M&A

売れる会社の特徴とは?M&Aで買い手に「欲しい!」と思わせる対策も解説

M&Aで会社売却を検討している方の中には、自社が本当に「売れる会社」なのか不安を抱いている経営者様も多いのではないでしょうか。

売れる会社というのは、すなわち買い手に「欲しい」と思われる価値を持つ会社です。

そこで本記事では売れる会社の特徴8選とともに、自社を売れる会社にするための対策や、売れる会社かどうかを確認する方法についても解説します。

売れない会社が持つ4つの特徴も併せてご紹介していますので、M&Aで会社売却を成功させたい経営者様は、ぜひ本記事をお役立てください。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:M&Aで売れる会社の特徴8選

Buy Sellカード

M&Aで売れやすい会社や高値が付きやすい会社には、共通した8つの特徴がみられます。

  1. 事業基盤が安定している
  2. 事業に将来性がある
  3. 独自の経営資源や権利を持っている
  4. 会社の仕組みがしっかり構築されている
  5. 信頼できる社長(経営者)がいる
  6. 売却価格が相場とかけ離れていない
  7. 買い手企業とのシナジー効果が期待できる
  8. 市場が拡大傾向にある

それぞれの特徴について、以下で詳しく解説します。

1-1 事業基盤が安定している

売れる会社の重要な条件として、安定した事業基盤を持っている点が挙げられます。

安定した事業基盤を持っている会社の特徴は、主に以下の4点です。

  • 安定した顧客基盤を確保しており、毎年同じような売上を期待できる
  • 参入障壁が高く、激しい競争を回避し安定して収益を確保できる可能性が高い
  • 現時点においては代替される可能性が低く、顧客の囲い込みができている
  • ある特定の地域で圧倒的な強さを持っている

上記の条件を満たしている会社は、買収側からすると「投資で損をする可能性が低い」と判断ができます。

そのため事業基盤が安定している会社は、売れる会社だといえるのです。

1-2 事業に将来性がある

今後市場の拡大が予想され、事業に将来性を期待できることも、売れる会社の条件です。

また、買い手企業との相性によっては、事業に将来性を見出せる可能性が高まります。

例えば魅力的な顧客を囲い込んでいたり、買い手企業が提供する商品やサービスと相性が良い顧客を持っていたりという点などが、買収後に事業が伸びる要因となります。

1-3 独自の経営資源や権利を持っている

下記のような独自の経営資源や権利を持っていることも、売れる会社の条件だといえます。

  • 特許
  • 商標
  • ブランド
  • 専門技術
  • ノウハウ
  • 優れた人材 など

上記は市場での競争優位性を高め、買い手にとっても買収後の成長を高めるプラスの要素となります。

そのためM&A取引の現場において、高く評価される傾向があるのです。

1-4 会社の仕組みがしっかり構築されている

仕組みがしっかり構築されている会社は仕事の再現性が高く、業務を停滞させることなく担当者の交代が可能です。

中でも特に社長の仕事が仕組み化されていると、社長のスムーズな交代が実現します。

そのため、買収後も問題なく事業が回る点や買収コストを抑えられる点など、買い手側にとって大きなメリットが得られるのです。

さらに、社内に構築された仕組みは会社独自の資産として評価され、好条件で売却できる可能性が高まります。

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1-5 信頼できる社長(経営者)がいる

社長が信頼できる人物であることも、売れる会社の条件の1つです。

売り手対象企業の価値を見定める判断基準の1つとして、買い手が経営者の信頼性や人間性を見るケースは少なくありません。

もしM&A交渉の際に売り手経営者が会社のことをしっかり把握していなかったり、偽りの情報を提示したりすると、簿外債務や訴訟リスクなど買い手が損害を被るリスクが高まります。

そのため信頼できない社長が経営する会社は、買い手から買収を敬遠される傾向にあります。

1-6 売却希望価格が相場とかけ離れていない

売れる会社の条件として、売却希望価格が相場とかけ離れていないことも重要なポイントです。

売れる会社の諸条件を満たしている会社というのは、経営者にとっても自慢の会社です。

しかし自分の会社に自信があるあまりに売却相場からかけ離れた売却希望価格を提示してしまうと、買い手から敬遠されてしまい、買い手が現れない可能性が高まります。

反対に、自社の企業価値に即した売却希望価格を提示している会社は、買い手の買収ニーズとマッチしやすく売れやすい会社だといえるでしょう。

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1-7 買い手企業とのシナジー効果が期待できる

シナジー効果とは相乗効果ともいい、2つの企業が統合することにより、1+1以上の効果をもたらすことを指します。

シナジー効果の例

コスト削減・売上拡大・新たな市場への参入・技術の融合 など

買い手企業と得意分野で協力し合えたり弱みを持つ分野を補い合えたりする会社は、シナジー効果の創出が期待できるため、売れる会社になりやすいといえます。

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1-8 市場が拡大傾向にある

成長している市場に属する会社は、将来的に収益増加や事業拡大の可能性が高く、買い手にとって魅力的な会社だといえます。

なぜなら、市場の拡大は需要の増加を意味し、今後も会社が成長し続ける期待を持てるからです。

2章:M&Aで売れない会社が持つ4つの特徴

壁に書かれた4

M&Aで売れる会社の特徴を8つ挙げましたが、売れない会社にも特徴があります。ここでは、M&Aで売れない会社の4つの特徴について解説します。

齋藤さん

これらの特徴のうち1つでも当てはまるものがあった場合は、早急に改善できるように対策を講じてくださいね。

2-1 利益が上げられていない

利益が少ない・赤字が続いている・売上が縮小傾向にあるなどの会社は、将来性がないとみなされ売れない傾向にあります。

社長

たしかによく考えれば当たり前のことですよね。

ただし、現状では利益が少なくても将来性があると見込まれれば、M&Aを成功させられる可能性が高いです。

また、貸借対照表上の累積赤字を利用して節税できる可能性がある場合も、買収されやすいといえます。

さらに現在は国も事業承継を後押ししており、事業承継を契機に補助金を利用できるケースがあるほか、事業承継を条件に金融機関が追加融資などに応じることもありえます。

利益が少ないからといって諦めずに、経営の活性化を図りましょう。

2-2 事業構造に問題がある

売れにくい会社が持つ特徴の1つとして、事業構造に問題を抱えている点が挙げられます。

事業構造とはどの商品やサービスをどの販売方法で、どの顧客層に販売するかということを考えて作られた、お金を稼ぐ仕組みのことです。

事業構造に問題がある会社はコストや工程に無駄が生じやすいほか、製品やサービスが顧客から受け入れられにくいなど、利益を上げづらい状態に陥っているケースも少なくありません。

そのため事業構造に問題を抱えていると判断された場合、買い手は買収を見送る可能性が高いのです。

2-3 社長(経営者)への依存度が高い

経営者への依存度が高い会社は、売却が難しくなります。

例えば事業規模が小さかったり経営者の能力や人柄に頼っていたりする会社は、社長が抜けると事業が回らなくなるリスクがあります。

またワンマン経営で従業員に事業のノウハウが伝達されていない会社は、経営者が交代すると事業がスムーズに進まなくなる可能性があるため、買い手から敬遠される傾向があるのです。

2-4 法的な問題を抱えている

例えば以下のような法的な問題を抱えている会社は、買収のリスクが高まるため買い手が現れにくいといえます。

  • 過去に違法行為や不正行為があった
  • 所在が不透明な株式がある
  • 株主総会・取締役会等の記録がない
齋藤さん

買い手としては安全なM&Aが実行できない可能性が高いため、上記のような会社は買収を見送る傾向があるんですよ。

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3章:M&Aで売れる会社にするため今日から行いたい5つの対策

事業承継をイメージした積み木

1章で売れる会社の特徴について解説しましたが、当てはまっていなくてもM&Aを諦める必要はありません

今日から取り組める対策を5つご紹介しますので、M&Aで会社売却を検討している方はぜひ実践してください。

3-1 向こう3年分の事業計画書を作成する

向こう3年分の事業計画書は、売り手が自社の経営戦略などをアピールするための材料となります。

また、中小企業の多くはまだ、明確なビジョンと数字を基に未来を描いていくという習慣が根付いていないといえます。

そのため事業計画の存在そのものが他社との差別化になり、企業の評価を高めてくれる可能性が高まるのです。

さらに作成した事業計画書を従業員全員に周知させることでモチベーションの向上につながり、業績の向上が期待できます。

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3-2 企業価値を高める

売れる会社になるためには、前述のような事業計画書の作成を始めとした、企業価値を高める具体的な行動を起こしてください。

企業価値を高める対策としては、他にも下記の項目が挙げられます。

  • 自社の強みを洗い出してさらに磨きあげる
  • 自社の弱みを把握し改善に乗り出す
  • コストを削減し利益率を高める
  • 会社を仕組み化し属人的な仕事を減らす
  • 財務状況を再検討する
  • 特許やノウハウなどの無形資産を把握し活用する など

3-3 会社の仕組み化に取り組む

前項でも挙げたとおり、会社の仕組み化は企業価値の向上に有効です。

仕組み化された会社は、内部の人間が入れ替わっても滞りなく業務を遂行できるため、人的な要因で業績が落ちることはあまりありません。

つまり、安定した業績をあげ続けられる期待が持てるのです。

齋藤さん

買い手としても、安定した業績をあげ続けられる会社は魅力的ですよね。

また、社長の仕事を仕組み化することで、経営者の交代に必要な時間やコストが抑えられます。

これは買い手にとって大きなメリットとなるため、仕組み化された会社はそうでない会社に比べ、格段に売れやすい会社だといえるでしょう。

さらに構築された仕組みは会社独自の資産となり、買い手から高く評価される可能性が高まります。

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3-4 企業価値に即した売却希望価格を設定する

買い手から「買収したい」と思われる会社になるためには、買い手に「割高感」を抱かせないことが大切です。

そのためには自社の企業価値を客観的に算出し、適切な売却希望価格を設定する必要があります。

M&Aの売却希望価格を検討する際はM&A仲介会社などに相談し、企業価値を算出したうえで決定してください。

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3-5 シナジー効果の見込める買い手について検討する

企業買収を検討している買い手の多くにとって、「自社の発展が期待できる売り手であること」は外せない条件の1つだといえます。

そこで重要なのが、シナジー効果です。なぜなら、買い手が「この会社を買収したら大きなシナジー効果が得られそう」と感じられれば、売れる可能性が格段に高まるからです。

売り手は自社の強みを洗い出し、買い手候補に対してどのようなシナジー効果を与えられるかを検討してください。

そして、検討したシナジーをしっかりアピールできるように準備を整えましょう。

4章:自社が売れる会社かどうかを知りたいときは

クエスチョンマーク

ここまで売れる会社や売れない会社についての条件を解説してきましたが、本当に売れる会社かどうかは買い手を探してみなければ分かりません。

そのため自社が売れるかどうかを知りたいときは、実際に買い手を探す必要があります。

経営者自身の手で買い手探しを行う際は、M&Aマッチングサイトを活用すると良いでしょう。もっと効率的に買い手を探したいときは、M&A仲介会社の利用がおすすめです。

M&A仲介会社の中には、M&A取引が成立したときに初めて報酬が発生する完全成功報酬制の報酬体系を採用している会社があります。

そのようなM&A仲介会社を探して、買い手探しを依頼してください。そこで条件に合う買い手が見つかれば、そのままM&Aを進めても構いません。

納得できる買い手が見つからなかった場合は、3章で挙げた売れる会社になるための対策を実行したり、M&A仲介会社を変えたりしてもう一度買い手探しを行ってください。

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まとめ

契約成立

M&Aで売れる会社の特徴は、主に以下の8点です。

  1. 事業基盤が安定している
  2. 事業に将来性がある
  3. 独自の経営資源や権利を持っている
  4. 会社の仕組みがしっかり構築されている
  5. 信頼できる社長(経営者)がいる
  6. 売却価格が相場とかけ離れていない
  7. 買い手企業とのシナジー効果が期待できる
  8. 市場が拡大傾向にある

上記の条件を1つも満たしていない会社は、売れにくい会社であるともいえます。売れる会社になるために、1つでも条件を満たせるように今すぐ対策を講じてください。

しかしながら本当に売れるかどうかは、実際に買い手を探してみないと分かりません。M&AマッチングサイトやM&A仲介会社を活用し、買い手候補となる企業を探してみてください。

齋藤さん

買い手を探したいときは、メールでいつでもご相談ください。匿名かつ無料で承ります。

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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。