M&Aの工程をサポートしてくれる存在の中に、FA（ファイナンシャルアドバイザー）があります。
FAといえば、生命保険などのアドバイスをしてくれるイメージがありますが、M&AにおけるFAは全く別の業務を行う職業です。
本記事では、M&AにおけるFAについて、誰が行うどのような仕事なのかを解説します。
M&A仲介との違いや選び方についても紹介していますので、M&AのFAについて詳しく知りたい方や、M&Aの相談先を検討している方は、ぜひ本記事をお役立てください。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます！
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章：M&AにおけるFA（ファイナンシャルアドバイザー）とは
M&AにおけるFAとは、M&Aを検討している企業に対し、M&A計画の立案からクロージング（取引の成立）までの一連の手続きをサポートする者のことを指します。
通常FAは、買い手もしくは売り手のどちらか一方のみとアドバイザリー契約を締結します（片手取引）。
1-1 M&AでFAが担う役割
M&AにおけるFAの役割は、契約を結んだ買い手もしくは売り手の利益を最大化するためのサポート業務を行うことです。
M&Aの専門家として、企業分析やデューデリジェンス（DD）だけでなく、法務・財務・税務面への助言や戦略立案および交渉への参加などを行います。
依頼主の代弁者として、相手と交渉してくれるイメージで良いでしょうか？
そのイメージでOKですよ。
1-2 FA業務の担い手
近年はM&A取引が活発に行われており、それによりFA業務を取り扱う会社も増えています。M&AにおけるFA参入業者は、主に以下の5つに分けられます。
- FA専門会社
- 証券会社
- 金融機関
- 税理士・公認会計士事務所
- 経営コンサルティング会社
このうち証券会社や金融機関では、FAを専門に取り扱う部署を置いていることが多いです。会計事務所や経営コンサルティング会社などは、数ある取扱業務の1つとしてFAを取り扱っているところが目立ちます。
取引のある金融機関や顧問契約を結んでいる会計事務所がFAを取り扱っていると、M&Aの相談がしやすいですね。
なるほど。相談窓口としては身近ですね。
2章：FAとM&A仲介会社の違い
| FA | M&A仲介 | |
| 取引の種類 | 片手取引 | 両手取引 |
| サポートの目的 | 依頼者の利益を最大化 | 中立的な立場で全体の利益を最大化 |
| 報酬 | M&A仲介より高額になりやすい傾向 | 取引金額×料率で算出（レーマン方式）（な） |
| メリット | 依頼主の利益を最大化してくれる | スムーズな交渉が期待できる中小企業も利用しやすい |
| デメリット | 交渉が長期化することがある中小企業のFAには対応していないことが多い | 希望条件が全て通らないことも多い |
1章でも述べたとおり、FAは買い手もしくは売り手のどちらか一方と契約し、契約者の利益を最大化するための交渉を手助けします。
それに対してM&A仲介は、買い手と売り手双方とアドバイザリー契約を締結し、中立的な立場からM&Aのアドバイスを行います。
FAは依頼者の利益を最大化してくれる点がメリットですが、相手に対して過度な要求をしなければならない場面も出てきます。
それにより交渉が長期化したり、中には破談に至るケースがあることも事実です。
一方のM&A仲介は、双方の利益を最大化できる着地点を探る交渉をしていきます。
そのためスムーズかつ友好的な交渉の実施を期待できますが、いくつかの希望条件は妥協しなければならない可能性が高いです。
また、FAはどちらかというと大企業のM&AやクロスボーダーM&Aを中心に取り扱っている業者が多くみられます。
それに対してM&A仲介は中小や零細企業のM&Aに特化した会社も多く、企業規模の大小にかかわらず利用しやすい環境が整っています。
3章：M&AではFAと仲介会社のどちらを選ぶべきか
大前提として、中小企業がM&Aのアドバイスを求めるならまずM&A仲介会社の検討をおすすめします。
なぜなら、そもそもFAは中小のM&Aに対応していない専門家が多く、対応していたとしても報酬が高額になりやすい特徴を持っているからです。
その上で、FAをパートナーに選んだ方が良いケースと、M&A仲介が向いているケースについて解説します。
自社や経営者自身がM&Aに求めている目的を達成できるのはFAとM&A仲介のどちらなのか、冷静に見極めてください。
3-1 FAが向いているケース
M&Aの助言をFAに求めた方が良いケースは、ズバリ自分（自社）の利益を最大化したいときです。
買い手または売り手のどちらか一方に付くFAなら、希望条件を最大限満たしてくれる交渉の実施が期待できるでしょう。
そのほかにFA契約が向いているのは、上場企業のM&AやクロスボーダーM&A（海外M&A）です。
ただし、中小企業におけるクロスボーダーM&Aでは、M&A仲介会社を利用するケースが多くみられます。
3-2 仲介会社が向いているケース
中小や零細企業がM&Aを検討する際は、M&A仲介会社の利用がおすすめです。
中小企業の経営者の多くは、これまでにM&Aを経験したことがありません。
そのためM&Aの相手探しから交渉、クロージングに至るまでをトータルでサポートしてくれるM&A仲介会社の方が、安心してプロセスを進められるでしょう。
また、近年の中小企業では、後継者不在問題を解決するためにM&Aを選択するケースが増えています。そのような場合は事業承継に強みを持つM&A仲介会社を選択することで、希望に沿ったスムーズな事業承継を実施できる可能性が高まります。
まとめ
M&AにおけるFAは、M&Aを検討している企業に対し、M&A計画の立案からクロージングまでの一連の手続きをサポートします。
通常FAは、買い手もしくは売り手のどちらか一方のみとアドバイザリー契約を締結し、依頼者の利益を最大化するためのサポートを行います。
ただしFAは大企業間のM&AやクロスボーダーM&Aを主に取り扱っており、中小企業のM&Aには対応していないこともしばしばです。
FAのほかに中小企業のM&Aをサポートしてくれる存在として、M&A仲介会社が挙げられます。
それぞれの特徴やM&Aの目的を検討し、M&Aの依頼先を選定してください。
M&Aの依頼先を選定する際には各社の無料相談などを利用して、実績や信頼度・報酬体系・システムなどを社長自身の目で確認することをおすすめします。
