M&A

M&Aは従業員に反対されやすい⁉スムーズに受け入れられる対策と伝え方

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会社の売却先が決定し安堵したのも束の間、従業員へM&Aの実行を発表した途端に猛反対に遭うケースが稀に発生します。

その結果多くの従業員が退職してしまうなどして、ペナルティが発生したりM&A自体が破談になったりするケースも存在します。

苦労して進めたM&Aの交渉が白紙に戻ってしまわないためにも、従業員への伝え方は非常に大切です。

この記事では、なぜM&Aが従業員から反対されやすいのかを説明し、スムーズに受け入れてもらうための方法を解説しています。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:M&Aによる会社売却が従業員から反対されやすい理由

good or bad

自分が勤めている会社がM&Aにより売却される。

この事実を初めて耳にした従業員は誰しもが「M&Aを行う必要があるほど経営が上手くいっていないのだろうか」と少なからずショックを受けることと思います。

そしてほとんどの従業員が、会社の未来への不安と同時に自身の将来へも大きな不安を感じるでしょう。

そして会社売却の事実を知ったショックと自身の将来への不安は、時として強い反発心として表面化してくることがあります。

1-1 従業員が感じる不安の種類

M&Aによる会社売却の事実を知った従業員が感じる不安には、主に以下の5種類が挙げられます。

  • 自分自身の雇用継続に関する不安
  • 自分自身の待遇に関する不安
  • 自分自身の勤務環境に関する不安
  • 会社が潰れてしまうのではないかという不安
  • 未知なる買収相手への不安

会社の未来への不安もありますが、やはり「自分はこれからどうなるのだろう」という不安を感じる人がほとんどです。

また、不安の強さは勤続年数に比例する傾向があります。勤続年数が長い従業員ほど、自身を取り巻く環境が変化することに対しての不安が大きくなりやすいといえるでしょう。

1-2 経営陣に対する不信感を抱く従業員も

M&Aで会社売却を行う事実を知った従業員の中には、「なぜ会社売却に至るまでに自社で解決できなかったのか」と経営陣に対して不信感を抱く人物が出てくる可能性があります。

特に会社に対する愛情が強い従業員にその傾向が強く、不信感がやがて失望や絶望といった気持ちに変わってしまうことも考えられるため注意が必要です。

また、「なぜ自分に相談してもらえなかったのか」という気持ちを抱く経営幹部が現れることも実際に発生しているトラブルの1つです。

とはいえM&Aの交渉は秘密裏に進められるものです。従業員から不信感を抱かれないためには、公表する時期と伝え方を間違えないことが大切です。

2章:従業員にM&Aを反対されないための対策

チェス

従業員にM&Aを反対されないためには、従業員の幸せを最優先に考えたM&Aを行うことが一番の対策です。

従業員が不安に感じる要素を1つ1つ潰していき、潰せなかった事項があれば誠意を持って説明責任を果たしましょう。

従業員にスムーズにM&Aを受け入れてもらうことは、会社の今後にとっても大切なポイントになります。

M&A会社の担当者ともよく相談しながら、しっかりと準備を行ってください。

2-1 M&Aを行ったときと行わないとき、それぞれに対してのメリット・デメリットを洗い出しておく

社長から見ると長い時間をかけて考え抜いた末に実行に踏み切ったM&Aですが、従業員の中には「M&Aなんて必要なかったのではないか」と考える人もいるかもしれません。

そのためM&Aを行ったときと行わなかったとき、それぞれに対してのメリット・デメリットを整理して明確に提示できるようにしておきましょう。

このときに重要な点が「従業員目線でのメリット・デメリットを挙げる」ことです。

M&Aを行った方がメリットが大きいということが分かると、従業員に対して安心感を与えられる可能性が高まります。

2-2 全従業員へM&Aの実施を伝える前に打ち明けておくべき人間をピックアップしておく

一般的には、全従業員にM&Aを打ち明ける前に経営幹部クラスの従業員に打ち明けるケースが多くを占めています。

具体的には会社を譲渡する前、M&Aの基本合意締結後に打ち明けることが多いようです。

なぜなら経営幹部クラスへの発表が遅れると、社長への不信感を抱かせてしまうリスクが発生してしまう恐れがあるためです。

さらに社長への不信感から多数の経営幹部が退職してしまうと、M&Aそのものが破談になってしまう恐れもあるため、伝えるタイミングには注意してください。

また、今まで二人三脚で経営を行ってきた、いわゆる「社長の右腕」的な存在の幹部には、もっと早い段階で打ち明けるケースも存在します。

スムーズなM&A実行のためにも「誰に」「いつ」伝えるかを慎重に考え、リストアップしておくことをおすすめします。

2-3 全従業員へM&Aの実施を伝えるタイミングを考える

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経営幹部への発表が終わったら、全従業員へM&Aの実施を伝えます。タイミングとしては株式譲渡契約を締結した後が一般的です。

なぜなら、株式譲渡契約の締結後は従業員の処遇についても決まっているため、M&Aの発表により将来に対する不安を抱かせてしまうリスクが減らせるからです。

とはいえ従業員へM&Aを伝えるタイミングに正解はありません。

会社の雰囲気や社長と従業員たちとの関係性によってもベストなタイミングは異なります。

発表のタイミングは、M&A会社の担当者ともよく相談して決めることをおすすめします。

2-4 買い手側と買収後の会社の運営や従業員の処遇について確認しておく

従業員にとって最も不安な要素が「自身の今後」についてです。

今までと変わらず働き続けられるように、雇用や待遇について買い手側としっかり相談して確認しておきましょう。

また、働く環境が大きく変わることに対する不安を抱く従業員も少なくありません。

勤務地や仕事のやり方など、会社の運営に関わる事項も確認が必要です。

従業員にとってプラスになる変更なら受け入れられやすいのですが、異動などマイナスになり得る変更には反対が起きやすいといえます。

マイナス要素が発生してしまうときには、分かりやすく丁寧に説明し、従業員からの理解を得られるように努めましょう。

3章:従業員に反対されないM&Aの伝え方

重要ポイント

M&Aによる会社売却の事実をスムーズに受け入れてもらうためには、従業員への伝え方も重要です。

冒頭で「会社を売却する」というショッキングな発表を聞いた従業員は、少なからず動揺していることでしょう。

十分な説明が行われずに従業員が不安を抱いたままになってしまうと、退職者が多数発生してしまう恐れがあります。

買い手側と合意した条件によっては、ペナルティが発生したりM&A自体が破談になったりといった事態になりかねません。

従業員に安心感を与え、会社や自分自身の今後に対する不安を払拭してもらえるように、従業員の気持ちを第一に考えた伝え方を実践してください。

3-1 伝えるべきことを書面にまとめておく

従業員に安心感を与えるためには、経営者として堂々と穏やかな態度で伝えることもひとつのポイントです。

そのためにはあらかじめ伝えるべきことを書面にまとめておき、いつでも見られるようにしておくと良いでしょう。まとめておいた文章を読み上げる格好で発表しても構いません。

従業員に安心してM&Aを受け入れてもらうポイントとしては、以下の項目が挙げられます。

  • 今まで働いてきてくれたことへの感謝の気持ち
  • M&Aに至った経緯と目的
  • 買い手企業はどんな会社か
  • 買い手企業をM&Aの相手として選んだ理由
  • 従業員の雇用の継続

「引き続き安心して働いてほしい」という気持ちを、丁寧に誠実に伝えることを心掛けてくださいね。

3-2 従業員からの質問にも積極的に答える

M&Aというものは、社長にとっても初めてのケースが多いかと思いますが、ほとんどの従業員にとっても未知の世界です。

そのため自身の処遇や会社の今後についてなど、疑問を抱く点が出てくることでしょう。

M&Aの実施を発表する際には十分な質疑応答の時間を設け、従業員からの質問にも積極的に答えるようにしてください。

未定な事項が出てくるなどして回答を保留にするケースがあるかもしれませんが、しっかりと確認を行い後日改めて回答を発表しましょう。

全ての質問に誠意をもって答える姿勢を見せることでも、従業員は安心感を抱けるようになります。

3-3 買収側の担当者に同席してもらうケースも

全従業員にM&Aを発表するときに、買収側の担当者に同席してもらうケースも存在します。

従業員は買収相手の顔を見ることにより、安心感を抱きやすくなるというメリットがあります。

ただし急な展開に気持ちが付いていけず、相手に対して反発を感じてしまう場合も。

買収側の担当者が同席するかどうかについては、会社の雰囲気などを考慮したうえで、買い手側ともよく相談して決定してください。

まとめ

仲間

M&Aで会社売却の実行を従業員にスムーズに受け入れてもらうためには、彼らが感じるであろう不安要素を1つでも多く減らしてあげることが重要です。

そのためにはM&Aを行うメリットを説明した上で、今までと変わらず働き続けてほしいということを誠意を持って従業員へ伝えましょう。

また、安心してM&Aを受け入れてもらうには、打ち明けるタイミングも大切です。

不確定要素が多いうちに伝えてしまうと従業員は不安を感じやすく、離職へと繋がってしまう恐れがあります。

そのため従業員の処遇などが決まってから、遅すぎないタイミングでM&A実行を伝えましょう。

M&Aを従業員へ打ち明ける時期については、M&A会社の担当者や買い手側の担当者ともよく相談して決めることをおすすめします。

無事に従業員から受け入れられたならば、M&Aの完了まであと少しです。長い道のりも終盤に差し掛かってきていますので、あとひと踏ん張り頑張りましょう。

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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。