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M&A後に従業員が退職!売り手側にペナルティは発生する?未然に防ぐ方法は?

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M&Aにおいて、売り手側企業に勤務する従業員が退職してしまうケースが発生しています。

従業員が大量に退職してしまったりキーマンが退職してしまったりすると買い手企業とトラブルに発展してしまう可能性があるなど、売り手企業の社長本人だけでなく売却対象の会社や買い手側企業にとっても大きな痛手となってしまうため注意が必要です。

この記事では、M&A後に従業員が退職してしまう理由や、従業員の不安を取り除き退職を未然に防ぐ方法などを解説しています。

スムーズなM&A実行のために、しっかりと準備を整えておくことをおすすめします。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:M&Aの契約内容によってはペナルティが発生してしまうことも

イエローカード

M&Aでは契約が成立してからクロージングが終了するまでの間、売り手企業の価値を守る必要があります。

契約成立後に何かしらのトラブルがあって売り手の企業価値が著しく下がってしまった場合、買い手側に大きな損害を与えることになってしまうからです。

そのためM&A契約に売り手・買い手双方を守るための条項を盛り込むケースも見られ、従業員の退職に関しても例外ではありません。

契約内容によっては、M&A契約が成立して経営権が完全に買い手側企業に移る前にキーマンが辞めてしまったり、大量の従業員が退職してしまったりした場合には売り手企業に対してペナルティが課せられることになります。

具体的には、金銭による補填・最終契約の解除・M&Aの中止などが挙げられ、M&A自体が破談になってしまう可能性もはらんでいるのです。

ペナルティの設定はM&A実行中のみにとどまらず「クロージング終了後の半年~1年の間」といったように経営権が完全に買い手側企業へ移ってからしばらくの期間に対して設けられるケースも珍しくありません。

クロージング後のペナルティには、金銭による補填が設けられる場合が多いようです。

そのため、M&A契約の成立~クロージングまでの期間だけでなく、クロージング後にも従業員が退職してしまうことは極力避けなくてはなりません。

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2章:M&A後に従業員が退職してしまう理由

歩き去るビジネスパーソン

自分の勤める会社が他社に買収されるという事実を知った従業員の多くは「M&Aを行う必要があるほど経営が上手くいっていないのだろうか」と衝撃を受けると同時に、自身の将来に対する不安を抱きます。

給与や賞与はどうなるのか・勤務地は変わるのか・仕事内容に変化はあるのかなど様々な不安を感じ、M&A発表後に転職を考え実行に移す従業員も少なからず出てくるでしょう。

経営者にとってM&Aは会社を成長・存続させるための経営戦略の1つですが、従業員にとっては人生を左右する出来事になり得ることを、経営者は覚えておかなくてはなりません。

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2-1 自分自身の処遇の変化

M&A後に従業員が退職してしまう最も大きな原因として、給料や福利厚生など従業員自身の雇用条件の変化が挙げられます。

株式譲渡の場合は、雇用契約は買収先の企業に全て引き継がれ、基本的に待遇面に変更はありません。

注意が必要なのは事業譲渡を行うケースです。従業員は買収先の企業と新たに雇用契約を結び直す必要が生じ、雇用条件も変更される可能性をはらんでいます。

今より良い条件になるのであれば従業員も安心できますが、悪くなってしまう場合には、より良い条件の会社を求めて転職活動を始める従業員も出てくることでしょう。

また、従業員の処遇についてハッキリと決まっていない段階でM&Aを伝えてしまうと、従業員は将来に不安を覚えてしまいます。

新会社での雇用条件を確認する前に退職してしまう従業員も現われかねないので、注意が必要です。

2-2 労働環境の変化

M&A後には買収先の企業ルールにしたがって仕事を進めていくことになります。社内のルールが変わることにより、従業員は今までの仕事のやり方を変えなくてはならないシーンに直面することとなるでしょう。

さらには転勤や配置換えなどで、慣れ親しんだ部署から離れなくてはならない従業員も出てくるかもしれません。

従業員によっては、「急に親会社が変わって社内ルールの変更や異動を命じられた」と捉える人が出てくる可能性があります。

このような労働環境の変化が大きなストレスとなり、人材の流出につながってしまうのです。

特に今までのやり方で問題ないと感じていた人や、従来の方式にプライドを持っていた人たちほど強い反発を感じやすいという傾向があります。

2-3 人間関係の変化

M&Aで経営権が完全に買い手側企業に移ると、売り手側の従業員も買い手側の従業員も1つの会社の従業員となります。

そのため配置換えで双方の従業員が入り混じって仕事をする環境になったり、買い手側企業から新しい上司が配属されたりといったことが起こります。

M&Aを行った会社内の空気は一種独特なものがあり、「Aさんは○○(買い手側)の人間だから信用できない」「Bさんは■■(売り手側)の人だからダメだ」など社内で軋轢が生まれてしまうケースも存在するのです。

実際に弊社スタッフが以前働いていた会社がそうでした。

元売り手側の従業員たちは、何となく元買い手側の人間に対して劣等感を抱いているように写ったそうです。

そして新しく上司や同僚になった人物とどうしても反りが合わず、退職していく従業員も何名か現われました。

特に年配の従業員が多い元売り手側へ、元買い手側から若手の従業員が送り込まれてきた場合などに、元売り手側の従業員は反発を感じやすいようです。

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3章:従業員の退職を防ぐためには、M&Aの実施を打ち明けるタイミングがカギ

鍵

M&A後に従業員が退職してしまう理由は「自身の処遇に対する不安」です。

したがって従業員の不安を取り除き、安心して買収先の企業で働いてもらえるように取り計らうことが、従業員の退職を防ぐ一番のポイントとなります。

そのためにはM&Aの実施を従業員に打ち明けるタイミング伝え方が重要です。

タイミングが早すぎて従業員の処遇などが未定の時期に発表してしまうと、従業員自身の未来に対する不安を覚えやすくなり、水面下で転職活動を始める従業員も出てくるでしょう。

反対に打ち明けるタイミングが遅いと、社長への不信感から退職者が多数発生する可能性があります。

買い手側とM&Aの基本合意締結後に多数の従業員が辞めてしまったりキーマンが退職してしまったりすると、M&Aそのものが破談になってしまう可能性もあるので注意が必要です。

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3-1 経営幹部へ打ち明けるタイミング

会社の経営に深くかかわっている経営幹部(役員)には、譲渡前の告知が一般的です。具体的には、M&Aの基本合意締結後に打ち明けることが多いようです。

役員には早めに公表しておくことで、その後のM&A手続きをスムーズに進められるようになるというメリットがあります。この段階でM&Aに反対する役員が現れたとしても、話し合いをして説得する時間が持てるでしょう。

他にも、今まで二人三脚で経営を行ってきたいわゆる社長の右腕のような存在の幹部には、M&A会社に依頼する前に相談という形で打ち明けるケースも存在します。この場合はM&Aをするかしないかまで含めて、右腕の人物と話し合うことになるでしょう。

また、株式譲渡契約の締結後に打ち明けるケースもあります。ただし一般の従業員より先に打ち明けておくことで、役員として尊重しているという姿勢を示すと良いでしょう。

3-2 全社員へ打ち明けるタイミング

役員以外の従業員へ打ち明けるタイミングとして一般的なのが、株式譲渡契約を締結した後です。

このタイミングであれば従業員の処遇についても決まっているため、M&Aの発表により将来に対する不安を抱かせてしまうリスクを減らせます。

一般の従業員へ打ち明けるときには、以下のポイントを伝えます。

  • 今まで働いてきてくれたことへの感謝の気持ち
  • M&Aに至った経緯と目的
  • 買い手企業はどんな会社か
  • 買い手企業をM&Aの相手として選んだ理由
  • 従業員の雇用の継続

このときに最も重要なのは、従業員に安心感を抱いてもらうことです。

「引き続き安心して働いてほしい」という旨を誠意を持って丁寧に説明し、従業員からの理解を求めましょう。従業員からの質問にも積極的に回答すると、より安心感を与えられます。

場合によっては買い手企業の担当者が発表の場に同席し、全従業員へ挨拶をするケースも存在します。

従業員は買収相手の顔を見ることにより安心感を抱きやすくなる一方で、急な展開に気持ちが付いていけず相手に対して反発を感じてしまう場合も。

買い手企業側からの挨拶に関しては、会社の雰囲気を考慮しながら、買い手企業ともよく相談して進めることが重要です。

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3-2 一般的なタイミングにとらわれず柔軟な見極めが必要

上に挙げたタイミングはあくまでも一般的な事例で、幹部や従業員にM&Aを伝えるベストなタイミングはそれぞれの会社により異なります。

社長と従業員たちとの関係性や、その時の会社の雰囲気などによって判断するのですが、タイミングを間違えることは許されません。

そのため契約しているM&A会社の担当者とよく話し合い、ベストなタイミングを導き出してください。

4章:M&A後に起こり得るマイナス要素は極力減らしておくことが豊かなリタイアへの近道

道標

せっかくM&Aの交渉が順調に進んで契約の締結に至ったとしても、その後に従業員が退職してしまうなどのマイナス要素が起こってしまうとペナルティの対象になるだけでなく、最悪の場合M&A自体が破談になってしまう可能性があるため注意が必要です。

そのためM&A後に起こり得るマイナス要素をあらかじめ予測し、極力排除しておくことが重要となります。

会社の将来のためにも、自身の豊かなリタイアのためにも、従業員の処遇について買い手側企業に求める条件を作成しておきましょう。そしてその条件を基に、慎重に買い手企業を選びます。

また、従業員にM&Aを発表するタイミングも失敗できません。最適なタイミングはそれぞれの会社により異なりますので、M&A会社の担当者とよく相談の上決めてください。

万全の準備を整えて臨むことがスムーズなM&Aの完了へとつながり、豊かなリタイアへの近道となります。

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まとめ

社長と従業員のイメージ

M&Aというのは、経営者にとっては自社を成長もしくは継続していくための経営戦略です。しかし従業員にとっては、自身の将来に不安を感じる出来事となるのです。

給料や福利厚生などの待遇面に関することだけでなく、勤務地・新しい社内ルールへの移行・新たな人間関係など大きなストレスにさらされる機会が増え、耐えかねて退職してしまう従業員も出てくるかもしれません。

従業員の退職はM&A自体を破談にしてしまう可能性を秘めているため、避けるべき事態でもあります。

そのため従業員たちに引き続き安心して働き続けてもらえるように、M&Aの実行を打ち明けるタイミングには細心の注意を払いましょう。

M&A会社ともよく話し合い、会社にとって最適なタイミングを導き出してください。

トラブルのないスムーズなM&Aの実現は、社長の豊かなリタイアへとつながっています。事前にしっかりと準備を整え、後悔のないM&Aを実現してください。

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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。