M&A

M&Aで会社の一部を売却するという選択肢を持とう

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中小企業におけるM&Aは、会社をまるごと譲渡するというイメージを強くお持ちの人も多いかと思います。

しかし実は、会社の全てを売却せずに一部だけを売却するという方法も存在するのです。

この記事では、会社の一部を売却する理由や会社の一部を売却するメリットについて解説します。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:会社の「一部」を売却する理由

会社イメージ

そもそもなぜ会社の一部だけを売却するということが行われるのでしょうか。その理由については以下の2点が挙げられます。

  • 1つの事業に集中したいため
  • 手放したい事業と残したい資産があるため

1-1 複数の事業があるが、1つの事業に集中したいから

例えば、派遣事業(メイン)と飲食事業(サブ)の2つの事業を営む会社があるとします。

元々本業ではない飲食事業が案の状上手くいっていません。
最近ではついに連続3ヶ月の赤字に転落してしまいました。

そして追い打ちをかけるように、本業である派遣事業も傾き出しました。

原因は得意事業の儲けに浮かれてしまい、慣れない他事業に手を出したことで、本業に時間を割くことができなかったことかもしれません。

そこで、飲食事業(店舗・設備・飲食事業の従業員、等々)だけを他社に移すことを決断しました。

と、このような理由から『一部』を売却するケースなどが考えられます。

なおこの場合は、お相手としては「今の業績を回復させることができる」飲食事業が本業の会社が候補先として考えられます。

赤字であることもマイナス要因ですし、そのために買い手候補先が絞られるという点もマイナス要因です。

このような場合は売却条件の高望みはできないと覚えておくと良いと思います。

1-2 手放したい事業と残したい資産がある

例えば、ITサービス事業を営む会社があるとします。

その会社は順調に事業を拡大させ、ある程度キャッシュが貯まった際に不動産や有価証券に投資をしてきました。

賃貸収入や投資からのリターンをITサービス事業に必要な固定費に充てることで、資金面の安定を図ることが狙いです。

ただ、ここにきて会社の事業が一向に伸びず、足踏みをする期間が3年程度続いていました。会社のオーナー社長はまだ40歳。引退するには早すぎる年齢です。

これを打破するために、M&Aにより大手の傘下に入りそこのリソースを活用することで、さらなる成長戦略を描きました。

ただ、買い手が大手になるほど不動産や有価証券のような投資資産を会社で保有したままにはできません。

その一方で、オーナーとしてはある程度の資産を手元に残したいと希望されていました。

双方の利害が一致したため、ITサービス事業の部分を売却し、不動産や有価証券は投資事業として手元に残すことで合意することができました。

このようなケースでも会社の『一部』を売却するというケースが当てはまります。

ただし、一部を売却するといってもいくつかの方法が存在します。

売却の対象となる事業によって、どの方法が良いのか、それぞれのメリット・デメリットが変わってきますので、そのような観点から手法を検討し実施することが必要です。

2章:会社の一部を売却するための2つの手段

比較イメージ

会社の一部を売却するために用いられる手段のうち、代表的な2つを解説します。

細かい点は専門家に任せ、大まかな概要だけを押さえておけば十分です。

2-1 事業譲渡

ひとつの事業を売却することを事業譲渡と呼びます。

先の例の飲食事業で言えば、

  • 店舗関係の資産(設備、食材、予約システム、屋号、等)と契約の全て
  • 従業員、アルバイト、パート
  • 売掛金等の資産や買掛金等の負債

といったところが飲食事業に紐づいている要素です。

これらを丸めて「飲食事業」として売却することになります。

ただし、従業員には職業選択の自由がありますので、勝手に雇用契約そのものを売却することはできません。

勝手に売却をするということができてしまうと、買い手の企業を新たな雇用主として強制的に転職をさせるようなものですので、それはできないということです。

そのような場合には全ての従業員に話をして、個別に承諾を得なければなりません。

また、不動産を所有するような場合には、不動産取得税や登録免許税やが掛かってきますので、株式譲渡の場合と異なり余計なコストが掛かってしまいます。

さらに、食材の仕入れに関する買掛金があったりすると、譲渡日時点の売掛金・買掛金を特定する必要が生じるケースもあったりと煩雑になりがちではあります。

あまり煩雑にならないような事業であったり、小さい事業のようなケースで用いることが考えられます。

2-2 会社分割

二つ目は『会社分割』で、これは今の会社を二つの会社に分けるイメージです。

今の会社が消滅して2社が新たに設立されるわけではありません。

【今の会社】と【新設(※)する会社】となります。

※新設しないパターンもありますが、細かい論点は無視して、あくまで大まかなイメージで把握してください。

ポイントは、【手元に残したい事業】を今の会社に残すか、新設する会社の方に移すか、ということです。

どちらが良いのかは個別事情により異なりますが、どのように考えていくのか、その一例をお伝えします。

  • 収益不動産を【新設会社】に移すと、所有者が今の会社から変更になるために登録免許税が発生する
  • 従業員を【新設会社】に移管する場合には、労働契約承継法を踏まえた対応が必要、つまりコストが掛かり退職リスクも発生する
  • 許認可事業を営んでいる場合、【新設会社】に移管することはできず(業種により異なります)、例えば免許の取り直しが必要になり事業が営めなくなるリスクが発生する

このような事情がいくつも存在するため、それらをトータルで判断し決定する必要があるのです。

費用といった資金面だけではなく、従業員や債権者といった関係者への対応といった面も考慮します。

3章:オーナー個人の目標・目指す方向によって決めるべき

線路

方向性が固まって初めてスキームの検討が有意義なものとなります。

ご相談いただいた中には、どの事業を残すかをしばらく検討していたのですが、結局本来の目的に立ち返った時に【全て不要】だと結論を出したオーナー様もいらっしゃいます。

結果、最終的に「一部を売却する」ことはせずに、会社ごとの売却となりました。

※あくまで2つ以上の事業があるから会社分割を行えるのであり、例えば現金だけを残してあとは別会社に移して売却をするといったことはできません。

一度、オーナー様個人の目指す姿、会社が将来どうなってほしいのか、といった点をじっくり考えてみると良いと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

ABOUT ME
この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。