M&Aによる会社売却を成功に導くためには、事前の情報収集が欠かせません。なぜなら、売り手の方が買い手よりも情報優位性が低いためです。
つまり情報優位性の低い売り手は、M&Aがスタートする前から不利な状態にあるといっても過言ではありません。
さらに、売り手はM&A初心者であることがほとんどですが、買い手の中には過去に何度もM&Aで企業買収を経験している会社が一定数存在します。
この記事では、M&Aでの会社売却を成功へと導くため事前に情報収集をしておく重要性について解説しています。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:少しでも理想に近いM&Aを実現するために情報収集が必要
M&Aで会社売却を検討した際に事前の情報収集が必要な理由はズバリM&Aを成功させたいからの一言に尽きます。
さらに掘り下げてみるとそこには以下のような社長の想いが見えてきます。
- 出来れば会社を高く売りたい
- 従業員にとって良かったと思ってもらえる相手に会社を任せたい
- 会社を発展させてくれるような相手にに売りたい
これらの想いを実現するためには、M&Aを失敗させないための知識が必要なのです。
M&Aで会社を売却するということは、多くの社長にとって初めての経験となります。逆に買収側は、過去に何度も企業を買収した経験を持つ会社も一定数存在します。
このようにスタート時点から経験に差があることも多いため、経験も知識もないいわゆる「丸腰」状態だと、買い手側からいいように買い叩かれてしまう可能性もゼロではありません。
M&Aで会社売却行う際には、不足している経験分を知識で補っていく必要があるのです。
2章:M&Aを成功へ導くために売り手が集めておきたい4つの情報
M&Aによる会社売却を成功へ導くためには、4つの情報を集めておきましょう。
- 必要な事前準備について
- 依頼するM&A会社の選び方
- 買い手の選び方
- M&Aに強い弁護士の選び方
2-1 情報①必要な事前準備について
必要な事前準備とは「買い手が魅力を感じるための会社作り」を指しています。現時点の会社の価値(強みや優位性など)を整理し、見える化しておきましょう。
会社の価値を見える化する際に大切な点は、客観的に見ることです。そのため信頼できるM&Aコンサルタントの存在が重要になるところでもあります。
自社の強みや優位性をしっかりと把握することは、買い手側へのアピール材料になります。ぜひ、買い手から「この会社を買収したい」と思われるような自社の魅力を探してください。
中には「業績の方が大事なのでは?」と感じる人もいるかもしれません。
確かに業績は非常に大切です。しかし業績が同じくらいの会社であった場合、強みの有無が大きな差となって、M&A成功の鍵を握ることとなるでしょう。
また自社の強みや優位性は、M&Aに動き出した際に買い手側企業にも提出される資料となります。
提出直前になって慌てて考えるよりも、事前にじっくりと時間をかけて考えておくことをおすすめします。
2-2 情報②依頼するM&A会社の選び方
M&A成功への鍵を直接握っているのはM&A会社の選び方だといっても過言ではないかもしれません。
今やM&A会社は数百社存在しており、「どの会社を選んだら良いのか分からない…。」という人も多いのではないでしょうか。
実は依頼する先によって、会社の売却価格はかなり変わってきます。そのため慎重な判断が求められる局面ではあるのですが、初めてのことだと特に迷ってしまいますよね。
会社売却をする上では、パートナーと呼べるほどの信頼できる担当者を見つけることが最も重要です。
信頼できるパートナーを選ぶための基準はいくつか考えられます。
- 料金体系
- 担当者の性格
- 所属会社
- スキル
- etc.
M&Aを検討する際には、いくつかのM&A会社で話を聞いたり見積もりを取ったりして、「この人になら任せられる」と感じられる担当者を探してください。
「料金が安いから」「会社の規模が大きいから」といった理由で判断してしまうことは避けましょう。
何社にも見積もりを依頼するのは骨が折れますが、会社の将来を決める重要な第一歩です。粘り強く取り組むことが重要です。
2-3 情報③買い手の選び方
「買い手選び」は売り手にとって会社の将来を決める非常に重要なプロセスです。
M&Aを進めていき買い手候補が複数現れた場合、売り手は会社を譲り渡す相手を最終的に1社に絞らなくてはなりません。
買い手としてはその1社に残りたいわけですから、最初は高い条件をちらつかせて1社に残ろうとします。
その後の最終契約で何かと理由を付けて大きく下げた条件で契約を迫るという買い手も、残念ながら存在するのです。
上記のような買い手と契約を結んでしまわないためにも、買い手選びは重要なのです。
2-4 情報④M&Aに強い弁護士の選び方
M&Aで会社売却の契約を交わす際に、介入する弁護士の存在も忘れてはいけません。大切なことは、M&Aに強い弁護士を選ぶことです。
弁護士にもそれぞれ専門分野があるため、M&Aを専門に取り扱っている弁護士に依頼するようにしてください、
専門外の弁護士に依頼してしまうと、スムーズなM&Aの進行に支障をきたしてしまう可能性だけでなく、「売り手に重大な影響を与える契約」を見逃してしまう恐れがあるためです。
M&A会社の担当者からもアドバイス等は受けられますが、売り手の社長自身でも情報を集めておくことをおすすめします。
3章:買い手の情報優位性が高い理由
記事の冒頭で「売り手の情報優位性が低い」とお伝えしましたが、「買い手の情報優位性が高い」と言い換えることもできます。
売り手はM&A初心者であることがほとんどであることに対し、買い手は実はM&Aの経験値が高い企業が多く、知識や経験が既に積みあがっている状態なのです。
たとえ実際に会社を買収した経験を持たない買い手であっても、買収を検討した件数は2ケタだったりします。
買い手はM&Aで会社の買収を検討する際に、何社もの売り手企業を検討対象とします。そのため買収実績がゼロであってもM&A経験者であることが多いのです。
多くの売り手企業を買収対象として検討している経験が、買い手側の情報優位性につながっているのです。
まとめ
M&Aで会社売却を成功へ導くためには、事前にある程度の情報を集めておくことが大切です。
買い手として買収を検討している企業は基本的にM&A経験者であるため、多くの場合M&A初心者である売り手側はスタートから不利な状況下に置かれてしまっているためです。
経験の差を少しでも埋めるべく、可能な限り事前に情報を集めておきましょう。
その中でも特に重要な点が、企業の価値を見える化しておくことと、信頼できるM&A担当者に出会うことです。
会社の将来のためにも、社長自身の豊かなリタイアのためにも、M&Aは絶対に失敗したくない一大プロジェクトですよね。
少々骨が折れるかもしれませんが、複数のM&A会社へ見積もりを依頼するなどして信頼できる担当者との出会いにつなげましょう。