカのIBM社からハードディスク事業を20億ドルで買収しました。

しかし買収前後からHDDの価格破壊が進み、毎年100億円規模の赤字が発生する結果となったのです。

その後2011年に同じ事業を行うアメリカのウェスタン・デジタルへ約48億ドルで譲渡しましたが、年間にわたる累積赤字や工場への追加投資を考えると、採算割れしている可能性が高いといわれています。

2-8 NTTコミュニケーションズ

2000年8月、NTTコミュニケーションズはアメリカでインターネットサービスプロバイダ(ISP)・ホスティングサーバ提供事業を行うベリオを約6,000億円で買収しました。

NTTグループとして悲願となっていた海外進出を、このM&Aで果たしたのです。

しかし業績は悪化していき、M&Aからわずか1年後の2001年9月の中間期で、実に5,000億円もの減損損失を計上することとなりました。

2-9 三菱地所

1989年10月に実施された三菱地所によるロックフェラーセンターの買収もまた、海外M&Aの失敗事例として数えられます。当時の買収価格はおよそ2,200億円です。

このM&Aはバブル期の海外資産買いあさりの象徴的な例といえ、当時のニューヨーク市民から大きな反感を買いました。

しかしバブルの崩壊で莫大な赤字を出すことになり、1995年5月に連邦倒産法第11章を申請し、運営会社は破産。

三菱地所は買収した14棟のうち12棟を売却しますが、それでもなお1,500億円の損失を計上することになりました。

1989年は日本のバブル経済の絶頂で、いわゆるジャパンマネーが猛威をふるった時代です。

しかし翌年からバブルの崩壊が始まったため、三菱地所にとどまらず同じような失敗事例が数多く生まれています。

2-10 LIXIL

キッチン

住設機器メーカーのLIXILは、2014年にドイツのグローエを約4,000億円で買収。同時にグローエ子会社の中国企業ジョウユウも傘下に収めました。

しかし2015年4月にジョウユウの不正会計が発覚し、破産手続きへと追い込まれます。

その結果LIXILは関係会社投資の減損損失・債務保証関連損失などで、608億円の損害を出しました。

被買収企業に悪質な隠蔽があったとはいえ、デューデリジェンス不足が招いた失敗といえるでしょう。

2-11 HOYA

光学ガラス最大手のHOYAは、2007年にカメラ・医療機器メーカーのペンタックスに対しTOB(株式公開買付)を実施し、ペンタックス発行済株式の90.5%を取得しました。

そもそも両社は合併による統合に合意していました。

しかしペンタックス側が合併比率に難色を示したことを受けて、HOYAがTOBによる統合に切り替える提案をペンタックスに打診。

ところがペンタックスはHOYAとの合併を撤回することを宣言するとともに、併せて代表取締役社長の交代を発表したのです。

齋藤さん

合併に対して、ペンタックス内で対立があったことが予想できますね。

その後TOB受諾の合意書を締結するに至りましたが、業績は上がりませんでした。

2009年の3月連結決算では304億円の減損損失を計上し、2011年にデジタルカメラ事業はリコーに売却されました。

2-12 新生銀行

2004年9月、新生銀行は第三者割当増資を引き受けて、信販会社であるアプラスの普通株式の67%を350億円で取得。

さらにアプラスのメインバンクであるUFJ銀行(当時)から、300億円で優先株式を取得しました。

その後も優先株式を受けて業績の改善に努めましたが、過払金訴訟の影響を受けて業績が悪化し、1,010億円の減損損失を計上しています。

2-13 パナソニック

大手家電メーカーのパナソニックは、2009年にTOB(株式公開買付)を実施し三洋電機を子会社化しました。買付代金は約4,023億円です。

さらにその後も追加投資を行い、2011年には完全子会社化を実現しています。総投資額は約8,000億円ともいわれています。

このM&Aが成功すれば、年間売上高11兆円を超える国内最大手の電機メーカーとなるはずでしたが、その後わずか2年で三洋電機の企業価値は半分近く下落。

その結果、のれん代の内およそ2,500億円を減損処理するに至っています。

三洋電機の事業を立て直すため多くの時間と費用を費やしましたが、業績は回復せず。実質消滅するまでに追い込まれてしまいました。

3章:中小企業のM&A失敗事例

悩んでいる男性

前章では大企業のM&A失敗事例についてみてきましたが、続いて中小企業の失敗事例をいくつかみていきましょう。

ただしM&Aには秘密保持義務があるため、弊社での案件をご紹介することはできません。

そのためここでは、中小M&Aガイドラインに掲載されている失敗例についてご紹介します。

3-1 M&Aに着手する時期を逸した失敗例

A社は社長の高齢化と後継者不在の悩みを持っていましたが、多額の借入金がある中で日々の業務に追われ、事業承継が後回しになっている状態でした。

やがて後継者不在のまま資金繰りに行き詰まりを感じ、ようやく重い腰を上げてM&Aの準備を始めたのです。

幸いA社に関心を示す買い手候補が何社か現れましたが、買い手探しの間にも業績は悪化の一途をたどり、結局そのM&Aは不成立に終わっています。

後日A社は倒産。連帯保証人となっていた社長自身も、自己破産手続きの開始を余儀なくされることになりました。

齋藤さん

会社の”売り時”を逃してM&Aそのものの機会を逃してしまった典型的な例ですね。

3-2 .売り手の不誠実な対応による失敗例

運送業を営むB社は、社長が高齢化し後継者もいなかったことから、M&A仲介業者に相談をしました。

B社は地域内で有名な企業であったこともあり、すぐに買い手候補が見つかり基本合意契約の締結までを終えました。

しかし最終交渉の段階で、B社の社長が急に態度を硬化させ、条件の変更を要求。

じきに買い手はB社の態度に嫌気がさし、信頼関係が損なわれたことを理由にM&A交渉は破談に終わっています。

その後B社は他の企業とのM&Aも成立せず、数年後に社長は持病で他界。

他の役員が代表に就任したものの、業績の悪化を止められず廃業へと至っています。

齋藤さん

すんなり買い手が決まったことで、売り手の社長が「売り惜しみ」をしたのではないかといわれています。欲の出し過ぎは失敗の原因になるという事例ですね。

3-3 経営者一族間の不仲による失敗例

口論

他界した父からC社の社長業を受け継いだ長男のD氏は、次男のE氏を副社長に据えて共同で経営に取り組んでいました。

しかし数年後から経営が悪化。倒産の危機を感じた副社長のE氏が独断でM&A仲介会社へ相談しました。

業界での知名度が高かったこともあり、すぐに買い手候補が現れ、E氏と面談を行いました。

基本合意契約まであと一歩のところまで交渉が進んでいましたが、その話が社長であるD氏の耳に入り激怒。

D氏によってM&A交渉は打ち切られ、副社長であるE氏は解任されます。

その後、経営陣の内紛に不安を感じた従業員が次々に離職。それに伴い売上も減少し、最終的には廃業に至っています。

齋藤さん

M&Aに踏み出す前に経営陣の意思統一が必要だということがよく分かる失敗例ですね。

3-4 情報漏洩による失敗例

後継者の不在に悩んでいたF社は仲介会社に相談し、M&Aでの事業承継を選択しました。

F社の事業が順調だったこともあり、数か月後には理想的な買い手が現れ、とんとん拍子で基本合意契約の締結まで進展しました。

しかし社長のG氏は基本合意契約締結を事実上のM&A確定と見なし、誤って従業員や取引先に買い手企業名を含むM&A情報を漏らしてしまったのです。

この情報が買い手企業にも伝わり、結果としてM&Aが破談となりました。

その後G氏は90歳まで事業を続けましたが後継者が見つからず、最終的には廃業せざるを得ませんでした。

社長の勘違いが生んだ悲劇ともいえますが、本当は担当のM&Aコンサルタントがしっかりと釘を刺しておくべきだったのです。

つまり、M&A仲介会社選びを間違えた結果が招いた失敗例ともいえるでしょう。

4章:売り手側から見たM&A失敗要因

PCとネットワークイメージ

M&Aの失敗には様々な要因が考えられますが、ここでは売り手側の主な失敗要因を解説します。

中小企業のM&Aにおいて売り手は、会社もしくは事業の売却が目的です。しかし買い手がいれば成功するとは限りません。

なぜなら、M&Aのプロセスでは様々な要因で交渉が破談する可能性があるからです。

またたとえ交渉が成立したとしても、後にトラブルへと発展する要因も。これらの要因は適切に対処し、潰しておく必要があります。

齋藤さん

逆にいうと、失敗要因をあらかじめ潰しておけば、M&Aの成功率がグンと上がるということですよ。

社長

なるほど。失敗要因を知る=成功のポイントを知るということにもなるのですね。

4-1 買い手企業が優位に立った交渉

M&Aでは基本的に買い手の交渉力が強く、条件などの交渉を優位に進められます。

社長

なぜ買い手の交渉力の方が強いのでしょうか。

齋藤さん

それには2点の理由が挙げられます。以下で説明していきますね。

買い手の方が強い交渉力を持ちやすい理由
  1. 会社を「買収する側」だから
  2. すでにM&Aを経験している企業が多いから

売り手はとにかく会社を売りたいがために、買い手のいいなりになりやすいのです。買い手側も、ひどいケースでは「買ってあげる」という態度が見え見えの場合も。

また、売り手の多くはM&A交渉が初めての経験です。それに対して買い手は、経営戦略の一環として既にいくつかの企業買収を経験しているケースが多く存在します。

そのため、M&Aの知識が豊富で経験もある買い手が優位に立って交渉を進めやすいのです。

M&Aの条件等に関しては、買い手の圧力に負けずに自社の意見をしっかりと述べることが大切です。

4-2 準備不足

M&Aが失敗に終わる売り手側の要因として大きなものに、準備不足が挙げられます。

M&Aプロセスは、開始すると怒涛の勢いで進んでいきます。

そのため準備不足により書類や確認事項が不足していると交渉がうまく進められず、通常より時間がかかったり破談になったりする可能性が高まります。

特に議事録は、買い手企業にとって売り手企業の動向をチェックする重要な書類です。

議事録を用意していないと「役員登記などをしっかりと行っていない」と判断され、会社の信用を大きく落としてしまいます。

議事録の中でも「株式総会議事録」「取締役会議事録」の2点は特に重要な書類ですので、前もって整備しておきましょう。

長期にわたって未整備の場合は、早急に司法書士などの専門家へ依頼し、整備を進めてください。

4-3 株券や株主の所在が不明瞭

株式譲渡でのM&Aを実行するケースでは、売り手側の株券や株主名簿の整備が必要です。

特に中小企業の場合、オーナーである社長自身も知らぬところで株式が分散していることがあります。

オーナー以外の株主の所在が不明瞭である場合、調査に想像以上の時間を要してしまい、M&A交渉が一向に進まないという事態に陥りかねません。

自社の株式についてはM&Aプロセスが始まる前に今一度所在をしっかりと確認し、実態を明らかにしておきましょう。

M&Aで自分以外にも株主がいるとどうなる?確認事項や反対株主への対処法も解説第三者から経営を引き継いだ中小企業の場合、社長自身もしらないところで株式が分散している可能性があります。M&Aプロセスを始める前に自社の株式について今一度確認しておきましょう。...

4-4 情報漏洩

内緒話をするビジネスマン

M&Aは、情報漏洩に関して特に慎重な対応が必要です。

万が一社外の人間にM&Aの情報が漏洩してしまうと、「あの会社は身売りするらしい」や「経営が危ないのでは?」などといった根も葉もない噂が流れる原因になってしまいます。

そして最悪の場合、買い手からの信頼を失い、M&A取引が中止になってしまう可能性があります。

また、M&Aの情報が社内へ漏洩した場合、従業員の間に不安や不信感が生じ、離職へとつながるケースがあるのです。

M&A前に従業員が大量離職した場合も買い手が売り手に不信感を抱き、M&A交渉自体が破談になってしまう恐れがあります。

齋藤さん

「M&Aは秘密保持に始まり秘密保持に終わる」という言葉があるくらいです。情報漏洩には細心の注意を払いましょう。

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M&Aで情報漏洩は絶対にNG!原因と起こり得る問題・対策を解説「M&Aは機密保持に始まり機密保持に終わる」という言葉があるくらい、M&Aにおける機密保持は重要な事項です。情報漏洩によって起こり得る重大なリスクと情報を守るためのポイントを押さえ、十分な対策を講じましょう。...

4-5 不誠実な対応

希望条件が満たされなかったからといって、情報提供の出し渋りや急な条件変更の申し出などの不誠実な対応は避けましょう。

M&A取引は会社の売買ではありますが、その取引を行うのは人です。

不誠実な対応により買い手に嫌な思いをさせたり不信感を抱かせたりしてしまうと、M&A取引そのものが中止される可能性があります。

必要な情報は全て提供し、条件面に不満がある場合は担当のM&Aコンサルタントに相談しましょう。

4-6 M&A手続き中の業績の悪化

M&Aは平均して6ヶ月~1年程度の期間を要し、場合によってはさらに長引くケースも少なくありません。

このM&A手続き中に、業績が悪化してしまうケースも多く存在します。

しかしM&A交渉中の業績悪化は企業価値が下がったとみなされ、M&A自体が破談になる可能性があるのです。

売り手は、買い手が見つかったからといって油断してはいけません。経営を引き継ぐまでは気を引き締めて臨みましょう。

4-7 信頼できないM&Aコンサルタントの選定

M&Aの失敗要因には、M&Aコンサルタントの質が低いことも挙げられます。

こんなM&Aコンサルタントは選んではいけない
  • 馬が合わない
  • 経験が浅い
  • 知識に乏しい
  • 買い手の味方をしているような印象を受ける
  • 態度に横柄さを感じる

M&Aを成功に導くためには、売り手が求めているM&Aを実現するために寄り添ってくれるコンサルタントを探しましょう。

社長

売り手の利益をきちんと考えてくれる質の高いM&Aコンサルタントには、どこへ行けば出会えるのでしょうか。

齋藤さん

社長と馬が合う点も重要なので、M&A相談をしたときにご自身の目で見極める必要がありますよ。

5章:買い手側から見たM&A失敗要因

貼ってあるたくさんのメモを見る男性

M&Aの交渉は買い手が有利に進めるケースが多いことは前述しました。しかしながら、買い手が原因でM&A交渉が失敗に終わるケースの存在もまた事実です。

ここでは、買い手側から見たM&Aの失敗要因についてみていきましょう。

齋藤さん

買い手側に起因する失敗要因ではありますが、売り手が知っておいて損はありません。むしろM&Aを成功へ導くためにも、知っておくことをおすすめします。

5-1 M&Aの目的が不明瞭

M&Aはあくまでも、販路や事業の拡大といった目的を達成するための手段です。

しかしながら、M&Aそのものが目的となっているケースが散見される点もまた事実です。

M&A自体をゴールに設定してしまうとその後の目的が分からなくなり、結果として失敗に終わってしまいます。

M&Aで企業買収を行う際には、M&Aのその先に目的を見据えることが大切です。また、M&Aの目的と共に、経営統合プランもしっかりと練っておきましょう。

5-2 デューデリジェンス(DD)不足

買い手側にとって重要な作業の1つに、デューデリジェンスが挙げられます。

デューデリジェンスは、コストと時間をかけて売り手企業の財務状況やコンプライアンスの状況を調査するものです。

不十分なデューデリジェンスは、後に大きなトラブルを招く要因になります。

デューデリジェンス不足が招くトラブルの一例
  • 簿外債務や粉飾が見つかり、M&A後の経営に大きな損害をこうむった
  • 未払いの残業代が発覚し、M&A後に従業員から訴訟を起こされた など

M&A後に大きなトラブルが発覚すると、最悪の場合は経営破綻に追い込まれる危険をはらんでいます。

M&Aで企業買収を実施する際には、コストと時間を惜しまずにしっかりとデューデリジェンスを実施することが重要です。

5-3 無茶な価格設定

札束

M&Aにおいて、売り手企業を正確に評価し、適切な買収価格を提示することは非常に重要です。

なぜなら、シナジー効果に過剰な期待を抱きすぎて適切な評価額を大幅に上回る金額で買収を行なってしまうと、M&A成立後の業績悪化につながるからです。

齋藤さん

パナソニックの失敗例がまさにこのケースに当てはまりますよ。

買収価格に関しては主観が入りやすい項目でもあります。専門家に依頼して、客観的で明確な根拠に基づいた価格設定を行いましょう。

5-4 経営統合の失敗

M&Aの成立後には、両社の統合作業(PMI)が必要不可欠です。そこで経営・制度・業務など様々な側面から融合を図ります。

しかし準備不足のまま統合作業を行うと現場が混乱し、M&Aで期待されていたシナジーが発揮されるまでに予定していた以上の時間がかかる可能性が出てきます。

つまりPMIの失敗は、M&A後の業績悪化につながりかねない要素なのです。

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5-5 従業員の離職

M&Aの実施後は、買い手と売り手の企業文化が融合することになります。また、M&Aをきっかけとして配置換えが行われるケースも。

新しい企業文化や労働環境に直面した従業員の中には、うまくなじめずに居心地の悪さを感じて退職を選択する者が出てくるかもしれません。

しかしM&Aで企業が買収を行う目的には、優秀な人材や培ったノウハウの取得も含まれています。

そのため買収成立後に従業員が離職してしまうと、M&Aによるシナジーを発揮できなくなる可能性があり、M&Aが失敗だったと言わざるを得ない結果を招く恐れがあるのです。

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6章:【失敗事例から学ぶ】M&Aで失敗しないためのポイント

電球を持つ手

幾多のM&A失敗事例をご紹介しましたが、これからM&Aに臨む方へ失敗しないためのポイントをお伝えしたいと思います。

齋藤さん

過去の失敗例を教訓として、M&Aを成功へと導きましょう!

6-1 M&Aの目的をはっきりさせる

M&Aを実施する目的をはっきりさせておくことは、売り手・買い手ともに重要なポイントです。

  • なぜM&Aをするのか
  • M&Aでなければならない理由は何か
  • M&Aで何を実現したいのか

最低でも上記3点は明確にしてからM&Aプロセスに踏み切りましょう。

齋藤さん

M&A後の経営をしっかりイメージしながら検討してくださいね。

6-2 自社にふさわしい相手先企業を選ぶ

M&Aの成立を急ぐあまり、相手企業探しをおろそかにしてはいけません。

複数の企業が相手候補として現れた場合は、感覚的に決めるのではなく「自社にふさわしい企業か」を言語化して検討する必要があります。

求めているシナジー効果などを分析して数値化することでも、自社にふさわしい企業の選定が可能です。

齋藤さん

社長1人で決めきれないときには、担当のM&Aコンサルタントにも相談してくださいね。

6-3 デューデリジェンス(DD)を徹底する

デューデリジェンスの徹底は、M&Aの成功に欠かせない要素です。

デューデリジェンスでは、売り手が抱えている簿外債務や訴訟リスクの発見はもちろん、シナジー効果や経営戦略の実現可能性を測ります。

内容や結果によっては買収価格にも影響を与えるため、慎重かつ正確なデューデリジェンスの実施が求められます。

社長

これは主に買い手側が失敗しないためのポイントですよね?

齋藤さん

そうですね。ただしデューデリジェンスの成功には、売り手側の全面的な協力が欠かせません。求められた情報は全て正直に開示してくださいね。

6-4 PMIを計画的に実施する

M&Aの成立後は、両社の経営を統合する作業(PMI)が必要です。M&Aで両社が思い描いていた未来を得るためには、スムーズなPMIの実施が欠かせません。

実際にPMIが実施されるのは、M&Aが成立して経営権が買い手側に移ってからです。

ただし、PMIを成功させるためには、M&Aの成約前から準備を始める必要があります。

したがって買い手側は、M&Aの検討段階からPMIについての検討を始めておくと良いでしょう。

6-5 信頼できるM&A仲介会社に相談する

信頼できるM&A仲介会社およびコンサルタントとの出会いは、M&A成功のカギを握っているといっても過言ではありません。

信頼できるM&A仲介会社に所属している、信頼できるM&Aコンサルタントとの出会いが重要なのです。

とはいえ急に「自分に合った質の高いM&Aコンサルタントを見つけましょう」と言われても難しいものです。

そこで、信頼できるM&Aコンサルタントを見極めるための質問リストをご用意致しました。

M&A仲介会社で相談する際に、担当のコンサルタントに下記の質問を投げかけてみてください。

  1. M&Aコンサルタントとして、どれくらいの経験をお持ちですか。
  2. 得意な業種やスキームについて教えてください。
  3. 自社を○億円(相場の倍くらいの価格)で売却したいのですが、できますか?
社長

かなり直球の質問ばかりですね。

1つめの質問は、純粋に担当コンサルタントのキャリアを確かめるためです。

もちろん、キャリアの長い人物の方が、信頼度は高いといえるでしょう。

2つめは、「このM&A仲介会社(コンサルタント)は自社に合っているか」を見極めるための質問です。

いくら良い仲介会社でも得意な業種やスキームが社長の求めているものと異なっていては、理想のM&Aが実現できる可能性は低いでしょう。

3つめは、M&Aコンサルタントの誠実さを見極めるための質問です。

売り手に寄り添ったコンサルタントであれば、できないことはできないと根拠を提示しながらハッキリ伝えてくれるはずです。

その上で、できる限り良い条件で売却するためのアドバイスをくれるコンサルタントなら、信頼に値する人物だと判断して良いでしょう。

齋藤さん

信頼できるM&Aコンサルタントに出会うためには、複数のM&A仲介会社で相談し、比較しながら検討すると良いですよ。

まとめ

躍動するビジネスマン

M&Aは数多くの失敗例からも分かるように、必ず成功するとは限りません。なぜなら、M&Aプロセスの中には、失敗の原因となる要素がそこかしこに潜んでいるからです。

M&Aが失敗すると、具体的には以下のような問題が起こります。

  • M&A取引が破談になる
  • M&A後の買い手企業に経済的損失が起こる
  • M&Aをきっかけとして従業員が離職する
  • 倒産に追い込まれる

しかしM&Aは、企業の課題を解決して大きな利益の発生を期待できる取引です。

失敗のリスクを最小限に抑えてM&Aを成功へと導くためには、失敗の原因を知り、潰していく作業が重要です。

また多くの場合、売り手はM&Aの経験を持っていません。買い手から足元を見られないためにも、専門家のアドバイスや第三者からの協力を仰ぎましょう。

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齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。