多くの中小企業にとって、資金繰りの安定は課題の1つになっているのではないでしょうか。
特に繁忙期と閑散期の差が激しい業種などは、閑散期をどのようにして乗り切ろうかと毎回頭を悩ませている社長もいるかと思います。
資金繰りが悪化すると、たとえ黒字であっても倒産の可能性があります。
資金繰りが思わしくない時期は胃がキリキリ痛んで夜も眠れない日があるんです…。
そこでこの記事では、M&Aを中心に資金繰りの安定を図る方法を解説します。資金繰り悪化のストレスから解放されて、心身ともに健康な毎日を送りましょう。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:M&Aの会社売却で大手企業の傘下に入ると資金繰りは安定する
資金繰りを安定させる方法の中でも安心を得やすい方法が、M&Aで会社売却を行い大手企業の傘下に入ることです。
会社を売るんですか!?
大丈夫です。会社を売っても法人格はそのままですし、社長が社長として残れる可能性だってありますよ。
そうなんですね…。ビックリしました。
大手企業の傘下に入るためには、株式譲渡というスキーム(手法)で会社売却を行います。
自社の株式を売却して経営権を買い手企業へと譲り渡すM&Aのスキーム
会社のオーナーが社長から買い手側企業へと変わるだけなので、会社自体はそのまま存続します。
ただし2社がグループ企業として統合されるため、経営システムや業務システムなどには大きな変化をともなうケースが多くみられます。
しかしその他の点は統合前とほとんど変わりません。
※詳細な変更点については、2社間で話し合いのもとに決定します。
そして大手企業の傘下に入ることで信用力がアップし、追加の借入が可能になったり、親会社から借入ができるようになったりするのです。
これで資金繰りの安定化が図れるのです。
それが本当なら夢のような響きですね!
本当なんですってば(笑)
2章:M&Aで大手企業の傘下に入るメリット
M&Aでは多くの場合、売り手より買い手の方が規模の大きな企業となります。
そのため売り手側としては、資本面が安定する他にも大手の技術・ノウハウを導入できるなどのメリットを得られます。
さらに売り手社長個人も、個人保証の解除などといったメリットを享受できるのです。
2-1 資本面が安定する
M&Aで大手企業の傘下に入る最大のメリットとして挙げられるのが、資本面の安定です。
買い手企業が持つ資本を活用できれば、円滑な資金調達が可能になります。
その資金を利用して生産体制を強化したり販路を拡大したりすることで、自社の弱点を補い市場での競争力をより高められるのです。
2-2 大手の技術やノウハウを導入できる
M&Aで大手企業の傘下となることで大手が持つ技術やノウハウが使えるようになり、事業の更なる発展を目指せます。
- 仕入れ単価が有利になる可能性がある
- 販路が拡大できる可能性がある
- 経理等の間接部門が統合されて効率化が実現する可能性がある
事業を発展させるためには、自社に必要なノウハウを持っているなど買い手企業の選び方が重要です。
お互いにシナジー効果を見込める相手とのM&Aを目指しましょう
2-3 社長の個人保証や個人資産の担保を外せる可能性がある
中小企業において事業承継の際に大きなネックとなっているのが、社長の個人保証や個人資産の担保の存在です。
会社を継いでもらうには担保も引き継いでもらわないといけませんよね。私もそこがネックで息子に「後を継いでほしい」と言い出せなかったんです。
個人保証や担保を外してもらう手段としても、M&Aは有用なのですよ。
社長の個人保証や担保は、借入を行っている金融機関の決済が下りれば外せます。
個人保証を引き継いでもらう旨を買い手側と合意し、会社のオーナーが新株主に移った後に金融機関で個人保証解除の決済が下りれば完了です。
2-4 M&A後も社長を続けられる選択肢がある
意外に思われるかもしれませんが、実はM&Aで会社を売却した後もそのまま社長職を続けられる可能性があるのです。
M&A後も社長を続けるためには、買い手と交渉して事前に取り決めておかねばなりません。
社長職を続ける期間に関しても、買い手側と相談の上で決定します。
経営権は持っていないため、雇われ社長となる
たとえ社長職を続けられたとしても、会社のオーナーではありません。自分で会社の経営方針を決められない点には注意しましょう。
2-5 後継者がいなくても事業承継が実現できる
M&Aの魅力の1つとして、後継者がいなくても会社を存続させられるという点が挙げられます。
M&Aで事業全体を第三者へ譲渡するため、廃業を回避して事業を存続させられるのです。
例え自社に後を継げる人材がいなくても、買い手側から新たな代表者が就任することで会社が存続できるんですよ。
2-6 経営への不安から解放される
社長個人にとって嬉しいメリットとして挙げられるのが、メンタルの安定です。
- 資金繰りの心配から解放される
- 会社が倒産してしまうのではないかという不安から解放される
- 従業員の生活を守らなければならない重圧から解放される
- 自身の破産への不安から解放される
上記のような経営に関わる不安から解放されることで、メンタルの安定が訪れます。
ずっと高血圧に悩んでいたけれど、M&A後にほぼ正常値に戻ったという社長もいらっしゃいましたよ。
普段あまり自覚はなくても、きっとたくさんのストレスを抱えているのでしょうね…。
3章:M&A以外で資金繰りの安定化を図る方法
そもそも資金繰りとは、資金の流れを適切に管理することです。
資金繰りが安定しないなどの問題を抱えている会社は、収入と支出のバランスが崩れて、資金の流れが滞っている状態に陥っているケースがほとんどです。
ここでは収入と支出のバランスを整えて、資金繰りを安定させる方法をご紹介します。
まだまだ自分がこの会社を経営していきたい!という意欲を持っている社長にはこちらがおすすめです。
3-1 なるべく多くの現預金を持つ
資金繰りの安定に欠かせない点が、とにかく手持ちの現預金を多めに持っておくことです。
ギリギリの現預金で資金を回す習慣は、簡単に資金繰りが悪化してしまう原因となります。
金融機関から借りられるときに借りておく
金融機関からの借入は少なければ少ないほど良いと考えがちですが、実はそれは間違いです。
あなたがもし金融機関の融資担当だったら、業績が悪化して資金繰りに困っている会社にお金を貸したいと思いますか?
うーん。今後業績が回復して貸したお金が返ってくるという見込みが立ちませんよね…。正直貸したくないかな、と思います。
返ってこないかもしれないお金は貸せませんよね。だからこそ、業績の良いうちに借りておいたほうが良いのです。
3-2 資金繰り表を作成し適切な管理を行う
資金繰り表は、安定した資金繰りに欠かせない存在です。
現金収支をまとめた表のこと。一定の区分や科目に基づき、一定期間のすべての現金収入と現金支出を分類・集計し、現金収支の動きや現金過不足の実態などを把握するための表
資金繰り表を作成することで日々のお金の流れが把握でき、資金不足となる状況を予測できるようになります。
3-3 利益を上げる
資金繰りを安定させるために最も効果的な方法といえば、利益を上げることです。
利益を上げてより多くの現金が入ってくるようになると、総じて会社の資金は増加します。
利益を上げるためには、以下の3つの要素が必要です。
- 売上を上げる
- 粗利率(商品の売価に占める利益の割合)を上げる
- 固定費を削減する
ポイントは、粗利率の良い商品をたくさん売ることです。
売掛金が急激に増えすぎると資金繰りが悪化するため注意が必要
しかしそんな簡単に利益が増えたら苦労はしませんよね。
利益を上げていくためには、粗利率を上げたり固定費を削減したりする会社独自の仕組み作りの実施が重要です。
4章:M&Aを行うべきか迷ったときは専門家に相談しよう
資金繰りを安定させるためのプロジェクトは、まずは自社のみで取り組むケースが多いかと思います。
しかし、競争の激しいこのご時世において、なかなかうまくいかない場合もあるでしょう。
本格的に経営が傾いてしまってからの会社の立て直しは、非常に多くの労力と困難を要します。
資金繰りが悪化した会社の中には、経営を立て直せないまま倒産という結末を迎える会社も少なくありません。
自社で対応しきれないときなど、資金繰りの安定化を図るためにはM&Aで会社売却を行った方が良いケースも存在します。
M&Aを行うべきかどうか、自分では確信が持てません。
多くの社長にとってM&Aは未知の世界ですから無理もありません。本格的に経営が傾いてしまう前に早めに専門家に相談してくださいね。
まとめ
資金繰りを安定させるための有用な方法として、M&Aによる会社売却が挙げられます。
M&Aで会社売却を行うメリットは以下の通りです。
- 資本面が安定する
- 大手の技術やノウハウを導入できる
- 社長の個人保証や個人資産の担保を外せる可能性がある
- M&A後も社長を続けられる可能性がある
- 後継者がいなくても事業承継ができる
- 経営への不安から解放されて健康増進が期待できる
M&Aを実行する前に、資金繰りの安定化へ向けて努力することも必要です。
- なるべく多くの現預金を持つ習慣を付ける
- 資金繰り表を作成して資金の流れを把握する
- 粗利率の良い商品を売って利益を上げる。
自社で解決できるのか、M&Aを実行したほうが良いのか迷ったときには、早めに専門家に相談してください。
本格的に経営が傾いてからでは遅すぎます。早め早めの対策が重要ですよ。