現代の日本では少子高齢化が進み、問題が深刻化しています。中小企業においても例外ではなく、従業員の高齢化問題を抱えている会社が増えています。
従業員の高齢化が進んだ会社は、その先に廃業が待っているといっても過言ではありません。
実は従業員の高齢化を改善し会社全体の若返りを図る手段として、M&Aでの会社売却が有用なのです。
そこでこの記事では従業員が高齢化する理由と、M&Aで従業員の若返りを図る方法について解説します。
今後の採用状況によっては「今」が一番若いときかもしれません。早急に対策に乗り出しましょう!
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:従業員が高齢化した中小企業の未来には廃業が待っている
内閣府の調査によると、日本の人口における高齢化率(65歳以上の人口の割合)は増加の一途をたどっていることが分かります。
参照:内閣府 令和2年版高齢社会白書(全体版) 1 高齢化の現状と将来像
日本の総人口に占める65歳以上の割合は、令和元年(後で削除高齢化率)は28.4%でしたが、令和7年には30.0%、令和27年には36.8%にまで増加すると予想されていますね。
グラフからは高齢者の割合が増加して若者の割合が減少している様子も見てとれますね。
日本全体で少子高齢化が進んでいる中、中小企業も例外ではなく従業員の高齢化が深刻な問題となっています。
従業員の高齢化が進むとやがて労働力が不足し、会社の経営が成り立たなくなってしまう未来が待っています。
1-1 後継者の不在
従業員の高齢化が進んでいる会社では、社内から後継者を輩出することが困難になります。
後継者がいなければ、当然ながら会社や事業を引き継ぐことができません。指揮官を失った会社は廃業の一途を辿ります。
社長が元気なうちに、自らの意思で廃業する会社はまだマシなほうです。
高齢の社長に万が一の事態が起こった場合、後継者のいない会社は混乱に陥ります。
混乱の結果として業績が急激に落ちてしまい、倒産してしまう会社も少なくありません。
ひえっ…恐ろしすぎます…!!
会社や従業員を守るためには、社長が元気なうちに後継者問題を解決しておかなければいけません。
1-2 従業員の健康問題による労働者不足
人間は、年齢を重ねていくごとに身体のあちこちに不調が現れてくるものです。
会社の高齢化が進むと、病気や体力面で仕事を続けることが難しくなり退職する従業員が増えるでしょう。
しかし新しい人材が採用できなければ労働者が不足し、会社を存続させることが難しくなってしまいます。
1-3 新規採用の難航による労働者不足
少子高齢化が抱えている問題として、生産年齢人口の減少が挙げられます。
15歳~64歳までの、生産活動に従事できる年齢の人口
つまり、労働力である若い人口が減っているということです。
アルバイトなどで労働力をまかなえない業種は特に厳しいですよね。
そうか。18歳までは高校生だし、大学へ進学する子も多いですものね。
労働人口が減っていることに加え、高齢化した会社へ若い人材が魅力を感じづらい点も問題の1つです。
全ての会社が少ない若者を取り合っている状態ですからね。
こちらが優秀な人材を選ぶというより、若者に「この会社で働きたい」と選んでもらわなくてはいけない時代ということですね。
そうですね。新規採用の難航と既存従業員の高齢化が相まって、中小企業の労働者不足が深刻な問題になっているんですよ。
2章:M&Aで大手傘下に入り会社の若返りを図る
従業員の高齢化が進んだ会社には、生き残る方法はないのでしょうか。
安心してください。M&Aで会社売却を行えば解決できますよ!
高齢化の進んだ中小企業が会社の若返りを図るなら、M&Aで大手の傘下入りを果たすことがおすすめです。
なぜなら日本の中小企業が抱えている問題の多くはM&Aによる会社売却で解決ができ、会社の高齢化問題もそのうちの1つだからです。
2-1 大手傘下なら若い人材を採用しやすくなる
若い労働力は中小企業より大企業、地方の企業より首都圏の企業を求める傾向にあります。そのため中小企業には人が集まりにくく、都会の大企業へと人材が集中しています。
大手に人材が集中する理由は、大手の方が福利厚生が充実しているなど従業員にとって働きやすい環境が整っているからですよ。
M&Aで大手の傘下に入ることで「大手のグループ企業」というイメージが付くため、若い人材が集まりやすくなる
それに加えて大手の採用ノウハウを導入できるため、より優秀な人材を採用しやすい環境が整えられる可能性が高まります。
2-2 資本が安定し採用コストをかけられるようになる
新規で人材を採用したくても、資金面で断念せざるを得ない状況下にある中小企業もあるかと思います。
そんな会社こそ、M&Aで大手の傘下に入りましょう!
大手の傘下に入ることで、大手の資本に支援を仰ぎながら採用活動に力を入れられるようになるのです。
つまり、採用にコストをかけられるようになるということです。
へぇー!M&Aって単なる売り買いの話ではなくて、様々なことができるようになるんですね!
3章:社長自身がM&Aで得られるメリット
M&Aで大手の傘下に入ることには、会社だけでなく社長自身も多くのメリットを得られます。
会社の若返りを図れるうえに、私自身にもメリットがあるんですね。早く知りたいです!
3-1 売却益を得られる
M&Aで会社を「売る」わけですから、当然ながら売却の対価を得られます。
M&Aでは最もポピュラーな株式譲渡というスキーム(手法)を使って会社売却を行うと、売却益は社長個人に入ります。
手に入れた売却益は、新しい事業を始めるための元手にしたりリタイア後の生活資金にしたりと、使い道は人それぞれです。
せっかく売却益を受け取れるなら、1円でも手取りを多くしたいと思ってしまうのは欲張りでしょうか。
決してそんなことはありませんよ。手取りを最大化する方法については、別の記事で詳しく解説しています。
3-2 社長の個人保証や個人資産の担保を外せる可能性がある
中小企業の社長が事業承継を考えたときにネックになりやすい問題の1つに、社長自身が負っている個人保証や個人資産の担保の存在があると思います。
そうそう!個人保証も引き継いでもらわなければいけないので気軽に「会社を継いでほしい」とは言い出しにくいんですよね。
M&Aであらかじめ買い手の合意を取り付けておけば、株式譲渡後に個人保証や担保を外せる可能性が高いですよ。
M&Aが実行されて会社のオーナーが新株主に移った後に、金融機関で個人保証解除の決済が下りれば、個人保証からの解放が実現します。
3-3 経営のストレスから解放される
- 会社が倒産してしまうのではないかという不安から解放される
- 従業員の生活を守らなければならない重圧から解放される
- 自身の破産への不安から解放される
M&Aで会社売却を行うと、上記のような経営への不安から解放され、心に平穏が訪れるでしょう。
長年高血圧や不眠症に悩んでいたけれど、M&A後にいつの間にか改善されていたという社長もいらっしゃいましたよ。
ストレスは健康に直結しているのですね…。
4章:従業員が高齢化した会社がM&Aを実行するときの注意点
会社の若返りを図るために非常に有効なM&Aですが、従業員の高齢化が進んだ会社がM&Aを実行するときには以下の点に注意しなくてはなりません。
- 買い手が見つかりにくい可能性がある
- 従業員から反対される可能性がある
上記の項目について、詳細をみていきましょう。
4-1 買い手が見つかりにくい可能性がある
まずは、買い手側の立場に立って考えてみましょう。
例えば従業員の平均年齢が40歳台のA社と平均年齢70歳のB社があったとします。年商などその他の条件が同じような会社である場合、どちらの会社を買収したいですか?
そりゃ従業員がこれからもバリバリ働いてくれそうなA社ですよね…。
その通りです。従業員の高齢化が進んだ会社には、買い手が付きにくいというウィークポイントがあるのです。
売れなかったら廃業ですよね…。
平均年齢の高さを補って余りある魅力を持つ会社になればいいんですよ!
4-2 従業員から反対される可能性がある
人間という生き物は、歳を重ねるごとに変化を嫌うようになる傾向があります。
また、少し前までM&Aには「経営が立ち行かなくなったため仕方なく売却する」といったまるで”身売り”のようなイメージがつきまとっていました。
そのため高齢の従業員が多い会社では特に、M&Aに強く反発する声が上がりかねません。
M&Aに対する反発は、従業員の流出を招く恐れがあるため注意が必要です。
従業員も会社の価値の一部として評価の対象になっている
会社のキーマンが退職したり従業員が大量に退職したりすると、M&A自体が破談になってしまう可能性を含んでいます。
従業員にM&Aを反対されないためには、打ち明けるタイミングと打ち明け方が重要です。詳しく知りたい方は下記の記事をご覧くださいね。
5章:今が最も若いとき。早めの決断で会社を存続へと導こう
従業員の高齢化に悩んでいる社長の中には、どう行動すべきか迷ってなかなか改善に乗り出せない人もいるのではないかと思います。
しかし新しい人材を採用しない限り、会社は今が最も若いときです。
まず、社長自身が会社を存続させたいのか廃業するのかの意思をはっきりさせましょう。
会社存続へ舵を切るのか、廃業へ舵を切るのか、早めに腹をくくれということですね。私は会社を存続させたいです!
社長の決断が早ければ早いほど、M&Aで会社存続への希望が持てます。手遅れになってしまう前に決断し、会社を存続へと導きましょう。
まとめ
従業員が高齢化した中小企業の未来には、かなり高い確率で廃業が待っています。
その背景には日本の少子高齢化が深く関わっているため、自社のみで廃業を免れることは少々難しいかもしれません。
そこで従業員が高齢化した会社を存続へ導くための手段として、M&Aでの会社売却が挙げられます。
M&Aで会社売却を行い大手企業の傘下に入ることで、会社には以下のメリットが期待できます。
- 若い人材を採用しやすくなる
- 資本が安定し採用コストをかけられるようになる
さらに株式譲渡によるM&Aでは、社長自身にもメリットを得られます。
- 社長の個人保証や個人資産の担保を外せる可能性がある
- 経営のストレスから解放される
- 採用コストをかけられるようになる
ただし従業員が高齢化した会社のM&Aは、買い手が見つかりにくい・従業員から反対される可能性があるなどのデメリットも発生します。
しかし新規採用を行わない限り、会社は今が最も若いときです。早めに決断し、会社を存続へと導いてください。
会社の高齢化にともないM&Aか廃業かで迷ったときは、一度専門家に相談してみることをおすすめします。