M&A

有限会社は株式譲渡できる?メリットや注意点、手続きの流れを解説します

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後継者不在問題の解決策として、株式譲渡によるM&Aを選択する中小企業が増えています。

しかし中小企業には、株式会社以外の会社も存在します。その筆頭として挙げられるのが、有限会社です。

M&Aを検討している有限会社の経営者様の中には、有限会社は株式譲渡できるのか?という疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

結論からいえば、有限会社でも株式譲渡でのM&Aが可能です。

本記事では、有限会社が株式譲渡を実行するメリット・注意点・手続きの流れについて解説します。

株式譲渡で有限会社の売却を検討している経営者様は、ぜひ本記事を参考にしてください。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:有限会社も株式譲渡はできる

有限会社は株式譲渡で売却が可能です。

株式譲渡N (1)

実は、現存している有限会社というのは株式会社の一形態のため、株式譲渡での売却が可能なのです。

ただし、株式会社の株式譲渡とはいくつか異なる点があります。

有限会社についてや有限会社を株式譲渡する際の注意点および手順などは、次章以降で詳しく解説しています。

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2章:有限会社とは?

高層ビル

現存している有限会社は、実は株式会社の一形態です。

有限会社は、2006(平成18)年5月1日に新たに施行された会社法以降、設立ができなくなりました。

それ以前に設立された有限会社が「特例有限会社」となり、現在まで残っているというわけです。

社長

会社法が施行される以前にあった有限会社は、全て特例有限会社になったのですか?

齋藤さん

手続きを経て株式会社になった有限会社もあります。そのため「今は株式会社を名乗っているけれど、昔は有限会社だった」という会社も存在するんですよ。

有限会社には、資本金の最低額・取締役の任期・上場の可否など株式会社とは異なる特徴がいくつかあります。

その中でも大きな特徴として、全ての株式が譲渡制限株式だという定款がある旨を会社法で定められている点が挙げられます。

つまり、有限会社の株式を譲渡する際は、必ず株主総会で承認を得なければならないということです。逆にいうと、株主総会での承認が得られれば、株式譲渡が可能なのです。

3章:有限会社を株式譲渡するメリット

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有限会社を株式譲渡するメリットは、主に以下の4点です。

  1. 事業承継を実現できる
  2. 従業員の雇用を継続できる
  3. 取引先との関係を継続できる
  4. 創業者利益を得られる

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。

3-1 事業承継を実現できる

有限会社を株式譲渡すると、会社の経営権が買い手へ移り、買い手の子会社になります。

その後の経営は買い手により行われるため、親族内や社内に後継者が不在の状態でも事業承継が実現し、会社の存続が実現します。

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3-2 従業員の雇用を継続できる

株式譲渡では経営権のみが買い手に譲渡されるため、会社の中身は基本的にそのままです。したがって従業員の雇用契約もそのまま引き継がれ、従業員はこれまでと変わらず働き続けられます。

社長

従業員にほとんど影響がないのであれば、安心して株式譲渡を実行できますね。

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3-3 取引先との関係を継続できる

前述の通り、株式譲渡で会社の中身は変わらないため、取引先との関係も変わらず維持できます。

ただし、中小企業にありがちな「昔からのお付き合い」などは業務効率化の観点から見直される可能性があります。

3-4 創業者利益を得られる

有限会社を株式譲渡すると買い手から譲渡対価が支払われますが、この対価は売り手である株主個人が受け取ることになります。

齋藤さん

有限会社の多くは株主=社長なので、会社を売却した対価を社長個人が受け取るととらえて差し支えありません。

有限会社の株式譲渡で得た創業者利益は、引退後の生活費や新しい事業を始める際の元手として使われることが多いようです。

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4章:有限会社を株式譲渡する際の注意点

注意標識

有限会社の株式を譲渡する際の注意点は、以下の3点です。

  1. 株式の譲渡制限がある
  2. 譲渡先を見つけにくい可能性がある
  3. 従業員の処遇や取引先との関係が悪化する可能性がある

それぞれの項目について、詳しく解説します。

4-1 株式の譲渡制限がある

2章でも述べた通り、有限会社の株式は全て譲渡制限株式です。

譲渡制限株式とはその名の通り、譲渡が制限されている株式のことです。譲渡制限株式を第三者へ譲渡する際には、取締役会あるいは株主総会の許可を得なければ譲渡できません。

ただし、有限会社は取締役会を設置できません。そのため有限会社の株式を譲渡する際は、株主総会での承認が必要です。

4-2 経営方針が変わる可能性がある

有限会社を株式譲渡すると、経営権が買い手へと移ります。そのため買い手の意向によっては、経営方針が大きく変わるかもしれません。

齋藤さん

極端な話、経営方針が180度変わることもありえます。

そうなると従業員や取引先に混乱を招き、大きなトラブルに発展する可能性が出てきます。

このような事態を避けるためには、買い手による大きな経営方針の変更がない旨を確信することが重要です。

そのためには、M&A交渉時に買い手のビジョンが自社のそれと相反していないことをしっかりと確認してください。

4-3 従業員の処遇や取引先との関係が悪化する可能性がある

従業員の処遇や取引先との関係は、基本的に株式譲渡後も変わりません。

しかし従業員に関しては、株式譲渡後に配置換えが実施され、勤務地が変更になるなどの可能性があります。

また取引先に関しても、条件によっては取引を見直されることがあります。そのため取引先との関係性が悪化する可能性がある点に注意が必要です。

齋藤さん

有限会社にかかわらず、株式譲渡全体の注意点でもありますよ。

5章:有限会社が株式譲渡を行う流れ

有限会社の株式譲渡は、6つのステップを経て実行されます。

有限会社の株式譲渡手続きの流れ2

それぞれの手続きについて、詳細を以下で解説します。

齋藤さん

株式譲渡契約の締結に至るまでのプロセスは、下記の記事で詳しく解説しています。

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5-1 株式譲渡契約の締結

株式譲渡に関する交渉を経て双方が条件に合意すると株式譲渡契約書を作成し、署名・捺印を行います。

株式譲渡契約書とは

売り手が所有する株式を買い手に譲渡するための最終的な条件や内容をまとめた契約書

株式譲渡契約書の作成は法律で定められているわけではありませんが、譲渡によるトラブルを防止するためにも必ず作成しましょう。

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5-2 株式譲渡承認請求

株式譲渡承認請求書N2

次に、株式譲渡承認請求を行います。

譲渡承認請求とは、株式を譲渡しようとしている株主が会社に「株式譲渡承認請求書」を提出する工程です。

5-3 株主総会による承認

株主から株式譲渡承認請求書が提出されたことを受けて、会社は株主総会を開き、普通決議で譲渡承認の可否について決議します。

株主が経営者1人の場合は形式的な工程になる

社長

たとえ形式的なものでも、株式を譲渡するためには必要な工程なんですよね。

齋藤さん

その通りです。有限会社の株式譲渡は、株主総会での承認が得られないと実現できませんからね。

5-4 株式譲渡承認通知

会社が譲渡承認の可否を決議したら、その結果を株主に対して通知しなくてはなりません。

ただし、株式譲渡承認請求を行った日から2週間以内に承認の可否を通知しなかった場合は、譲渡を承認したものとみなされます。

5-5 決済

株式を譲渡する承認が得られたら、いよいよ決済です。決済では買い手から売り手へ株式譲渡の対価が支払われ、経営権が買い手へと移ります。

このとき、株式譲渡承認請求書・通知書・譲渡承認議事録・株主名簿・売り手が押印済みの株主名簿書換請求書・役員の辞任届など会社の重要物品も同時に買い手へと引き渡されます。

5-6 株主名簿の名義書き換え

売り手側と買い手側が共同で会社に対し株主名簿の名義書換請求を行い、株主名簿を書き換えてもらいます。

株主名簿の書き換えが完了したら買い手は株式名簿の交付を受けて、自身が新しい株主になったことを確認します。

6章:有限会社を買収するリスクはある?

リスク

買い手にとって、有限会社を買収するリスクはゼロではありません。

なぜなら有限会社は上場ができないなど、株式会社との違いがあるからです。

ただし有限会社特有の特徴は、株式譲渡を行う上で大きなリスクにはなりえません。そのためほとんど株式会社の株式譲渡と同じ感覚で売却できます。

売り手は有限会社だからといって、特別大きな負い目を感じる必要はありません。安心して株式譲渡の交渉を進めてください。

齋藤さん

ただし有限会社・株式会社の別を問わず、株式譲渡にはリスクが伴います。詳しくは以下の記事で解説していますので、気になる方はチェックしてくださいね。

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まとめ

夜景と握手

有限会社は、株式譲渡での売却が可能です。

ただし現存している有限会社の株式は全て譲渡制限株式のため、譲渡を実行するには株主総会で承認を得る必要があります。

しかし、有限会社だからといって特別大きなリスクを負っているわけではありません。

そのため有限会社の経営者様は、安心して株式譲渡のプロセスを進めてください。

株式譲渡には高度な専門知識とM&Aの経験が必要なため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

無料相談などを上手く活用して、自社に合った専門家を見つけましょう。

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ABOUT ME
この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。