M&A

M&Aの成功率は?中小企業の売り手が成功率を高める方法も解説

M&Aを検討している経営者様の中には、失敗を恐れる気持ちを抱いている方もいるのではないでしょうか。

たしかにM&Aは、100%必ず成功するとは限りません。中には「このM&Aは失敗だった」と感じるケースがあることも事実です。

しかし、失敗を恐れているだけでは前に進めません。

そこでこの記事では、中小企業におけるM&Aの成功の定義と成功率を明らかにします。

そしてさらに、M&Aの成功率を高めるヒントも詳しく解説しています。

  • M&Aの成功率を知りたい
  • M&Aを検討しているが、失敗への恐怖心が拭い去れない
  • M&Aの成功率を上げる方法について知りたい

上記に1つでも当てはまる方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:M&Aの成功率はどれくらい?

M&A満足度調査

引用元:中小企業庁2024年版「中小企業白書」

2024年版の中小企業白書によると、買い手・売り手ともに5割以上の企業がM&Aに満足しているという結果が出ています。

社長

満足しているということは、成功したと捉えて良さそうですね。思っていた以上に高い数字で安心しました。

齋藤さん

そうですね。つまり、中小企業におけるM&Aの成功率は約5割、およそ半数が成功しているといえます。

さらに上記の図からは、譲渡先が同業種の場合と異業種の場合で比較した際に、M&Aの満足度に大きな差がないことが見て取れます。

社長

売り手としては、買い手が同業種でも異業種でも成功率に大差ないということですね。この結果を知って、買い手選びの幅が広がりそうです。

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2章:売り手にとってM&Aの成功とは

両手を広げるビジネスパーソン

中小企業におけるM&Aの成功率は5割程度だということが分かりましたが、そもそも何をもってM&Aの成功とするのでしょうか。

実はM&A成功の定義は、求めている結果によって異なります。そのためM&Aの成功に、確たる基準はありません。

売り手個人や、売り手企業が思い描いていた結果が得られた場合に、そのM&Aは成功したといえるのです。

ここでは、中小企業の売り手が「これが叶ったらM&Aは成功だ」と感じられる主な項目について解説します。

2-1 売却自体が実現する

M&Aの目的が事業承継や社長の引退である場合、売却そのものの実現をもってM&Aの成功と捉えることが多いようです。

社長

たしかに売却が完了すれば、事業承継や社長の引退といった目的が叶えられますもんね。

他にも、経営が傾いていたり既に赤字経営に陥っていたりする会社の場合は、売却の実現=M&Aの成功と捉えて差し支えないでしょう。

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2-2 希望の売却価格での売却が実現する

売却価格にこだわりを持ってM&Aを進めていた場合などは、希望した価格での売却が実現した際に、M&Aの成功を実感します。

逆に、希望売却価格を大幅に下回ったケースでは、M&Aに対して失敗したという感情を抱くことになるでしょう。

社長

M&Aを成功させるためには、売却希望価格の設定も重要になってきますね。

齋藤さん

その通りです。自社の価値を冷静に判断し、無理のない売却希望価格を算出しておきたいものです。

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2-3 希望した条件での売却が実現する

握手を交わすビジネスパーソン

希望の条件が買い手に認められて取引が成立すると満足度が高まり、そのM&Aは成功したと感じられる可能性が高まります。

例えば、事業承継と社長の引退を目的としたM&Aの場合で考えてみましょう。

買い手へ経営を引き継いで社長の引退が叶うと、M&Aに期待していた目的は達成し、売り手としてそのM&Aは成功したといえるでしょう。

他にも従業員の処遇やM&A後の体制など、売り手にとって「これは譲れない」という条件が認められた場合には、M&Aの成功を感じやすくなります。

齋藤さん

逆にいうと、希望条件を認めてくれる買い手を探すことが、M&A成功のポイントともいえますね。

2-4 M&Aに期待していた効果が得られる

M&Aでは、会社や事業の更なる発展を期待して実施されるケースが多くを占めています。

そのようなケースでは、事前に算出したシナジー効果がうまく発揮されたり不要な事業を手放すことでコア事業の再生が実現したりしたときに、M&Aが成功したといえるでしょう。

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2-5 M&A後も買い手との信頼関係が続く

残念ながらM&Aでは、取引成立後に大きなトラブルが発生する可能性があります。

齋藤さん

M&A後に起こるトラブルで最も気を付けたいのが、買い手から損害賠償請求を請求されることですね。訴訟へ発展するケースもありますので、十分な注意が必要です。

そのためM&A取引が穏便に成立し、その後も大きなトラブルがない状態が続いていると、M&Aは成功したと感じられるでしょう。

社長

たしかにトラブルが起こってしまったら、とても成功とはいえませんね。

M&A後のトラブルを回避するためには、相手に嘘をついたり見栄を張ったりしないことが重要です。

誠実な態度で交渉に臨めば買い手との信頼関係が構築され、正直に自社の情報を開示することで、M&A後に起こり得るトラブルを回避できます。

そしてその結果買い手との信頼関係が継続され、M&Aの成功を実感しやすくなるでしょう。

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3章:M&Aの成功率を高める方法

How to本とキーボード

M&Aの成功率は、実はある程度コントロールが可能です。

齋藤さん

失敗の要因を可能な限り減らすことで、成功率がグッと高まるんですよ。

ここではM&Aの失敗を減らす手段、すなわち成功率を高める方法についてみていきましょう。

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3-1 M&Aに対する目的やM&A後のビジョンを明確にしておく

M&Aの失敗を減らし成功率を高めるためにはまず「何のためにM&Aを実行するのか」という点を明らかにしておくことが重要です。

そしてさらに「M&Aを実行した後に自分自身や会社がどのような状態になっていたいのか」という点も明確にしておきましょう。

M&Aの目的や将来のビジョンを明確にすると、M&Aに対するブレない軸が誕生します。

その軸を中心に判断を重ねていけば、目的やビジョンから大きく外れた条件でのM&A成立を防ぐことができるのです。

M&A交渉において、社長は1人で重要な判断を次々に下していかねばなりません。冷静に判断しているつもりでも、ブレてしまうことが多いのも事実です。

たくさんのタスクに溺れることなくM&Aを成功へと導くためにも、まずは目的やビジョンをしっかりと見据えておきましょう。

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3-2 デューデリジェンスには全面的に協力する

PCを見ながら相談する人たち

M&A後のトラブルを防ぐためには、買い手が行うデューデリジェンスが重要な役割を担っています。

デューデリジェンスとは

買い手が売り手企業の実態を調査する作業のこと。財務状況やコンプライアンスなど、あらゆる方面において実施される。

このデューデリジェンスが不十分なままだと、M&A実行後に簿外債務や粉飾などが見つかる恐れがあり、トラブルへと発展する可能性が出てくるのです。

売り手自身も把握していない簿外債務が存在する可能性がある

社長

なんと。知らないうちに簿外債務ができているケースもあるのですね…。

齋藤さん

そうなんです。実は中小企業ではあるあるなので、それらを見つけるためにも、買い手によるデューデリジェンスは重要なのです。

デューデリジェンスにおいて売り手は全面的に買い手に協力し、要請された資料などは速やかに提出を行いましょう。

3-3 信頼のおける専門家に相談する

M&Aは、様々な選択の積み重ねが結果へとつながっています。

つまり、M&Aを成功させるためには、成功をたぐり寄せるための選択を積み重ねていく必要があるのです。

そこで重要になってくるのが、信頼できる専門家の存在です。

M&Aでは多くの場合、担当のM&Aコンサルタントが買い手探しから取引の成立までをサポートします。

売り手の意向を正しく理解し受け止め、それを実現可能なプランを提案できる力を持った専門家であれば、M&Aの成功率は飛躍的に高まるでしょう。

逆にコンサルタント自身やM&A仲介会社の利益のみを追求しているような専門家に相談してしまうと、売り手の目的を実現するのは難しいかもしれません。

齋藤さん

残念ながらいわゆる「悪徳業者」と呼べるようなM&A仲介会社の存在を耳にしたことがあります。仲介会社選びは慎重に行ってくださいね。

信頼のおける専門家に出会うためには、いくつかのM&A仲介会社で見積もりや相談を行い、比較検討することがポイントです。

料金体系やシステムに納得することはもちろん、担当のコンサルタントが信頼のおける人物であるかを、社長自身の目でしっかりと確かめてください。

齋藤さん

担当コンサルタントとの相性は、M&Aの成功率を上げるためにかなり重要なポイントですよ。

社長

たしかに、大切な会社の将来を任せることになりますものね。信頼できる人物か、この目でしっかりと確かめたいです。

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3-4 【番外編】M&Aだけにこだわらない

実は、社長が抱えている悩みの解決方法はM&A以外にも存在するケースがあります。

例えば後継者不在問題を解決して引退を希望している場合、もしかしたら周囲に後継者候補がいるかもしれません。

また会社の状況によっては、廃業を視野に入れた方が良いケースも存在します。

社長

場合によってはM&Aが最適解だとは限らないケースもあるんですね。

M&Aはあくまでも「目的を達成するための手段」です。

社長や会社が抱えている悩みをどのように解決していくか、目的を達成するためにどのような手段を選ぶのかは、専門家に相談しながら冷静な判断が必要となります。

齋藤さん

社長や会社の未来のため、M&Aそのものが目的となってしまわないように、十分注意してくださいね。

まとめ

ビル群のイメージ

2024年版の中小企業白書によると、売り手・買い手ともに5割以上の企業が実施したM&Aに満足しているという結果が出ています。

満足しているということは成功だと捉えられるため、中小企業におけるM&Aの成功率は5割以上だといえるでしょう。

売り手はそれぞれの悩みを解決するためにM&Aを実施します。

そのため「M&Aの成功」とは、それぞれの企業がM&Aに求めていた目的を達成できたことと言い換えられ、悩みの数だけ成功の定義があるといえます。

齋藤さん

具体的な成功の定義としては売却そのものの実現や、希望した条件での売却が実現したり、M&Aに期待していた効果が認められたりといった項目が挙げられます。

M&Aの成功率を高めるためには、M&Aに対する目的やM&A後のビジョンなど「M&Aで叶えたいこと」を明確化しておくことがポイントです。

信頼できる専門家との出会いもM&Aの成功率を大きく左右するため、M&Aを実行する際には、いくつかの仲介会社を比較検討して担当コンサルタントを決定してください。

齋藤さん

社長や会社の悩みを解決するためには、早めに専門家へ相談して、最適な手段を見つけてくださいね。

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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。