- 果たして会社を売るべきなのか?
- 会社を売ることは従業員にとって良い選択なのか?
- 会社売却のデメリットはあるのだろうか?
会社売却を考えたときに、こんな疑問が浮かぶ人は多いのではないでしょうか。
しかし調べ方が分からなかったり、M&A会社への問合せまだ早いと感じていたりしている人も多いかと思います。
そこでこの記事では、会社を売却する前に確認しておきたい4項目についてを解説しています。
この4項目を確認しておくと、本当にM&Aで会社を売却するべきなのか、はたまた別の手段を考えるべきなのかが見えてきます。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:会社を売却する目的と理由を明確にする
会社売却を検討する際にまず考えておきたいことが、なぜ会社を売るのか目的と理由を明確にしておくことです。
会社を売る目的や理由は、M&A実行時の軸となります。その軸が途中でブレてしまうと良いM&Aの結果が生まれにくくなってしまいます。
M&Aを成功させるために、しっかりと考えておきましょう。
1-1 自分自身の未来を考える
まずは社長自身が会社を売却することで得たい未来を考えます。
経営を続けたいor経営から引退したい
引退後の時間の使い方(家族、趣味、新規ビジネス、等々)
債務の返済から解放されたい etc.
上記が明確になると、それを達成するために必要となる資金(=最低でも売却で得なければならない金額)が判明します。
1-2 会社の未来を考える
自分自身がどうなりたいか考えた後は、会社そのものの将来についても考えましょう。
- これまで以上に発展してもらいたい
- 最低でも存続してもらえれば満足
- 社名は変えないor変えてもらって問題無い
- 合併で会社そのものが無くなっても問題無い etc.
会社の未来をどうしたいかによって、買い手の選び方が変わってくるのです。
1-3 従業員の未来を考える
会社売却後の従業員の未来についても考えましょう。
会社売却に伴って従業員は新しい親会社の下で働き続けることが基本ですが、必ずしも全員が買い手企業に移れるとは限りません。
たとえ新しい親会社の下で働き始めたとしても、雇用条件次第では従業員が辞めてしまうことも考えられます。
今まで一緒に頑張ってきてくれている従業員です。全員が幸せになれる方法を考えてください。
- 現状と大きく変わらないことが望ましい
- 最低でも●年は雇用を続けてもらい、できれば現在の条件からは落ちないでほしい
- 自社で仕事をすることの意義を失わないでほしい
- 安心感を持って勤め続けてほしい
- 親族の従業員の雇用は必須でお願いしたい etc.
1-4 取引先の未来を考える
会社売却は取引先など多くの人に関係する大きなイベントです。会社売却後に会社関係者それぞれがどんな状態になってほしいかを考えておきましょう。
この作業は買い手企業を選ぶ上でも大いに関係してきますので、ある程度明確にしておくことをおススメします。
2章:社長自身(売り手)が受けるメリット・デメリットを知る
M&Aを行うとなると、社長自身が売り手として受けるメリットが出てきます。しかしメリットがあればデメリットも出てくるもの。
ここでは、売り手が受けられるメリットとデメリットについて解説しています。
2-1 メリット
会社売却で得たい未来を明確にする上で、売却のメリットを知ることは重要です。
- 売却により個人資産が税率20.315%で手に入る(給与所得は最高55%との比較)
- 経営から離れることで、時間ができる
- 経営から離れることで、資金繰りの悩みから解放される
- 金融機関借入の多額の保証や個人資産の担保を外せる
- 大手の傘下に入りながら代表を続けることで、安定した環境で経営に専念できる
- 新たなビジネスを始められる
- 第2の人生をスタートさせられる etc.
上記で挙げたメリットを参考に、会社売却で得たい未来を考えてみてくださいね。
2-2 デメリット
会社売却は当然メリットばかりではなく、デメリットも存在します。
売却した後に「考えていなかった」「知らなかった」とならないためにも、しっかりと確認しておきましょう。
- (他の収入源が無ければ)定期的な収入源が無くなってしまう
- (代表取締役という)社会的地位を失ってしまう
- 大きな責任からの解放に伴い、張り合いを失う恐れがある
- 代表を続けたとしても、解任される恐れがある
- 会社の経費は自由に使えない
- 同じ事業は基本的にできなくなる
- etc.
3章:従業員が受けるメリット・デメリットを知る
基本的にM&Aで会社を丸ごと売却した際は、従業員も一緒に譲渡することになります。
従業員の雇用が守られる点においては、社長は一安心といったところでしょう。しかし、メリットばかりではありません。
新しい会社で新しい体制で働きはじめる従業員が受けるであろうメリットとともに、デメリットも確認しておきましょう。
3-1 従業員が受けるメリット
会社売却に伴い従業員が受けるメリットには、以下の9点が挙げられます。
- 大手の傘下に入れば(資本的に)安定した職場環境になる
- 会社消滅の不安が無くなるor回避できる
- 買い手企業でキャリアアップが図れる
- 買い手企業の研修制度などのスキルアップ環境が手に入る
- 仕事の幅が広がることで、自分を成長させる環境となる
- 優秀な人材と働く機会が増える
- 旧態依然の職場環境が変わる可能性がある
- 高い給料を狙える可能性がある
- 大手のグループとなることで住宅ローンが組める
- etc.
3-2 従業員が受けるデメリット
従業員を大切に想う社長ほど気になるのが、会社売却によって従業員が受ける可能性のあるデメリットについてです。
しかし会社が生き残るために会社売却が必要なケースもあります。
従業員が受けるであろうデメリットを最大限減らすように尽力するのも、社長の大切な仕事ですね。
- 経営者が変わることで働きづらい環境になる
- 就業規則などのルールが変わることで働きづらい環境になる
- 買い手企業側から新しい人材が入ってくることで働きづらい環境になる
- 働き方次第ではクビになる可能性がある
- 異動となる可能性がある
- 成果主義よりになることで給料などの処遇が下がる
- 望んでいない新たなスキル(資格など)を身に付けさせられる
- etc.
4章:会社にとってのメリット・デメリットについて知る
最後に知っておきたいことは、会社売却が会社自体に与えるメリットデメリットについてです。
4-1 会社にとってのメリット
会社は人が集まって成り立っている組織であり、権利義務の主体となることができる法人格を有しています。
そして売却の対象そのものですので、会社にとってのメリットも明確に把握しておきましょう。
- 大手の傘下に入ることで資金調達の難易度が下がる
- 取引先からは大手グループとして見られることで、取引条件が有利になる
- 大手グループとなることで、採用人材の質・量がアップする
- 買い手側のリソース(情報、顧客網、ノウハウなど)を活用することで業績が上がる可能性が高まる
- 会社としての意志決定ルールなどの整備
- 各種(財務・法務・人事等)のルールが追加されることによる基盤の強化
- etc.
4-2 会社にとってのデメリット
デメリットについては基本的に従業員の生産性低下が主な内容となっています。
買い手側にとっても避けたい点ですので、売却前に買い手企業の方針が自社に合うものかどうかを擦り合わせておく必要があります。
- 各種(財務・法務・人事等)のルール変更による業務の煩雑化
- ルール変更や経営者の変更による従業員の生産性の低下or離職
- 意志決定の遅延による顧客との関係性の悪化
- 買い手側の意向による人事異動に伴う従業員の生産性の低下or離職
- etc.
まとめ
会社を売却する前に明確にしておくべき事項として、以下の4項目が挙げられます。
- 会社を売却する目的と理由を明確にする
- 売り手が受けるメリット・デメリットを知る
- 従業員が受けるメリット・デメリットを知る
- 会社にとってのメリット・デメリットについて知る
この4項目を一つ一つ丁寧に考えていくことで、売却条件と売却先のイメージがある程度固まり、M&A成功の土台になります。
また、この4項目はM&A会社へ会社売却の依頼をする際にも重要です。
土台がしっかりしていれば、よりスピーディーに希望に合った買い手を探すことが可能になるからです。
売却後に後悔しないためにも、会社売却に動き出す前に必ず確認しておいてください。