M&A

M&Aに抱くイメージは?変化の歴史とマイナスイメージを払拭する方法も解説

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皆さんはM&Aに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?

この記事にたどり着いた方の中には、マイナスイメージを抱いている方もいるのではないでしょうか。

たしかに以前の日本では、M&Aはマイナスイメージを持って見られることが多くありました。しかし現在、そのイメージは大きく変わりつつあります。

そこでこの記事では、世間がM&Aに抱くイメージがどのように変化してきたのか、その歴史について解説します。

マイナスイメージを払拭する方法についても詳しく紹介していますので、M&Aをポジティブに捉えたい方はぜひ参考にしてください。

登場人物紹介

齋藤さん

インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!

社長

中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。

1章:M&Aにマイナスイメージが定着した歴史

時計

M&Aといえばかつては「身売り」や「乗っ取り」といったマイナスイメージをもって見られることが多いという事実がありました。

それではなぜ、M&Aはマイナスイメージで見られていたのでしょうか。それは、日本にM&Aが入ってきた歴史と深く関わっています。

ここでは、日本におけるM&Aの歴史とマイナスイメージの関わりについて見ていきましょう。

1-1 日本におけるM&Aの歴史の始まりはバブル経済期

日本におけるM&Aの歴史の始まりは、1980年代後半、バブル景気の真っ只中でした。

1988年にソニーがアメリカの音楽大手コロンビア・レコーズ(現ソニー・ミュージック)を買収したことをきっかけに、日本企業が続々とアメリカ企業を買収していきます。

ソニーに続いてセゾンがインターコンチネンタルホテルを買収。翌1989年には、三菱地所がアメリカ経済の象徴ともいわれたロックフェラーセンターを買収しました。

さらに1990年には、当時の松下電器(現パナソニック)によるMCA(ユニバーサル映画)の買収が実行されています。

これらの買収劇は新聞やテレビで大々的に報じられ、多くの人が「企業買収」という経営手法の存在を知ることになりました。

社長

バブル経済で、日本企業はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでしたよね。

1-2 世間に衝撃を与えたルノーによる日産の買収劇

松下電器によるMCAの買収からほどなくして1990年にバブルがはじけると、日本の景気は後退を始めます。

山一證券や北海道拓殖銀行など、潰れるはずはないと思われていた大手企業が破綻し、人々は大変なショックを受けました。

バブルがはじけた後のM&Aで世間に衝撃を与えたのが1999年にフランスの自動車メーカー、ルノーによる日産自動車の買収です。

破綻寸前にまで追い詰められていた日産は、経営再建のため苦肉の策としてルノーの子会社になることを選んだのです。

日産の経営を託されたカルロス・ゴーン氏は、わずか1年で業績回復へと導きます。

しかしそれまでの日本企業では見られなかった大規模なリストラ工場の閉鎖購買コストの削減といった急進的な改革は、日本人に大きな驚きとともに恐怖心を与えたといっても良いでしょう。

齋藤さん

このM&Aは経営破綻寸前の日産をカルロス・ゴーン氏がたった1年で救ったという事実と、これまで当たり前のように享受してきた終身雇用が脅かされるという事実を目の当たりにするという、2重の意味で世間に大きな衝撃を与えました。

社長

私もこのニュースは覚えています。たった1年で業績を回復させたことにも驚きましたが、血も涙もない経営改革には非常にショックを受けましたね。

齋藤さん

日本人はどちらかというと義理人情を大切にする国民性ですからね。当時はビジネスのためとはいえ、従業員をリストラするというやり方に反発を覚えた人も多かったみたいですね。

1-3 テレビドラマにもなった「ハゲタカファンド」

バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代初頭のM&Aは、海外企業による日本企業買収の時代でした。

なぜなら、バブル崩壊後経営の危機にさらされた日本企業には、海外企業へ救済を求めるしか再建の道がなかったからです。

齋藤さん

当時の日本には企業としての体力が残っている企業がおらず、起業再生への知見も少なかったのです。

社長

だから外資に頼るしかなかったのですね。

実は、当時行われていたM&Aの実に99%以上は友好的なものでした。しかし報道されるのは一部の派手な買収劇のみ。

中でも代表的なのが、ハゲタカファンドと呼ばれる外資系ファンドの存在です。

ハゲタカファンドは経営破綻に陥った企業に投資し、短期間に効率よく利益を回収する投資ファンドを批判的に表した言葉です。

外資系ファンドのやり方は、当時の日本企業の体質に馴染むものではありませんでした。そのやり方に反発を覚えた日本人が”ハゲタカファンド”という言葉を生み出したのです。

齋藤さん

弱った企業に目を付けて一方的に利益を得るその手法を、ハゲタカの習性になぞらえた呼称なんですよ。

社長

なるほど。しかし実際には、外資系ファンドに救われた企業もたくさんありましたよね。

齋藤さん

たしかにそうです。しかし当時ハゲタカファンドを題材にした小説やドラマが話題になったこともあり、M&A全体のマイナスイメージとして定着してしまったのです。

1-4 ライブドアによるニッポン放送に対する敵対的買収劇

ほとんどのM&Aが友好的だという事実にもかかわらず、一部の派手な買収劇だけが報道されたりハゲタカファンドがクローズアップされたりと、日本におけるM&Aのイメージは決して良いものではありませんでした。

そしてさらにM&Aに対する印象を悪化させた事件が起こります。ホリエモンこと堀江貴文氏のライブドアによる敵対的買収劇です。

ことの発端は2004年。堀江氏はプロ野球球団の近鉄バファローズの買収騒動で世間の注目を浴びることとなり、時代の寵児となりました。

続いて堀江氏は、翌2005年に村上世彰氏が率いる村上ファンドと手を組んで、フジテレビの親会社であるニッポン放送の株を大量に買い占めます。

齋藤さん

ニッポン放送の経営権取得のために動いていたフジテレビと激しく対立し、当時は連日のように大きく報道されていましたよね。

社長

私も覚えています。この出来事で、M&A=敵対的買収というイメージが強烈に焼き付きました。

齋藤さん

これまでも決して良いとはいえなかったM&Aのイメージに、決定打を与える出来事となりました。

2章:時代と共に変わってきたM&Aのイメージ

CHANGE

派手な買収劇や敵対的買収だけが大きく報道され、すっかりマイナスイメージが定着したM&Aでしたが、時代と共に少しずつ変化が訪れます。

齋藤さん

M&A自体が変わったわけではなくて、だんだんとM&Aが持つ本来の意味やイメージが浸透してきた印象ですね。

2-1 M&Aが広く知られてくるとともにイメージにも変化が

M&Aイメージの変化 (1)

引用元:中小企業庁 2021年版「中小企業白書」第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用

上の図を見てください。これは2021年版の中小企業白書から抜粋した、M&A支援機関から見た、10年前と比較した中小企業のM&Aに対するイメージの変化をグラフに表したものです。

企業を買収すること・売却すること共に「プラスのイメージになった」とする割合が9割前後となっており、ほとんどのM&A支援機関が中小企業のM&Aに対するイメージの向上を実感していることが分かります。

これはかつて大企業や上場企業だけのものとされていたM&Aが、中小企業へも浸透してきたことが、1つの要因として挙げられます。

齋藤さん

M&Aが中小企業にも広く知られていくと同時に、本来のM&Aの意味や目的が理解されて、マイナスイメージの払拭に繋がっていったと考えられます。

2-2 経営戦略の一環としてのM&A

社長

中小企業にだんだんと浸透してきたM&A本来の意味や目的とは、どのようなものでしょうか。

齋藤さん

事業承継や自社の発展を目的として実施されるということですね。

企業規模の大小を問わず、本来のM&Aは事業拡大や経営基盤の強化など、経営戦略の一環として選択されるものです。

近年では日本企業においても経営戦略の一環としてM&Aを選択する企業が増え、中小企業も例外ではありません。

そして国内でM&Aそのものの件数が増えてくるとともに、「敵対的買収」や「ハゲタカ」から経営戦略へと、M&Aのイメージにも変化が見られるようになったのです。

社長

M&Aのイメージが変わったというより、本来のイメージを取り戻した感じですね。

齋藤さん

そうともいえますね。M&Aに対する誤解が解けて、正しい理解が進んできた証拠ですね。

2-3 M&Aは後継者不在問題に悩む中小企業の救世主!

現在では、多くの中小企業が後継者不在問題に悩んでいます。

少子化の進行に加え、職業選択の自由が定着し、経営者の子どもが親の会社を継がないケースが増えたことが原因です。

そんな現代の中小企業において、第三者への事業承継が叶うM&Aは、まさに救世主ともいえる存在になりつつあります。

その証拠に中小企業におけるM&A件数は、10年前と比べて倍以上に増えているのです。

M&A件数の推移

引用元:中小企業庁「中小企業白書」2024年版 

社長

M&Aのイメージが良くなったから件数が増えたのか、件数が増えたからM&Aのイメージが良くなったのか、どちらなんでしょうね。

齋藤さん

どちらもお互いに作用しあっているのでしょうね。いずれにせよ、中小企業にもM&Aが浸透してきていることが分かります。

3章:自身が抱くM&Aのマイナスイメージに悩んでいるなら

悩んでいる男性

ここまでで日本におけるM&Aの歴史と、日本人がM&Aに抱くイメージの変化についてみてきました。

  • マスコミによる偏った報道が原因でM&Aにマイナスイメージが定着した
  • 日本でもだんだんと経営戦略の一環としてのM&Aが浸透してきた
  • 10年前と比べてM&Aのイメージは良くなってきている

ざっと上記の流れがお分かりいただけたかと思います。

しかしいくら世間が抱くM&Aのイメージが良くなってきたといえども、必ずしも自分の周りがM&Aに対して好意的な人だけだとは限りません。

また、M&Aを検討している社長自身でも、M&Aに対してのマイナスイメージを払拭しきれていない方がいるのではないでしょうか。

そのような状況下でのM&A実行は、周りから白い目で見られるのではないかと不安になりやすいものです。

ここでは、社長や周囲が抱くM&Aに対するマイナスイメージを拭い去り、経営戦略の一環として自信を持ってM&Aを実行するためのポイントをご紹介します。

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3-1 M&Aの目的をハッキリさせる

  • 何のためにM&Aを実行するのか
  • M&Aの実行で達成したい目的は何か

まずは、上記2点を明らかにしましょう。M&Aの目的は人や企業でそれぞれ異なりますが、具体的な目的の例を以下に3点挙げます。

  • 後継者不在問題を解決し会社を存続させるため
  • 経営の安定化を図るため
  • 経営基盤を強化し会社をさらに発展させるため
齋藤さん

どうですか?どれも立派な経営戦略ではありませんか?

社長

たしかに。会社の存続と成長を第一に考えた経営戦略ですね。経営戦略を実現するために、買い手という第三者が必要なだけです。

齋藤さん

その通りです。M&Aは、買い手という第三者の手を借りて、社長や会社が描いている経営戦略を実現する手段なんですよ。

3-2 買い手とはあくまでも対等な関係であることを肝に銘じておく

売り手の心理としてありがちだけど気を付けたいのが「自社を買ってもらう」という概念です。

  • 買ってもらう立場だから強いことは言えない
  • 買ってもらうから買い手より下の立場だ

などといった考えが浮かびやすくなりますが、決してそうではありません。

たしかにM&Aは、買い手が有利に交渉を進めやすい一面があります。しかし売り手と買い手の立場は、あくまでも対等です。

お互いに誠意を持って交渉に臨むことは重要ですが、必要以上に委縮する必要はありません。

齋藤さん

「買い手より下の立場だ」という考えは、劣等感につながる可能性があるため注意してください。

社長

たしかに劣等感を抱いていると、M&Aに対して後ろめたい気持ちになりそうですね。売り手と買い手は対等な関係だということを肝に銘じます。

3-3 M&A完了後の自分自身の未来をイメージしておく

売り手の中にはしばしば「会社を売却すること」がM&Aのゴールになってしまっている人が見受けられます。

しかしそれでは「身売り」や「会社から逃げる」といったマイナスイメージから抜けきれない可能性が高いため、あまりおすすめはできません。

経営戦略の一環としてM&Aを実行する旨を明確にするためには、M&Aが完了した後に自分自身がどのような人生を歩んでいたいのかをはっきりとイメージしておきましょう。

  • 事業承継を実現させて引退したい
  • M&A後も引き続き社長として経営を続けたい
  • M&Aで得た譲渡益を元手に新規事業を始めたい
齋藤さん

自分自身の未来をイメージし、その実現へ向けてM&Aを実行するのです。それはもう「身売り」や「乗っ取り」ではありませんよね。

社長

たしかに。M&Aは「叶えたい未来を実現するための手段」になりますね。

また、M&A完了後の人生についてイメージを固めることは、M&Aの目的を明確にする作業にもつながっています。

未来に叶えたい目的を設定し、それを実現するための手段としてM&Aが存在するという認識に、まずは社長自身から変えていきましょう。

齋藤さん

社長自身がM&Aに対してポジティブなイメージを持つことが重要ですよ。

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まとめ

躍動するビジネスマン

1990年代後半から2000年代にかけて一部の派手な買収劇だけが報道された結果、日本ではM&Aに対してマイナスイメージを抱く人が多くなっていました。

しかし時代と共にM&Aへのイメージは変わってきています。

「ハゲタカファンド」や「敵対的買収」といったイメージから、経営戦略の一環としてポジティブに捉える人が増えてきているのです。

また、かつてM&Aといえば大企業だけのものでしたが、近年では中小企業にも浸透してきつつあります。

特に中小企業では、後継者不在問題を解決するためにM&Aが選択される機会が増えています。

齋藤さん

M&Aの広がりとともに本来の意味や目的も知られるようになり、ポジティブなイメージへと変わってきたのですね。

とはいえまだまだM&Aに対するマイナスイメージが払拭しきれない場合は、M&A実行前に以下の3点について確認してください。

  1. M&Aの目的をハッキリさせる
  2. 買い手とはあくまでも対等な関係であることを肝に銘じておく
  3. M&A完了後の自分自身の未来をイメージしておく

M&Aとは友好的なものであり、理想の未来を実現するための手段として捉えられるようになるでしょう。

齋藤さん

それでも不安を拭い去れないときは、専門家や経験者に相談して意見を仰ぐと良いですよ。

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この記事を監修した人 齋藤 和寿
【インバースコンサルティング株式会社代表取締役】 後継者不足の解決や豊かなリタイアを望む経営者様に寄り添い「最幸のM&A」を実現するための情報を発信しています。 仕組み経営コーチとしても活躍中。会社の仕組み化×M&Aで、社長の人生を豊かに彩ります。