M&A

M&A戦略とは?重要性や立案の流れ・目的別策定ポイント・注意点を解説

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M&Aも会社の経営と同じで、成功させるためには戦略の構築が欠かせません。しかし自社の経営とは違い、何をどのようにして戦略を立てていけばよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。

本記事ではM&A戦略について、その重要性・立案方法・策定のポイントなどを解説しています。

M&Aを絶対に成功させたいけれど何から始めるべきなのか悩んでいる経営者様は、ぜひ本記事をお役立てください。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:M&A戦略とは

チェス

M&A戦略とは、M&Aの目的を達成するために策定する計画のことを指しています。

もう少し分かりやすくいうと、経営者がM&Aで解決したい悩みについて最もスッキリ解決できる道筋について考え、具体的な計画を立てることです。

社長

目的へ向かうための道筋を立てる、という意味では経営戦略を立てる行為に似ていますね。

齋藤さん

まさにおっしゃる通りです。M&Aによって得られる効果を最大限高められるような、そんな戦略を策定したいですよね。

2章:売り手からみたM&A戦略の重要性

説明する男性

もしM&A戦略を立てずに、行き当たりばったりやその場の勢いでM&Aを実行したらどうなるでしょうか。

多くの場合、M&Aの実行によって達成したいと考えていた目的に手が届かないまま終わってしまうでしょう。

それどころか、不都合な条件ばかりを飲まされて、理想とは程遠い現実を招くことになるかもしれません。

齋藤さん

たとえば、買い手から不当に安い価格を提示されたり、不利な条件を飲まされたりといった具合です。買い手が見つからない可能性も考えられますよ。

そのような事態を避けるためにも、M&A戦略の立案は必要不可欠なのです。

さらにいうと、「目的を達成するためにはM&Aが本当にベストの選択なのか」というところまで遡って検討する必要があります。

他にも手段がある場合、両者のメリットやデメリットなどを比較して、最善の方法について検討しましょう。

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3章:M&A戦略の立て方

会議をしている様子

ここからは実際に具体的なM&A戦略の立て方について確認していきましょう。1つずつ順を追って検討していくことで、より効果的かつ効率的な戦略の立案が可能です。

3-1 M&A戦略はいつ立てる?

M&A戦略は、M&Aプロセスの開始前に立案します。

正確にはM&Aを本格的に検討し始めたくらいのタイミングで、戦略についても考え始めるとよいでしょう。

齋藤さん

もしかしたらM&A以外の解決策が出てくるかもしれませんので、その可能性も含めてM&Aプロセスの開始前に検討を始めてくださいね。

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3-2 M&Aの目的を明確にする

M&A戦略を立てるためには、何よりもまず明確なゴール設定が必要です。M&Aを実行する売り手の目的として、具体的に以下のような例が挙げられます。

  • 後継者不在問題を解決して事業承継を実現したい
  • 創業者利益を得て社長業から引退したい
  • 不要な事業を手放して経営再建を図りたい
  • 外部の風を入れて会社の成長スピードを加速させたい など
齋藤さん

M&Aの目的が明確になったら、忘れないように書き出しておきましょう。

社長

自分が覚えていればいいような気がしますが、違うのでしょうか。

齋藤さん

人間の記憶は正確なようで、その時の気持ちに合わせて少しずつブレが生じます。目的がブレるということは、M&Aの軸そのものがブレるということ。記憶ではなく記録として残しておきましょう。

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3-3 自社の現状を分析する

M&Aのゴール、つまりM&Aで達成したい目的の明確化とともに重要な要素として、自社の現状を分析して客観的に把握することが挙げられます。

社長

自社のことは自分が一番把握しているという自信があります。それでも改めて自社の現状を分析する必要がありますか?

齋藤さん

もちろん、会社のことは社長が一番よくご存知だと思います。その上でさらに徹底的に自社分析を行うことが、M&A戦略を立案する上では非常に重要な要素になってきます。

社長

そこまでしなければいけない理由はなんですか?

齋藤さん

自社にとって最もふさわしい買い手を選ぶためですよ。

自社分析を行うのに最適な方法として、SWOT分析をご紹介します。

SWOTとは、4つの単語の頭文字を取ってそれを繋げて読んだものです。

  • Strength(強み:自社の強み・長所・得意なことなど)
  • Weakness(弱み:自社の弱み・短所・苦手なことなど)
  • Opportunity(機会:社会や市場の変化などのうち、プラスになること)
  • Threat(脅威:社会や市場の変化などのうち、マイナスになること)

それぞれの事項について客観的に自社の現状を洗い出し、事業や組織の観点から課題を見つめ直すのです。

SWOT分析の他に、3C分析や4P分析などが利用されるケースもあります。

3-4 市場調査を実施する

最適なM&A戦略を立てるためには、自社分析だけでなく自社を取り巻く市場についての調査も大切です。

自社の主力商品の市場規模やシェアはどれくらいかなど、市場調査の項目は多岐にわたります。

また、調査対象となる市場は必ずしも同業の市場ばかりとは限りません。

M&Aのお相手を異業種で検討している際などは、他市場も幅広くリサーチする必要が出てきます。

社長

市場において「自社が今どの立ち位置にいるか」という調査ですね。確かに客観的な立ち位置を知ることは、自社の企業価値を知ることにつながりますね。

3-5 戦略を具体化する

M&Aの目的を明確にすることで、M&Aの前提条件や基本方針が決まります。さらに、自社分析と市場調査を経て、なんとなくでもM&Aにおける「理想のお相手像」が見えてきます。

そうしたら次は「理想のお相手へ理想の条件でM&Aを実行するため」のロードマップを描いていきましょう。

具体的には、以下の要素について検討します。

  • M&Aの対象となる企業
  • 使用するスキーム(株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割など)
  • 経営統合の将来設計
  • 会計・税務上のリスク
  • 実務上の必要プロセス など
社長

これらのことを全て自分1人で考えるのですか?M&Aに関する知識も浅いし、不安で仕方ありません。

齋藤さん

ご安心ください。私たちM&Aコンサルタントも、理想のM&Aを叶えるための最適なプランをご提案いたしますよ。

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3-6 M&Aの相手企業を検討する

前項までで明らかになった「理想のお相手像」を元に、具体的なお相手候補企業を抽出します。

一般的にお相手候補を絞る作業としては、まず数十社の候補企業を挙げたロングリストを作成し、その中から数社まで絞ったショートリストの作成を行います。

社長

私が50社リストアップするのですか!?

齋藤さん

リストアップ作業はほぼM&Aコンサルタントが行います。社長はロングリストからショートリストへの絞り込みを一緒に行うイメージをしておいてくださいね。

3-7 想定されるリスクを洗い出す

M&Aを成功へ導くためには、トラブルへの備えも大切です。想定されるリスクを事前に洗い出し、リスク回避やトラブル解決のための対策を講じておきましょう。

M&Aで想定される代表的なトラブルと対策は、以下の通りです。

想定されるリスクやトラブル対策
買い手が見つからない自社の価値を正確に把握し魅力をアピールする
従業員からの反発・退職M&Aを発表するタイミング及び伝え方を検討しておく
簿外債務の発覚簿外債務の有無をM&Aプロセス開始前に調査し、発見された場合は解消しておく
社長

万一トラブルが発生した場合にダメージを最小限に留めるためには必要な工程ですね。

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4章:目的別:M&A戦略策定のポイント

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ひとくちにM&Aといっても、その目的に応じて最適なM&A戦略は異なります。

ここでは、M&Aの目的別に最適な戦略を策定するためのポイントを確認していきましょう。

4-1 第三者への事業承継

M&Aの目的が第三者への事業承継である場合、重視すべき条件は主に以下の2点です

  • 従業員や取引先など全てを引き継げるスキームの選択
  • M&A後の会社をさらに発展させられる買い手選び
齋藤さん

つまり「会社の全てを買い手へ任せた後に安心して引退すること」を実現するためにM&A戦略を練るイメージです。

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4-2 創業者利益の獲得

創業者利益の獲得をM&Aの目的とした場合は「とにかく良い価格で売却すること」が大きなウエイトを占めてきます。

したがって、以下の3点を重点的にM&A戦略へ落とし込んでいきましょう。

  • 最も高く売れる売却時期を逃さないこと
  • 自社の魅力を効果的に買い手候補企業へアピールすること
  • 需要のある買い手候補へ自社を売り込むこと

とはいえあまりにも高い理想を掲げていては、売れる会社も売れなくなってしまいます。全てのものに適正価格があるように、会社にもそれぞれ適正価格があります。

自社の価値を客観的に見つめ、適正価格の範囲内で売却希望価格を設定しましょう。

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4-3 選択と集中

選択と集中とは、特定の事業に経営資源を集中させることです。この場合は手元に残す事業と切り離す事業が出てくるため、事業のみで売却できるスキームを選択することになります。

選択と集中をM&Aの目的とする際には、以下の点を重視して戦略を立てましょう。

  • コア事業を自社に残せるスキームの選択
  • 手放す事業の需要が高い業界への効果的なアピール
齋藤さん

事業を手放すことだけでなく、手放す事業をしっかりと活かしてくれる買い手の選定もしていきたいですね。

社長

確かに。ただ手放すだけでは社長として少々無責任ですよね。それに手放す事業を必要としてくれる買い手を見つけられれば、より良い条件での売却も叶いそうです。

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5章:M&A戦略を策定する際の注意点

注意標識

立案したM&A戦略の良し悪しによって、M&Aの成功が決まるといっても過言ではありません。

それくらいM&Aにおいて戦略は重要な要素です。そのため以下の4点には十分注意を払い、自社の売却にとってベストな戦略の立案を目指しましょう。

  1. M&Aはあくまでも手段であることを忘れない
  2. 自社に合ったスキームを選択する
  3. 現実的かつ合理的なM&A戦略を策定する
  4. 専門家のアドバイスのもとにM&A戦略を策定する

それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。

5-1 M&Aはあくまでも手段であることを忘れない

M&Aではよくある落とし穴なのですが、「M&Aの実行」自体が目的となってしまっているケースが見受けられます。

M&Aはあくまでも経営戦略の1つにすぎません。本来ならば、M&Aの向こう側に達成したい目的があるはずです。

M&Aを検討する際は、本来の目的を見失うことなく「本当にM&Aが最適な手段なのか」「目的を達成するために他にふさわしい手段はないか」ということも吟味する必要があります。

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5-2 自社に合ったスキームを選択する

M&Aで目的を達成するためには、スキームの選択が重要になってきます。

例えば事業承継を目的としている場合は、会社の経営権を売却し経営を買い手へ任せられる株式譲渡や、会社を買い手の一部にする吸収合併などのスキームを選択します。

その一方で選択と集中のためにM&Aを実行する際は、事業譲渡や会社分割などのスキームを選択することになるでしょう。

また、中には事業承継目的であっても事業譲渡を選択せざるを得ないケースもあります。

自社の目的や置かれている状況に応じて適切なスキームを選択することが、目標達成への近道だといえるのです。

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5-3 現実的かつ合理的なM&A戦略を策定する

いくら素晴らしいM&A戦略を立案したとしても、理想論ばかりを並べ立てたものでは意味がありません。

戦略は、実行するために立てるものです。実現可能で、極力無駄を省いた合理的な戦略を立案する必要があるのです。

5-4 専門家のアドバイスのもとにM&A戦略を策定する

今まで経営一筋でやってきた経営者様にとって「M&Aが最適なのか」「自社に合ったスキームは何か」などといわれても、すぐに答えを出すのは難しいことだと思われます。

そこでぜひ活用していただきたいのが、M&Aの専門家です。彼らは豊富な知識や経験を基に、最適なM&A戦略の立案をサポートします。

ただし、専門家であれば誰でも良いというわけではありません。

なぜなら、自社を理解しその魅力を余すことなく買い手候補企業へ発信してくれる専門家へ依頼することが、M&Aを成功させるポイントの1つでもあるためです。

M&Aの専門家を選定する際には、複数の候補をピックアップ及び比較検討し、信頼できる依頼先を見つけてください。

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まとめ

会議イメージ

M&A戦略とは、M&Aの目的を達成するために策定する計画です。

M&Aプロセスを始める前に「そもそも目的を達成するためにはM&Aが最適な手段なのか」という点も踏まえたうえで、戦略策定に対する検討を始めます。

齋藤さん

M&Aの目的をゴールとして、スタート地点まで逆算して考えるイメージですね。

より現実的で合理的なM&A戦略を策定するためには、M&Aの知識や経験の豊富な専門家のアドバイスが欠かせません。

信頼できるM&Aの専門家を経営者様自身の目で見極め、M&Aを成功へと導いてください

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ABOUT ME
この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。