M&A

事業売却に必要な期間・プロセス・注意点を解説|赤字事業を切り離し経営の安定化を目指す

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いくつかの事業を展開している中小企業の中には、赤字事業を抱えて困っている会社も少なからず存在します。

  • 赤字事業さえなければ会社の経営はうまくいくのに…。
  • 赤字事業を切り離して会社の経営を安定させたい…。

中には上記のように考えている社長もいるのではないでしょうか。

実はM&Aには、特定の事業のみを切り離して売却できる事業売却という手法があります。

事業売却を上手に活用すれば、赤字事業のみを切り離せるのです。

そこでこの記事では、事業売却を検討している社長に向けて必要な期間・プロセス・注意点を解説しています。

齋藤さん

赤字事業を切り離して、自社の経営を安定化させたい人は必見です。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:事業売却は最低でも4~6ヶ月の期間が必要

時計

結論からいうと、事業売却に必要な期間は最低でも3~6か月です。

ただし、買い手探しが難航した場合などは1年以上の期間を要するケースもあります。

特に赤字事業の切り離しを検討している場合は買い手探しが難航する可能性もあるため、長期化しやすいことを念頭に置いておくと良いでしょう。

社長

なぜ赤字事業の事業売却は難しいのですか?

齋藤さん

買い手側の立場で考えてみましょう。「現状が赤字であっても買収したい」と思えるような魅力のある事業でないと、買収したいとは思えないですよね。

社長

たしかに!

2章:事業売却の流れ

会議イメージ

会社を丸ごと売却する株式譲渡の場合と比べると、特定の事業のみを売却する事業売却は手続きが煩雑になりがちで、スケジュールも長くなりやすいという特徴を持っています。

そしてまず最初に必要な手順が「事業売却の検討を開始すること」です。

本当に事業売却で良いのか、会社分割や株式譲渡の方がメリットが大きいのかをじっくりと検討したうえで結論を出してください。

事業売却への意思を固めたら、いよいよ具体的な工程に入ります。

事業売却の流れ

たくさんの手続きがありますが、ここでは事業売却の流れを大きく3つのステップに分けて解説していきます。

2-1 売却準備

まずは売却の準備に関する手続きです。売却準備の段階は、3つのステップに分けられます。

社長自らが情報や資料を集める必要のあるステップが多く、少々大変に感じるかもしれません。

事業譲渡の流れ1~4

売却準備にかかる期間は、およそ1~2か月程度です。

  • M&A会社にスピーディーに動いてもらうように依頼しましょう。
  • 提出を求められた資料は可能な限り早く提出しましょう。
齋藤さん

特に赤字事業の場合は、日々現預金が減少していきます。そのためスピード感を持って取り組むことが何よりも重要なポイントですよ。

〇M&A会社を探して相談先を決定する

まず最初に、事業売却完了までの工程をサポートしてくれるM&A会社を探しましょう。

少々面倒に感じるかもしれませんが、無料相談や売却価格の査定などを利用して、複数のM&A会社と話をしてください。

なぜならM&Aを成功させるためには、依頼するM&Aコンサルタントとの相性が非常に重要だからです。

齋藤さん

安心してM&Aを進めるために、「この人になら信頼してお任せできる」と思えるM&Aコンサルタントと出会ってくださいね。

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〇 秘密保持契約の締結

信頼できるM&Aコンサルタントに出会えたら、次はM&A会社と秘密保持契約を締結します。

無事に契約の締結が済んだら、いよいよ事業売却へ向けた具体的な工程の開始です。

齋藤さん

信頼できるM&Aコンサルタントと一緒に頑張りましょう!

〇 資料提出・売却価格の査定

売却先を探す前に、具体的に売却する事業を決定し、売却事業に関する数字を整理しておく必要があります。

  • 事業別の貸借対照表
  • 損益計算書

上記2点は用意しておきましょう。

また、買い手探しに必要不可欠なノンネームシートの作成も必要です。

ノンネームシートはM&A会社が作成しますので、提出を求められた資料や情報の提供には積極的に協力してください。

ノンネームシートとは

買い手候補企業に買収を打診するために必要な書類。

売り手企業に関する概要資料のことで、売り手企業が特定されないように匿名性を持たせているもの。

ノンネームシートに記載する項目例

  • 業種
  • 地域
  • 従業員数
  • 簡単な財務状況(売上・営業利益・売却対象事業の資産・負債など)
  • 譲渡理由
  • 希望譲渡時期
  • 会社の強み・弱み   など

※依頼するM&A会社や譲渡スキームによってノンネームシートに記載する内容は異なります。

資料を提出したら、譲渡する事業の価値をM&A会社側で算出します。

齋藤さん

ここでだいたいの譲渡価格が判明します。ただし赤字事業を売却しようとしている場合は、譲渡価格にあまり期待を持たないようにしましょう。

2-2 買い手探索~基本合意

売却の準備が整ったら、次のステップへと進みます。具体的に買収を検討してくれる企業を探し、条件などの交渉を行います。

事業譲渡の流れ5~7

買い手探索から基本合意に至るまでの期間は、およそ2~3か月です。

〇買い手探し

M&A会社へ依頼している場合、買い手探しはM&A会社側で行います。

複数の企業に対して売り手側の会社名などを明かさないまま初期的な売却の打診ができるので、買い手候補企業を多く集められるメリットを持っています。

齋藤さん

M&A会社へ依頼せずに、得意先や仕入れ先などに対して売り手社長が直接売却を持ちかけるケースも存在します。
トップ同士が顔見知りのため、スピード感を持ってプロジェクトが進められる利点を持っていますよ。

社長

確かにそれは良さそうですね。買収してくれそうな取引先に心当たりがあるので、早速話をもちかけてみます!

齋藤さん

ちょっと待ってください。うっかり情報が漏れてしまうと、自社の従業員から「私たちを身売りするんですか?」と問い詰められてしまう事態になりかねません。事業売却の話を持ち掛けるときは、慎重に判断してくださいね。

〇 条件交渉

売却候補の買い手が現れたら、具体的な条件の交渉を行います。

条件交渉内容
  • 売却対象(買収対象)となる資産および負債の詳細
  • 売却価格
  • 売却時期
  • 従業員の処遇 など

〇基本合意契約の締結

売り手側と買い手側がお互いに売買への意思を固め、基本的な条件が決まったら双方で基本合意契約を締結します。

基本合意契約の内容に基づいて、今後の具体的なプロセスとスケジュールを決定していくのです。

また基本合意契約には、最終的な事業譲渡契約の締結までに決めておかなくてはいけないことを洗い出す目的も含まれています。

2-3 売却手続き~クロージング

買い手企業と基本合意契約が締結されたら、事業売却の完了まではあとひといきです!

ここでもかなりたくさんの手続きが必要となりますので、最後まで気を抜かずに頑張りましょう。

事業譲渡の流れ8~10

事業売却の際に売却手続きからクロージングまでに必要な期間は、およそ1~2か月です。

〇 デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスとは

買い手側が事業を買収する前に売り手を調査すること

事業売却の場合は譲渡対象となる資産や負債が明確になっているため、実施しないケースも多く存在します。

デューデリジェンスを実施した場合でも、簡易的なものにとどまることが多いでしょう。

齋藤さん

デューデリジェンスが行われる場合は、一般的に1~2ヶ月の期間を要します。

デューデリジェンスで調査される主な内容
  • 事業
  • 法務
  • 人事
  • 財務
  • IT
  • 税務 など

事業を買収する側としては、買収後に起こり得るリスク(隠れた負債など)を具体的に把握したいものです。

そのために行われるのがデューデリジェンスだと考えておけば良いでしょう。

デューデリジェンスの実施にあたり、売り手側には買い手から様々な質問が投げかけられたり資料提出の依頼が来たりします。

全ての質問に対して嘘偽りなく丁寧に回答し、買い手からの信頼に応えるよう努めてください。

〇 事業譲渡契約の締結

詳細な条件に双方の合意が得られたら、最終的な事業譲渡契約の締結となります。

事業譲渡契約の内容は法的な決まりがありません。そのため双方の弁護士など法律の専門家によって入念なチェックが必要です。

事業譲渡契約の主な記載事項
  • 譲渡する事業の内容
  • 譲渡価額
  • 譲渡日(効力発生日)
  • 譲渡対象事業の資産および負債
  • 譲渡対象資産等の移転手続き
  • 従業員の取り扱い
  • 競業避止義務 など

事業譲渡契約を締結するためには、売り手側は株主総会の特別決議が必要となります。

売り手企業に複数の株主がいる場合、決議が否決されて事業売却を断念せざるを得ない状況に陥ってしまうことも考えられるので注意が必要です。

M&A会社に売却の相談を行う前に、自分以外の株主が事業売却に反対する可能性を考慮に入れておきましょう。

一定の金額以下の事業売却の場合は、株主総会による特別決議の必要はありません。
ただし、事業譲渡に反対する株主が現れた場合には、事業譲渡の効力発生日の前日までに株主総会を開かなければなりません。

〇 クロージング

事業譲渡契約の締結後から事業譲渡が完了するまでの手続きをクロージングと呼んでいます。

事業譲渡の場合は移管される事項が多岐にわたっており、それぞれ個別に移管手続きを行う必要があるため、クロージングの期間は1ヶ月以上かかるケースが多くなります。

3章:事業売却の注意点

注意標識

不要な事業を会社から切り離せる事業売却ですが、いくつかの注意点があります。

場合によっては会社を丸ごと売却する株式譲渡の方が大きなメリットを得られる可能性も出てきますので、慎重な検討が必要です。

3-1 売却希望価格には幅を持たせておく

なるべく多くの買い手候補企業と出会うためにも、売却希望価格は幅を持たせて設定しましょう。

買い手が付かない状態よりは、多少売却希望価格より安くても買収してもらえた方がメリットが大きいため

「高値で売却する」ことよりも、「売却の完了」を最優先に考えることが大切です。

なぜなら赤字事業の場合は、売却活動が長引くと現預金がどんどん出ていってしまうからです。

齋藤さん

その後売却に成功して売却益が入ったとしても、差し引きするとむしろマイナスになってしまう恐れがあります。

3-2 妥協できる点と譲れない点を決めておく

色鉛筆

売却希望価格に幅を持たせることは事業売却にとって重要なポイントですが、妥協できる点と譲れない点を明確に決めておくことも大切です。

  • 売却希望価格の下限
  • 従業員の転籍
  • 明確な売却完了時期

借入などの負債を手放したいのであれば、事業売却ではなく株式譲渡がおすすめです。

本当に事業売却で良いのかという点も含めて、妥協できる点と譲れない点を検討してください。

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3-3 譲渡益に対して課税される

事業売却によって利益が出た場合は、法人税が課税されます。

ただし会社に繰越欠損金が計上されている場合は、事業売却益と相殺ができるため法人税が少なくなります。

4章:事業売却のメリット

メリット

事業売却の主なメリットには、以下の2点が挙げられます。

  • 特定の事業だけを売却できること
  • 会社の法人格を残せること

4-1 特定の事業だけを売却できる

事業売却の最大のメリットといえば、特定の事業だけを売却できる点です。

赤字事業や本業には関係のない事業を切り離して売却すれば、本業だけに集中できるようになります。

その結果本業の業績が伸び、企業価値を高められる可能性が高まります。

4-2 会社の法人格を残せる

事業譲渡の場合は会社の法人格は残ります。そのため売却代金を既存事業への投資にあてたり、新規事業に投資したりすることが可能です。

会社を自分の手元に残したいと考えている社長にとっては、最適な手段だといえるかもしれません。

5章:事業売却のデメリット

デメリット

会社の一部の事業のみを売却する事業売却には、メリットばかりではありません。

デメリットも十分に考慮したうえで売却を決定してください。

5-1 株式譲渡と比べると手間がかかる

会社を丸ごと売却する株式譲渡と比べると、売却する事柄を細かく取り決める必要のある事業売却は手続きに手間がかかります。

齋藤さん

さらに許認可が絡む事業を売却する場合は、手間に加えて時間もかかります。

株式譲渡と事業譲渡の違い

事業売却の場合は個別財産ごとに事業承継の許可や許諾を得ていく必要があるため、引継ぎに時間を要してしまうのです。

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5-2 債務が残る可能性がある

事業売却を行った場合、債務や債権が自動的に買い手側へと引き継がれることはありません。そのため事業を売却しても、債務は残ります。

事業売却で債務も買い手側に引き継いでもらいたいのであれば、買い手側・取引先・債権者それぞれの承諾および手続きが必要になることを覚えておきましょう。

齋藤さん

ただし債務を買い手側に引き継いでもらう場合は、債務の分だけ売却価格も下がります。

事業譲渡で債務を引き継ぐイメージ
社長

結局売却金額は変わらないということですか?

齋藤さん

その通りです。債務を引き継がない方が、手続きがスムーズに進み時間の短縮につながるので、個人的にはおすすめです。

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6章:会社の経営を立て直すなら株式譲渡で会社を丸ごと売却する方法もアリ

ビル群のイメージ

事業売却を検討し始めた動機が経営の立て直しであれば、株式譲渡で会社を丸ごと売却する方法を検討しても良いでしょう。

株式譲渡の主なメリットには、以下の6点が挙げられます。

  • 会社の株式を買い手側に譲渡するだけなので手続きが簡単
  • 借入金や債務などの負債も買い手側に引き継げる
  • 社長個人の借入や個人保証も解除できる可能性がある
  • 株式譲渡後も会社に残る選択ができる可能性がある
  • 従業員の雇用を引き継げる
  • 会社がさらに成長する可能性がある

株式譲渡のデメリットは以下の2点です。

  • 会社の経営権は失う
  • 全ての資産が買い手側に移動する

事業売却と株式譲渡のメリットを比較して、自社の場合はどの方法がふさわしいのかをよく検討してください。

どちらの手段が適切なのか迷ったときには、M&Aの無料相談などを利用して専門家の意見を仰ぎましょう。

まとめ

書類の上で握手するイメージ

事業売却には最低でも4~6ヶ月の期間が必要で、中には1年以上の期間を要するケースも存在します。

しかし赤字事業や本業とは関係のない事業を切り離せるため、本業に集中したいと考えている社長にとっては最適な選択肢といえるかもしれません。

ただし特定の事業のみを売却する事業売却は、手続きが煩雑になりやすいという特徴があります。

事業売却を検討するのであれば、売却希望時期には余裕を持っておいた方が良いでしょう。

不要な事業は会社から切り離して、経営の安定を目指してください。

齋藤さん

借入などの負債も買い手側に引き継いでもらいたいのであれば、株式譲渡による会社売却がおすすめですよ。

無料相談などを利用して、自社に最適な方法を見つけてくださいね。

メール相談
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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。