近年運送会社では、後継者不足問題の解消や2024年問題の解決を目的としたM&Aが増えています。
そこでこの記事では、運送業界の現状・課題・M&A動向を明らかにし、運送会社をM&Aで売却するメリット・デメリット・注意点・成功のポイントを解説します。
- 運送会社の経営に心配事や悩み事を抱えている経営者様
- M&Aで運送会社の売却を検討している経営者様
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:物流・運送業界の現状と課題
物流業界にはトラック・鉄道・海運・航空・倉庫などさまざまな業種がありますが、この記事では、陸上物流の主役であるトラックの運送業界についてまとめています。
まずは、昨今の物流・運送業界における現状と課題を確認しておきましょう。
1-1 トラック運送業界の現状と市場規模
引用元:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」
全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」のデータによると、わが国の国内貨物総輸送量は、トン数では年間約41億トン(2020年・令和2年度)で、トンキロ(※)では386十億トンキロ(同)です。
そのうちトラックの輸送分担率はトンベースで約9割、トンキロベースで約5割となっています。
(※)トンキロ=トン数に輸送距離を乗じてその仕事量をあらわした単位。1トンのものを10キロメートル輸送したときは10トンキロとなる。
引用元:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」
輸送機関別の推移では、トンベースで営業用トラックが1997年(平成9年)度に自家用トラックを上回りました。
2020年(令和2年)度には新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、国内の貨物輸送量は大幅に減少しています。
その後も新型コロナウイルス感染症の影響は残り、全輸送機関で減少傾向または横ばい状態が続いています。
1-2 過半数の運送会社が赤字営業
EC事業の成長に伴いトラック運送の需要は高まっていますが、経営赤字に陥っている運送会社は過半数以上にのぼるといわれています。
赤字の原因にはいくつかの理由が考えられますが、主なものとして以下の2点が挙げられます。
- 新規参入へのハードルが低く熾烈な価格競争が起こっているため
- 燃料費が高騰しているため
価格競争により単価の引き下げを余儀なくされているにも関わらず、燃料費の高騰で利幅の減少が起こっているのです。
さらに中小企業においては、安全面でのコスト増加も大きな負担となっています。
なぜなら、ドライバーの安全教育や衝突回避システム・盲点警告システムなどの安全装備を取り入れるには、別途人件費や多額の導入費が必要だからです。
最近は厳しい状況に理解を示して単価を少し上げてくれる荷主様も増えてきたのですが、それ以上に燃料費やトラックに関する費用などのコストがかさんでいます。中小企業にとっては、正直かなりキツい現状です。
1-3 2024年問題への懸念
働き方改革関連法により、2024年4月1日から自動車運転業務の時間外労働時間が、年間960時間に制限されることになりました。
それに起因して起こり得る問題が「2024年問題」と呼ばれています。
まず、トラックドライバー1人当たりの走行距離が短くなるため、遠隔地への運送が困難になる可能性が懸念されています。
その上で、運送会社の売上・利益の減少や荷主側における運賃の上昇、ドライバーの収入減少などの問題が生じる可能性があるのです。
現在は業界各社が対応を迫られている状況で、対策を行わなかった場合に不足する運送能力は2024年に14.2%、さらに2030年には34.1%にのぼる可能性が試算されています。
1-4 ドライバーの不足
トラック運送業界を悩ませている問題の1つに、慢性的なドライバー不足が挙げられます。その要因となっているのは、長時間労働と低賃金です。
さらに2024年からは時間外労働が規制されることで、残業代で収入を補うことが難しくなります。
そのため収入減によるドライバーの離職が懸念されており、さらなるドライバー不足に陥る恐れがあるのです。
2章:運送会社のM&A動向
トラック運送の需要は高まっているものの、業界はさまざまな問題を抱えていることが分かりました。
それらの問題を解決するための手段として、M&Aに注目が集まっています。ここでは、運送会社におけるM&Aの動向をみていきましょう。
2-1 M&Aによる業界再編
運送会社のM&Aは近年増加しており、M&Aによる業界再編が進んでいます。
その要因として、中小企業が1社単独では必要十分なドライバーを確保できなかったり、事業拡大が困難だったりすることが挙げられます。
それらの問題を解決するために、M&Aで大手の傘下に入るケースが多くみられるようになりました。
買い手企業にとってもドライバー・車両・新たな物流拠点などを一度に確保でき、まさにWin-Winの関係なのです。
さらに人手不足および長時間労働の解決や、競争力の強化を目的とした中小企業同士のM&Aも増えています。
2-2 後継者不在問題解決のためのM&A
後継者の不在に悩む中小企業は非常に多く、運送業界も例外ではありません。
後継者が不在のまま引退時期に差し掛かった経営者が増えてきており、やむを得ず廃業を選択するケースも多くなっています。
そのような中で、M&Aを活用し後継者問題の解決を図る運送会社が増えています。
2-3 買収ニーズは増えている
昨今の運送業界では、M&Aが活発に行われています。
運送会社の買収を検討している企業も多く、売り手・買い手ともに相手が見つかりやすくなっている状況だといえるでしょう。
運送会社の買収ニーズが高まっている理由としては、2024年問題への対応・ドライバーの確保・他社との差別化などが挙げられます。
また、同業種に限らず、異業種とのM&Aも活発に行われています。
異業種の企業が運送会社を買収する目的として考えられるのは、新規事業への参入です。
既に事業を展開している運送会社を買収することで、費用とリスクを抑えて運送業界への参入が実現できるのです。
取引先やノウハウなども引き継げるので、買い手にとっては新規事業でも、短時間で軌道に乗せやすいんですよ。
たしかに。既に出来上がっている事業を買った方が効率的だといえますね。
3章:M&Aで運送会社を売却するメリット
M&Aで運送会社を売却するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、売り手が得られるメリットを紹介します。
3-1 新たな設備投資が可能になる
運送会社ならではの悩みとして、トラックの老朽化が挙げられます。
慢性的な赤字経営や多額の借入が積み重なり、業務のかなめともいえるトラックの買い替えが困難になっている運送会社は多く存在します。
そこでM&Aを活用し大手の傘下に入ることで資本力が強化され、新たなトラックを購入したり、既存のトラックにパワーゲートを付けたりといった設備投資が可能になります。
3-2 ドライバーの新規採用がしやすくなる
中小企業単体でよりも、大手のグループ企業として採用活動を行った方が、採用希望者が集まりやすい傾向にあります。
なぜなら現代の若者は大手志向が強く、中小企業よりも大手企業で働きたい意向を持っている人が多いからです。
また大手企業のネームバリューには信用があるため、より多くの採用希望者が集まりやすくなるのです。
たしかにネームバリューのある大手のグループ会社の方が、働く側としても安心ですよね。
また、買い手の採用ノウハウを取り入れることで、より効率的に能力の高いドライバーを確保できるようになるでしょう。
3-3 燃料にかかるコストを削減できる
運送会社の経費として大きなウエイトを占めているのが、ガソリンや軽油といった燃料費です。
そしてこの燃料費は高騰が続いており、運送会社の経営を苦しめている一因でもあるのです。
M&Aで大手の傘下に入るとグループとして一括で燃料の仕入れが可能になり、コストダウンが期待できます。
燃料費のコストダウンが実現すれば、今より利益が出やすくなりますね。
3-4 取引先が増える可能性がある
M&A後の売り手は買い手のグループ企業となり、買い手の仕事を受けられる可能性が出てきます。
買い手企業から単価の良い仕事を回してもらえることもあるみたいですよ。
買い手から仕事を受けることでトラックの空車率を下げられ、業務に無駄がなくなります。
さらに、いわゆる「降地(おろしち)」周辺の仕事を組み合わせて、トラック一台あたりの売上・利益を増加させられる可能性もあります。
3-5 後継者問題を解決できる
近年では、後継者不在問題を抱える中小企業が増加の一途をたどっており、運送会社も例外ではありません。
後継者がいなければ事業を続けていけず、廃業を選択せざるを得なくなります。
M&Aで運送会社を売却すれば経営権が買い手へと移り、後継者が不在であっても事業の継続が可能です。
3-6 従業員の雇用を継続させられる
M&Aでは、従業員の雇用も買い手へと引き継がれます。
会社の経営権を譲渡する株式譲渡というM&Aスキームを使用した場合、雇用条件も変わりません。
M&A後も変わらず働き続けられるなら、従業員も安心ですね。
3-7 売却益を獲得できる
M&Aでは、買い手から売り手へと譲渡の対価が支払われます。
株式譲渡の場合は売り手経営者個人が受け取り、事業譲渡は売り手企業が売却益を受け取る
M&Aの目的に合わせて「誰が売却益を受け取るか」でスキームを検討することも大切です。
例えば高齢化した経営者が引退のためにM&Aを実行するのであれば、経営者個人が売却益を受け取るスキームを選択してください。
引退後の資金への不安が解消され、悠々自適な生活を送れる可能性が高まります。
廃業を選択するより潤沢な資金を得られそうですね。
3-8 個人保証を解除できる可能性がある
M&Aで会社を売却すると、経営者個人が背負っている個人保証や物的担保を解除できる可能性が高まります。
これにより倒産した際に経営者個人が債務返済を負うリスクの心配がなくなり、安心して引退後の人生を送ることができます。
3-9 多額の借入金を買い手に引き継げる
使用するM&Aスキームによっては、借入もまとめて買い手へ引き継ぎます。
特に大きな設備を必要とする運送業界では、借入金額が大きく膨らみやすい傾向にあります。
例えば年商2億円の会社が1億円の借入金を抱えている場合を考えてみてください。M&Aの対価を受け取りながら、借入金も手放せるという事実をどう受け取りますか?
最高です!
もしM&Aをせずに廃業となった場合、借入金の返済に困る運送会社も多いでしょう。
さらに倒産ともなると、連帯保証人である社長個人の破産は免れません。
そのため借入金を買い手へ引き継げる点は、売り手にとって大きなメリットだといえます。
4章:M&Aで運送会社を売却するデメリット
M&Aにはメリットもあればデメリットも存在します。
デメリットの存在を見過ごしてM&A実行へ踏み切ると、場合によっては後悔する結果が待ち受けている恐れがあるため注意が必要です。
ここでは、M&Aで運送会社を売却するデメリットについてみていきましょう。
4-1 買い手がつかない可能性がある
M&Aで運送会社の売却を決意しても、買い手が現れない可能性は否定できません。
買い手が見つからない原因としては、主に以下の4点が挙げられます。
- 売却希望価格が企業価値に対して高額すぎる
- 売却に対する希望条件が多すぎる
- 売却のタイミングを見誤っている
- M&A仲介会社との相性が良くない
上記のどれか1つでも当てはまる状態であれば、すぐに改善への取り組みを始めてください。
また、M&A仲介会社はそれぞれ得意な業種やM&Aスキームを持っています。運送会社のM&Aに強みを持つ仲介会社に変えることも、有効な対処法だといえます。
4-2 新しく運送業を始められない可能性がある
M&Aで運送事業を売却すると、原則として向こう20年間は隣接する区域内で同じ事業を行うことができません(競業避止義務)。
特に事業譲渡の場合は、会社法第21条により明確に規定されています。
競業避止義務が課されるのは事業譲渡の場合なんですよね?会社を丸ごと売却する株式譲渡の場合は大丈夫なのでしょうか。
法律での規定はありませんが、一般的には期間を2年~5年程度として最終譲渡契約書内に盛り込むケースが多いですよ。
そのため運送会社をM&Aで売却後、新たに運送業を始める場合は、会社法や契約の内容をしっかりとチェックしましょう。
M&A後も運送業に従事したい希望があれば、買い手の了承を得て会社に残る選択もできますよ。
会社に残る選択をする場合、いちドライバーとして残るのか、それとも経営者として残るのかを買い手としっかり話し合っておく必要があります。
4-3 顧客や取引先から反発される可能性がある
M&A後に会社の経営権が買い手へと移ると、料金体系や契約条件などが変更される可能性があり、内容によっては顧客や取引先からの反発を招いてしまう恐れが出てきます。
M&A交渉時には「顧客や取引先の反発を生じる変更をしない」などといった条件を決めておきましょう。
さらに、顧客や取引先への説明は、社長自らが誠意を持って行うことが大切です。
4-4 従業員から反対される可能性がある
M&Aの事実を知った従業員の多くは、自身にこれから起こる未知の変化に対して恐怖を感じます。
そしてその恐怖がM&Aへの反発となって現れるケースも少なくありません。
従業員は具体的に、どのようなことに対して恐怖心を抱くのでしょうか。
具体的には、クビになるのではないか・勤務地や雇用条件が変更になるのではないか・会社が潰れるのではないか、などといったことですね。
M&Aに恐怖心を抱いた従業員の中には、転職活動を始める者が出てくるかもしれません。
しかしM&Aで従業員の退職は、大切な資産の流出でもあります。慢性的なドライバー不足に悩まされている運送業界ならなおさらです。
- 雇用が継続される旨
- 勤務地や雇用条件も基本的に変わらない旨
- 会社が潰れることはない旨
- 従業員にとっても多くのメリットを享受できる旨
これらのことを従業員に分かりやすく伝え、安心して働き続けられることへの理解を求めましょう。
労働基準法に違反しないため勤務体制を変更する可能性は大いにありえる
2024年問題への対策など、法令順守を目的とした勤務体制の変更は致し方ありません。
やむを得ず変更が必要になった際は、従業員からの理解が得られるよう社長自ら丁寧なケアを実施してください。
5章:運送会社のM&Aに相場はある?
運送会社にとどまらず一般的に中小企業の場合は、M&Aの相場はないに等しいといっても過言ではありません。
なぜならM&A取引は、買い手が提示した買収価格に売り手が納得すれば成立するものだからです。
しかしながら、取引価格の基準は必要です。そこで一般的には、以下の計算式でおおよその相場を算出しています。
時価純資産+営業利益(2~4年分)
上記の計算式でポイントとなる点は、純資産額が時価である点です。
会社の純資産を、現時点での価値に置き換えて計算してくださいね。
売却価格の目安が分かれば、安く買い叩かれる心配から解放されますね。
その通りです。売り手の立場でいうと、売却希望価格の目安にもなりますよ。
上記の計算式から算出された相場からは、税金やM&A仲介会社への手数料を支払う必要がでてきます。
それらを差し引くと、最終的に手元に残る金額の目安を付けられます。
6章:運送会社のM&Aで注意すべき点
運送会社のM&Aでは、運送業ならではの注意点が存在します。
運送会社の売却を検討している経営者様は、以下の2点に注意して売却活動を進めましょう。
6-1 労務管理を徹底しておく
運送業は特に長時間労働が日常化しやすく、サービス残業が当たり前になっている会社も少なくありません。
しかしずさんな労務管理は、買い手にとって買収時の大きなリスクとなります。なぜなら、買収後に従業員から未払い残業代を請求される可能性があるからです。
買い手にとっては大打撃ですね…。
それだけではありません。売り手は買い手から損害賠償を請求される可能性が出てきますよ。
トラブルの発生を避けるため、M&A前に労務管理を改善しておきましょう。
6-2 国土交通省の認可が必要なケースに注意する
事業譲渡で運送会社のM&Aを行う場合には、運送業許可に注意が必要です。
なぜなら事業譲渡では、運送業許可が自動で買い手へと引き継がれないからです。そのため買い手は、許可取得の手続きを実施しなければなりません。
事業譲渡で許可申請を行う場合には、下記を記載した譲渡譲受認可申請が必要です。
- 譲渡人および譲受人の氏名あるいは名称と住所(法人は代表者氏名)
- 譲渡および譲受しようとする事業の種別・営業区域
- 譲渡価格
- 事業譲渡の予定日
- 事業譲渡が必要な理由
また申請時には、以下の書類を添付する必要があります。
- 譲渡譲受契約書の写し
- 事業譲渡価格の明細書
- 定款・資産目録・貸借対照表などの資料(譲受側が一般貨物自動車運送事業を経営していない場合)
上記の手続きは主に買い手が行うものですが、売り手としてもスキーム選択の参考になるかと思うので、「こんな手続きが必要なんだ」程度に覚えておくと良いですよ。
事業譲渡で運送業を譲渡するのは、手続きが大変なんですね。株式譲渡ではこの手続きは必要ないのでしょうか。
株式譲渡では必要ありません。ただし、株式譲渡後に商号・本店所在地・役員・運行管理者・整備管理者などが変更になる場合は、別途変更手続きを行う必要がありますよ。
7章:運送会社のM&Aを成功させるポイント
運送会社のM&Aを成功させるポイントは、以下の4つが挙げられます。
7-1 適切なタイミングで実行する
運送会社の景気は、経済の状況に大きく影響を受けています。
例えば新型コロナウイルスの世界的流行が始まった当時は、国内の貨物輸送量が大きく減少しました。
そのような状況下ではM&Aの実行が難しく、思った値段が付かない可能性も高まります。
また運送会社のM&Aでは、買い手がドライバーの獲得を目的としているケースが多くみられます。
そのためドライバーの高齢化が進むと、売り手の資産価値に影響を及ぼすことになるでしょう。
また、年齢が高い人ほどM&Aに対する抵抗を強く感じる傾向があります。
従業員からの抵抗を受けたM&Aは成功しづらいため、早めの実施が重要となるのです。
このように運送会社のM&Aは環境や状況の変化を受けやすいため、適切なタイミングでの実行が重要です。
7-2 デューデリジェンスを徹底する
買い手企業が売り手対象会社の実態を詳細に調査すること。デューデリジェンスの結果を元に、最終譲渡価格が決定する
デューデリジェンスは買い手が行うものですが、売り手としても全面的に協力しましょう。
デューデリジェンス時に簿外債務や粉飾が明らかになったり、都合の悪い情報を意図的に隠していたことが発覚したりすると、買い手企業からの信頼を大きく損なってしまいます。
その結果としてM&A交渉が破談になる可能性もあるため、買い手企業には正確な情報を提供してください。
特に中小企業の場合は、社長自身が把握していない簿外債務が発覚することも多いんですよ。
なるほど。M&A後のトラブルを防ぐために、客観的にしっかりと調べてもらうことが重要なんですね。
7-3 従業員の離職を防止する
運送会社のM&Aで買い手は、ドライバーの確保を目的としているケースも多いです。
運送業界は離職率が高く、慢性的な人手不足に悩まされている
そのため売り手は、M&Aをきっかけとした従業員の離職に注意しなければなりません。
従業員は大切な資産の一部としてM&Aの価格にも反映されており、もしM&Aがきっかけで従業員が大量に離職した場合は、取引価格の下方修正が考えられるからです。
そしてさらに最悪のケースでは、M&A取引自体が白紙に戻ってしまうケースも考えられます。
自分が働いている会社がM&Aされると知った従業員は、自身や会社の将来に不安を感じます。
M&Aを行う際には、従業員の離職を防ぐために、適切なケアを行っていくことが大切です。
7-4 運送会社に強みを持つM&A仲介会社を選ぶ
運送会社がM&Aを行う際は、自社に合ったM&A仲介会社選びが大切です。運送会社がM&A仲介会社を選ぶときのポイントは、以下の通りです。
- 運送会社に強みを持つM&A仲介会社を選ぶ
- 中小企業のM&Aに強い仲介会社を選ぶ
- 最低成功報酬額に注意する
- 信頼できるコンサルタントがいる仲介会社を選ぶ
運送会社のほとんどは中小企業のため、自社の規模に合った、運送会社に強みを持つM&A仲介会社を選びましょう。M&Aの成功率がグッと上がります。
また、M&Aの取引価格は企業規模に比例することが多いです。そのため、仲介会社ごとに設定されている最低成功報酬額に注意してください。
なぜなら、M&Aの取引価格によっては、手元にお金が残らなくなってしまう可能性があるからです。
さらにM&Aは、平均的に6ヶ月~1年程度の期間を要します。
担当のM&Aコンサルタントとは長期にわたる付き合いになるため、社長自身が信頼して任せられる人物を選びましょう。
まとめ
運送会社のM&Aは、後継者不足や2024年問題への対応などで増加傾向にある状況です。
売り手はM&Aを活用することで、後継者問題の解決・従業員の雇用継続・経営基盤の強化など、さまざまなメリットを得られます。
ただし運送会社をM&Aで売却する際にはデメリットも存在します。そのため専門家の適切なサポートを受け、戦略的に売却活動を進めていくことが重要です。
運送会社のM&Aを検討している経営者様は、ぜひ一度無料相談をご活用ください。売却へのヒントが得られると思いますよ。