M&A会社を売却するというのは、恐らく一生に一度の経験になる人が多いかと思います。
しかし初めての経験とはいえ、絶対に失敗したくないのがM&Aですよね。
そこでこの記事では、M&Aを成功に導くためにあらかじめ考えをまとめておきたいことについて解説しています。
- 売却の希望価格
- 役員退職金の扱い
- 譲渡後も自分が会社に関与する期間・内容・報酬
- 個人資産の会社からの分離
- 家族従業員の今後
M&Aに動き出してからでは遅い可能性もあります。今すぐM&Aを行う予定はない人も、知っておいて損はありませんので、ぜひチェックしてみてくださいね。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:売却の希望価格をある程度決めておく
会社売却を検討するときにまず考えてほしいのが、だいたいいくらいで会社を売却したいのかということです。
M&Aに動き出して買い手候補が見つかると、先方からも必ず希望額を聞かれます。そのときに買い手の希望取得額と近ければ、M&Aの成立に一歩近付けるのです。
細かく決めておく必要はありません。だいたい●億円~●億円くらいかな、という程度でOKです。
ただいきなり会社売却の希望価格を決めるといわれても難しいですよね。そこで売却できそうな価格の目安が算出できる企業評価をM&A会社に依頼することをおすすめします。
2章:役員退職金の扱い
M&Aで会社売却を行う際に注意しておくべき事項の1つに役員退職金の扱いがあります。
役員退職金というのはその名の通り、役員が役員を退く際に支払われる退職金のことです。
この役員退職金、実は会社の資産として扱われるため支払った分だけ会社の純資産が減少します。そのため株式譲渡の価格は役員退職金を支払った金額が差し引かれた金額になるのです。
例えば売却する会社の株式価値が3億円だったとします。
役員退職金を5千万円支払ったとしたら、その会社の株式価値は2.5億円になります。
役員退職金の支払いに関してはメリット・デメリットの双方がありますが、「思っていた売却価格と違う…」となってしまわないためにもあらかじめ考えておきましょう。
また、M&Aが進んでから買い手側に役員退職金の支払いを伝えると、その後の交渉に支障が出る恐れがあります。退職金の扱いに関しては、事前に買い手側にも伝えておく必要があります。
3章:譲渡後も自分が会社に関与する期間・内容・報酬
M&Aで事業を売却した後も、引継ぎのために社長がある程度の期間会社に残るケースが多くを占めています。
買い手企業にとっても買収後の事業をスムーズに進めていくために必要な期間であるため、以下の項目についてだいたいで良いので検討しておきましょう。
- 1日何時間、週に何日の関与ができるのか?
- 最大何年くらいまで関与できるのか?
- 関与する業務内容内容はどこまでなのか?
関与する期間や内容が決まると、報酬へのイメージも湧きやすくなってきます。会社売却後の一定期間ではありますが、「どれくらいの報酬があれば生活に支障がないのか」という面からも考えてみると良いかもしれませんね。
4章:個人資産の会社からの分離
中小企業の場合、社長の車や事業に直接関係のない個人の不動産が会社の資産として扱われているケースが目立ちます。
本来は個人の資産であるべきものが会社の資産として扱われていることは、M&Aを実行するうえではマイナス要因となってしまいます。
なぜなら、個人資産や事業に関係のない資産を引き継ぐことを買い手側が望まないケースがほとんどだからです。
そのため、会社から切り離す資産を事前に決めておき、買い手候補の企業へ売却を打診するタイミングでは明確にその資産の取扱いを提示できるように準備しておきましょう。
5章:家族従業員の今後
中小企業では、社長の家族や親族が就労しているケースがあります。
家族の事情によっては会社が買収された後も残って働く必要がある場合も出てくるかもしれません。
それに対して買い手候補の企業は、買収後の人員体制について事前に検討しています。家族が会社に残って働くことを希望する場合には、M&Aの条件の一つとして買い手企業に伝えておく必要があります。
基本的な条件で合意した後に伝えると条件の見直しとなってしまい、最悪の場合「前提条件が違う」ということで破談になってしまうリスクもあるのです。
まとめ
M&Aは、売却活動を始める前にあらかじめ決めておいた方が良いことがたくさん存在します。
- 売却の希望価格
- 役員退職金の扱い
- 譲渡後も自分が会社に関与する期間・内容・報酬
- 個人資産の会社からの分離
- 家族従業員の今後
上記の項目について時間に余裕を持って検討しておくと、より理想に近いM&Aの実現に近付ける可能性が高まります。
しかし上記の項目について、自分一人で判断することは難しいかもしれません。困難を感じた際には、一度プロに相談してみることをおすすめします。