M&Aで会社売却の決断を下す背景には、それぞれの理由が存在します。
しかしこの記事にたどり着いた人の中には「こんな理由で会社を売却してよいのだろうか」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、社長がM&Aで会社を売る理由5選をお届けします。
さらに、会社売却を決断した後の行動のコツや、買い手側の立場に立った売却理由の考え方もご紹介しています。
ご自身が現在抱えている悩みに近い項目があるかもしれませんので、ぜひチェックしてください。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:社長がM&Aで会社を売る理由
長年手塩にかけて育ててきた会社を売却するということは、社長にとって辛い決断かと思います。
社長がM&Aで会社を売る理由には、社長自身の問題や経営の状況などいくつか考えられますが、まさに「人それぞれ」。社長の数だけ会社を売る理由が存在するのです。
とはいえ社長がM&Aで会社を売ろうと決断する理由について、主だったものをピックアップしてみます。
もし「これくらいの理由では会社を売っていいわけがない」と自分を追い込んでいる人がいたのなら、会社を売る決断の後押しをしてくれるかもしれません。
1-1 高齢による健康問題
社長自身が高齢になると、様々な健康問題が出てくる人も多いことでしょう。
日々の通院治療が必要になったり、フルタイムでの勤務が難しくなってきたりといったことも起こり得ます。
たとえ病気ではなくても若い頃に比べると体力が衰え、社長業を続けていくことを困難に感じ始める人も。
また、年齢を重ねれば重ねるほど「万一の事態」を想像する機会も出てくるかもしれません。
人間は誰しも歳をとっていくものです。「自分が元気なうちに会社への責任を全うしたい」との考えから、M&Aでの会社売却を決断する社長はたくさん存在します。
健康面の不安や体力低下は、M&Aを決断するうえで立派な理由となるのです。
1-2 モチベーションの低下
経営へのモチベーションが低下し、自分の経営能力に限界を感じ始めたことがきっかけでM&Aによる会社売却を検討する人も多く存在します。
なぜなら、社長の経営へのモチベーションは、会社の業績に直結しているといえるからです。
特に経営に関する決定権の多くを社長が握っている、いわゆる「ワンマン経営」の会社では、その傾向が強く現れやすいという特徴を持っています。
- 経営に対するモチベーションが低下したまま一向に上がらない
- 経営が傾き始めているのを実感しているが、どうしたら良いのか分からない
- 今後自分の力で業績を上げ続けていく自信がない
上記のような考えを持っている社長は、M&Aでの会社売却を検討しても良いでしょう。
とくに経営が傾きはじめているのに自分の力で立て直す自信のない人は、すぐにでもM&A会社にコンタクトを取って相談すべきです。
なぜなら経営の悪化を放っておくと、最悪の場合会社の倒産及び社長個人の破産手続きが待ち受けている可能性があるからです。
自分で解決できないと感じているならば、早めに第三者に会社を任せる選択肢を選びましょう。
1-3 プライベートなことに人生の時間を使いたい
今まで仕事一筋に生きてきた社長にとって、「そろそろ家族との時間を優先させたい」「自分の趣味の時間が欲しい」という感情が芽生えてくるのはごく自然な流れです。
そこでM&Aで会社を売却し早期リタイアすることで、上記の望みを叶えられる可能性が高まります。
会社と従業員を守りながら譲渡利益を得られるM&Aは、早期リタイアを望む社長にはぴったりの方法といえるかもしれません。
1-4 後継者の不在
現在日本の中小企業の多くは、後継者の不在に悩まされています。
それに加えて社長の高齢化も進んでおり、「引退したいのに後継者がいないため引退できない」という状況に晒されている社長も少なくありません。
また、後継者の不在は会社の存続にも関わる重要な事項のため、早めに解決したいものです。
後任の人物が親族や社内に見当たらない場合はM&Aによる事業継承を検討しますが、社外の人物へ経営権を譲る会社は増加傾向にあります。
実際に、平成28年に中小企業庁により開催された「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)」によると、経営を引き継いだ人物の約4割が社外の人物だったということが分かります。
参考:中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)」
1-5 新しいビジネスの立ち上げ
M&Aでの会社売却は資金調達のために行われるケースも多く存在し、社長が新しいビジネスを立ち上げたい場合もこれに当てはまります。
高い売却益を得るためには会社を売りに出すタイミングがポイントになるため、売り時の見極めが重要です。
中には、立ち上げた会社が成長しきる前に売却し、その資金を元手に新たなビジネスを立ち上げる連続起業家(シリアルアントレプレナー)と呼ばれる人たちも存在します。
2章:会社売却は熟考し決断したら迷わず突き進むことが重要
「会社を売る」ということは、誰しもが簡単に決断できることではありません。
自分のこと・従業員の未来・取引先との関係などたくさんの事項に対して検討を重ね決断に至るケースがほとんどかと思います。。
しかし一度決断したら、M&A完了に向けて迷わず突き進んでください。
なぜなら、迷っているうちに業績が落ちるなどして企業価値が下がってしまい、売却価格に影響を及ぼす可能性があるからです。
会社売却の決断をしたのなら、誰しもが少しでも高値で売却したいと考えるものです。そのために、決断したら即行動に移すことが大切なのです。
また、会社売却の検討段階から仕組み化に取り組むなどして、企業価値を高める努力を行うと良いでしょう。
3章:買収相手に不要な不安を抱かせない表向きの理由も必要
社長が会社を売りたい理由は人それぞれ、様々な理由があります。
どんな理由であろうとも会社売却を行いたいことに変わりはなく、「財産の処分権」は憲法で権利として認められているため、社長の意思は尊重されるべきです。
しかし買い手側からしてみると、「後々大きな損失やトラブルの原因に繋がる理由が隠されているのではないか」と不安を感じることもしばしばです。
買い手側に対してそのような不安を抱かせないためにも、「表向きの理由」を用意しておくと良いでしょう。もちろん嘘は厳禁です。
具体的な例としては、自身のモチベーションが続かないことを理由に会社売却を行う場合は、「自分以上に会社を成長させてくれる会社へ譲り渡したい」などが挙げられます。
社長が会社を売却したい理由を、買い手側が安心して「この会社を買収したい」と思えるように、上手に工夫して伝えましょう。
まとめ
社長がM&Aで会社売却を検討する理由は、自身の健康への懸念であったり、経営に対するモチベーションであったりと人それぞれです。
自身のリタイアではなく、会社の発展や資金調達も会社売却の理由として挙げられます。
また、様々な理由が複合的に組み合わさった結果として会社売却を考える社長も少なくありません。
「売りたい理由」に個人差はあれど「売ってはいけない理由」はありません。
しかし買い手側からしてみると、「会社を売りたい理由」は買収後の損失やトラブル発生への不安を抱く材料にもなり得ます。
そのため買い手側に安心して買収してもらえるように、表向きの売却理由を用意しておくと良いでしょう。
そして大切なことは、会社を売却すると決断したら迷わずM&Aの完了へ向けて突き進むことです。
迷っているうちに会社の売却価格が下がってしまわないように、早期に動き出してください。
また、迷い過ぎてなかなか決められないという人もいるかと思います。
迷ったときには一度M&Aの無料相談などを利用して、自社の価値を算出してもらうのもおすすめです。
自社の価値が数字で見えることで、売却への決断を後押ししてくれるかもしれません。