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事業承継の相談先おすすめ8選|選び方や注意点も詳しく解説します

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現在日本では、後継者の不在など事業承継に悩みを持った中小企業の経営者が増えています。

そのような方の中には、事業承継について外部の専門家へ相談したいと考えている方もいるでしょう。

事業承継を実現するにあたっては、税務・法務・会計などの専門的な知識が必要です。専門家の知識を借りることで、自社に適した手段で納得のいく事業承継を実現できる可能性が高まります。

しかしひとくちに専門家といっても、どのような専門家へ相談するのが最善なのかは判断に迷うところです。

そこで本記事では、事業承継の相談先のおすすめ8選を紹介します。

それぞれの特徴とともに選び方や注意点も解説していますので、事業承継の相談先にお悩みを持つ経営者様は、ぜひ本記事を参考にしてください。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:事業承継の相談先おすすめ8選

おすすめできる事業承継の相談先として、以下の8つが挙げられます。

  1. 事業承継・引継ぎ支援センター
  2. 商工会・商工会議所
  3. 経営コンサルタント
  4. 金融機関
  5. 顧問の公認会計士・税理士
  6. 弁護士・行政書士
  7. 親族・友人・知人
  8. M&A仲介会社・マッチングサイト

それぞれで専門分野やおすすめできる特徴が異なりますので、以下で詳しく解説します。

1-1 事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、近年の中小企業における事業承継問題を解決すべく、2021年4月に全国に設置された公的な相談窓口です。

社長

公的な機関というのが、安心して利用できるポイントですね。

M&Aや親族内承継など事業承継に関するあらゆる相談ができ、M&Aのマッチング支援や仲介会社への取次ぎなどのサービスも受けられます。

  • 全国47都道府県に設置されているため地方の企業でも利用しやすい
  • 無料で相談できる

さらに、全国の事業承継・引継ぎ支援センターは連携しているため、離れた地域間でのマッチングもサポート可能です。

齋藤さん

事業承継・引継ぎ支援センターは、自社に適した事業承継方法について知りたいときに適している相談窓口だといえますよ。

1-2 商工会・商工会議所

商工会や商工会議所も公的な相談機関の1つで、経営者に対してさまざまなサポートを行っています。事業承継についても例外ではなく、その地域の事業承継に詳しい専門家に相談できます。

中には事業承継に関するセミナーを開催しているところもあるので、所属している商工会や商工会議所があれば問い合わせてみるとよいでしょう。

事業承継に関してはM&Aがメインで、中小企業庁により策定された「中小M&Aガイドライン」においても、支援機関の1つとなっています。

中小企業に関する業務経験が豊富なため、中小企業同士のM&Aに強みを持っている

ただし商工会や商工会議所は会員制度となっており、会員でなければM&Aの相談ができません。また、会員になるためには会費が必要です。

会員になれば無料で相談できますが、そもそも会員になるために費用がかかる点には留意しておきましょう。

また、事業承継の相談はできますが、実際のプロセスをサポートしてくれるわけではありません。プロセスを進める際には、別途専門家へ依頼する必要が出てくる点にも注意してください。

齋藤さん

すでに会員であれば、所属している商工会や商工会議所に相談してみるのがおすすめです。

1-3 経営コンサルタント

事業承継の支援を専門に扱うコンサルタントへ相談するのも1つの方法です。

多くのコンサルティング会社では、税理士・公認会計士・弁護士などの専門家と連携しており、相談内容に応じて専門家の紹介が受けられます。

また、コンサルティング会社には多数のコンサルタントが所属しているため、さまざまな視点からアドバイスをもらえるでしょう。

過去の似たような事例から、自社にとって最適な事業承継プランの提案を受けられる

その一方で、コンサルティング会社に依頼すると高額な報酬が必要になることが多いため、注意が必要です。

齋藤さん

事業承継について、完了までをトータルでサポートしてもらいたい方におすすめの相談先です。

1-4 金融機関

相談のしやすさでいえば、取引のある金融機関もおすすめです。

近年では、商業銀行や証券会社などの金融機関がM&A支援の専門部署を置くケースも増えています。

日常的に取引のある金融機関がM&A支援の部署を持っている場合は、事業承継先の紹介を受けられる可能性が高まります。

日常的に接している金融機関であれば、会社の経営状態なども十分に踏まえたうえで自社に合ったアドバイスが望める

ただし金融機関のM&A専門部署から事業承継先の紹介を受ける場合は、金融機関へ支払う報酬が高額になりやすいため注意してください。

齋藤さん

取引のある金融機関にM&A支援の部署が設置されているなら、一度相談してみても良いですね。

1-5 顧問の公認会計士・税理士

顧問の公認会計士や税理士は、普段からお金や経営について相談しており、会社の現状を理解し経営者の立場で回答がもらえることが期待できます。

社長

普段から接している人なので、気持ち的にも相談しやすいですね。

事業承継で発生する税金など、お金のことに関して状況に応じて的確なアドバイスが望める

ただし公認会計士や税理士は、事業承継の専門家ではありません。

なかには事業承継に関する知識や経験が浅い公認会計士や税理士もいるため、的確なアドバイスが得られないこともあります。

そのような場合は、事業承継の専門家へアドバイスを求めることを検討してください。

齋藤さん

顧問の公認会計士や税理士がいる会社であれば、最初の相談先としてはおすすめです。

社長

相談するだけしてみて、専門外だったら他の相談先を検討すればいいですしね。それに他へ相談したとしても、お金に関することは随時相談できますし。そう考えると心強いです。

1-6 弁護士・行政書士

弁護士や行政書士も顧問として依頼している場合は、事業承継の相談先として候補となります。

社長

たしかに顧問弁護士や行政書士も、会社の内情に明るいですよね。

弁護士は法律の専門家です。そのため事業承継で起こりがちな相続などのトラブルについて、法的な観点からアドバイスがもらえます。

一方の行政書士は、事業承継の際に必要となる書類作成において、頼もしい味方となってくれるでしょう。

事業承継で起こりやすい法的トラブルの回避や解決までのサポートを望める

ただし弁護士や行政書士も公認会計士や税理士と同じく、事業承継への知見が深いとは限りません。

また、事業承継先を見つけることに対応していない弁護士や行政書士も多いため、サポートできる範囲に限りがある可能性に留意しておきましょう。

齋藤さん

「事業承継を進めたいけど、トラブルが起こらないか不安」という方は、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

1-7 親族・友人・知人

専門家ではありませんが、身近な人に相談する経営者も多いです。

なぜなら、親族・友人・知人であればほかの相談窓口よりも関係性が近く、いつでも気軽に話せるからです。

たとえば後継者候補がいる場合などは、本当に次期経営者としてふさわしいか、客観的な意見を仰ぐこともできるでしょう。

経営者の人柄を把握している人に相談することで、経営者の気持ちに寄り添ったアドバイスが期待できる

ただし、親族・友人・知人は事業承継の専門家ではないため、必ずしも有益な回答を得られるとは限りません。

本格的に事業承継を進めていくのであれば、改めて専門家へ相談することをおすすめします。

また事業承継への悩みを相談したことが、思わぬことろへ流出する危険性もゼロではありません。注意深く、信頼できる人にのみ相談するようにしましょう。

齋藤さん

人選は重要ですが、誰かに話して心を軽くしたいときや、自分や会社に近い人から客観的な意見が欲しいときにおすすめです。

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1-8 M&A仲介会社・M&Aマッチングサイト

身近に後継者がいないのであれば、M&A仲介会社やM&Aマッチングサイトへ相談するという選択肢もおすすめです。

近年では事業承継目的のM&Aが増加しており、それにともない事業承継M&Aに強い仲介会社も多数存在します。

M&Aが成立するまでは報酬が発生しない報酬体系を採用しているM&A仲介会社やマッチングサイトもあり、気軽にM&Aの相手探しを始められます。

最短6ヶ月程で事業承継が実現できる

ただし経営コンサルタントと同じく、報酬が高額になりやすい点に注意が必要です。

M&A仲介会社やマッチングサイトを選ぶ際には、自社の規模や予算に合ったところを選びましょう。

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2章:事業承継の相談先の選び方

チェス

事業承継を成功させるまず1つめのポイントは、適切な相談先を選ぶことです。

もし不適切な相談先を選んでしまうと、以下のデメリットが考えられるため、注意しましょう。

  • 事業承継の実現までに必要以上に時間がかかる
  • 納得のいく事業承継を実現できない
  • 莫大なコストが必要になる

適切な相談先の選び方について、以下で詳しく解説します。

2-1 事業承継を成功させた実績がある相談先を選ぶ

事業承継において明確な「正解」はありません。それぞれのケースごとに最適解が異なるため、事業承継を成功させた実績を豊富に持っている相談先を選ぶことがおすすめです。

社長

つまり、事業承継に関する経験と引き出しをたくさん持っている相談先が良いというわけですね。

齋藤さん

その通りです。経験と実績が豊富な相談先であれば、希望に応じた柔軟な対応が可能となり、望み通りの事業承継を叶えてくれる可能性が高いですよ。

1章で挙げた相談先の中では、事業承継・引継ぎ支援センター商工会・商工会議所が経験・実績共に豊富な相談先だといえます。

またM&A仲介会社やM&A仲介を行っている弁護士事務所などの中にも、事業承継M&Aに強みを持ったところであれば、安心して相談できる可能性が高いです。

2-2 専門家との連携が取れている相談先を選ぶ

事業承継時には、会計・税務・法務といった多分野の専門知識が必要不可欠です。

そのため相談先が上記のような専門家と連携していない場合、必要に応じて自ら専門家を手配しなければならず、時間と手間が余計にかかってしまいます。

事業承継に必要な専門家との連携が取れている相談先であれば、専門家のサポートが必要な場面でも迅速に対応してくれるでしょう。

社長

相談先が紹介してくれる専門家であれば、事業承継に関する知識や経験も豊富ですよね。たしかに自分で探すより、安心してお任せできますね。

齋藤さん

例えば経営コンサルタントやM&A仲介会社などは、専門家と連携していない会社があるかもしれません。相談前に専門家との連携状況を確認しておくと良いですよ。

2-3 明確で良心的な費用体系を掲げている相談先を選ぶ

事業承継を専門家にサポートしてもらう場合は、報酬の支払いが必要になります。

報酬額や費用体系などは依頼する先によって異なるため、必ず相談前もしくは相談時に確認しておきましょう。

基本的には各相談先のホームページなどに記載されていることが多いですが、なかには費用に関しての記載がなかったり、大まかな費用しか掲載されていなかったりするケースもあります。

必要な費用が不明瞭なままで依頼すると、想定外の金額を請求される恐れがあるため注意が必要です。

相談先を選ぶ際には、明確かつ良心的な費用体系を掲げている相談先を選んでください。

さらに契約前に自社のケースで見積もりを取り、納得してから依頼しましょう。

齋藤さん

たとえばM&A仲介会社のケースだと、必要な費用の最低額が2,500万円に設定されているところがあります。2,500万円は中小企業の事業承継の場合だと高額すぎるので、選ばない方が安心ですね。

社長

なるほど。中小企業がM&A仲介会社へ事業承継の依頼を行うのにおすすめの最低額はありますか?

齋藤さん

会社の規模や価値にもよりますが、500万円~1,000万円程度の仲介会社を選ぶことをおすすめします。

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2-4 自社に合った得意分野を持った相談先を選ぶ

まず最低条件として、事業承継を得意としている相談先を選びましょう。それ以外の場所へ相談しても、時間と手間が無駄になってしまいます。

ただ事業承継が得意な相談先であればどこでもいいかというと、決してそうではありません。

相談先によって得意としている事業承継方法・企業規模・業種などが異なるため、自社にマッチした相談先を選びましょう。

齋藤さん

自社に合わない相談先に相談してしまうと、適切なアドバイスが得られない可能性が高まってしまいます。

社長

なるほど。そうなると納得のいく事業承継ができない事態を招く恐れがありますよね。自社に合った相談先の見つけ方はありますか?

齋藤さん

中小企業の事業承継なら、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会・商工会議所が安心ですね。経営コンサルタントやM&A仲介会社なら、中小企業の事業承継に強みを持ったところがおすすめです。

特に経営コンサルタントやM&A仲介会社を探す際には、得意な業種や企業規模にも注目してください。

特定の業種や零細企業に強みを持っている会社などもあるので、自社の業種や企業規模と照らし合わせて選択しましょう。

3章:どこに相談する?統計から見た事業承継の相談先

事業承継の相談相手2

引用元:中小企業庁 2017年版 中小企業白書

中小企業庁の2017年版中小企業白書によると、事業承継の相談先として最も多いのは顧問の公認会計士や税理士で、半数以上の企業から選ばれる結果となっています。

続いて親族・友人・知人、取引金融機関、親族以外の役員・従業員が選ばれています。

上位の相談先からは「日常的にかかわる機会が多く、気軽に相談できる相手」という共通点が見て取れます。

社長

事業承継をする!と意気込んで専門機関を探すというより、まずは信頼できる身近な相手に相談する人が多いということですね。

特に顧問の公認会計士や税理士は、会社の経営状態や税務状況なども踏まえた上でアドバイスが望めるため、多くの経営者に選ばれていると考えられます。

4章:事業承継を失敗しないために注意すること

指さすビジネスマン

事業承継は、現経営者の最後の大仕事です。会社を未来へ残すために、失敗するわけにはいきません。

また、事業承継を相談した後は、実際に事業承継を実行するためのプロセスへ移行していくことが考えられます。

その際に重要な点が、担当者個人が信頼できる人かどうかということです。

また、担当者個人の経験や実績の豊富さとともに、経営者自身との相性もしっかりと見極めたいところです。

事業承継にはある程度のまとまった期間が必要となります。たとえば後継者を育成するのであれば、5年~10年程度、M&Aでの事業承継でも最低6ヶ月程度はかかります。

多くの場合、1人の担当者が長いプロセスを一貫してサポートすることになるため、経営者自身がコミュニケーションを取りやすい人を選びましょう。

齋藤さん

自身の要望を話しづらい担当者では、理想通りの事業承継が実現できない可能性が高まってしまいます。

社長

なるほど。経験豊富で信頼できて、なおかつ話しやすい担当者なら最高だということですね。ちゃんと出会えるのか不安になってきました…。

齋藤さん

理想的な担当者に出会うために、複数の相談先へ相談してみるのもおすすめです。ただしあまり手を広げ過ぎると情報漏洩などのリスクが高まるため、まずは2~3箇所に絞って相談してみてくださいね。

まとめ

事業承継

事業承継の相談先としておすすめ8選は、以下の通りです。

  1. 事業承継・引継ぎ支援センター
  2. 商工会・商工会議所
  3. 経営コンサルタント
  4. 金融機関
  5. 顧問の公認会計士・税理士
  6. 弁護士・行政書士
  7. 親族・友人・知人
  8. M&A仲介会社・M&Aマッチングサイト

それぞれの特徴や専門分野を見極めた上で、相談先を決定してください。

検討の際には、事業承継の実績・専門家との連携・明確な費用体系・得意分野などを確認し、自社に合った相談先を選択しましょう。

また、事業承継を失敗しないためには、相談先の担当者との相性も重要です。コミュニケーションが図りやすく、自身の希望によく耳を傾けてくれる担当者を探してください。

齋藤さん

相談先を複数選定し、比較検討することをおすすめします。無料で事業承継に関する相談を受け付けているところも多いので、有効活用してくださいね。

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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。