M&Aで会社売却を検討している人の中には、会社売却を実行した人がその後どのような人生を歩んでいるか気になっている人も多いのではないかと思います。
会社に残ることはできる?引退して第二の人生を謳歌する?どんな選択肢があるのでしょうか。
会社売却後にはいくつかの人生の選択肢がありますが、未来は明るいに越したことはありません。
そこでこの記事では、会社売却後の人生について実際の事例も踏まえてご紹介します。
ご自身が会社売却後にどんな明るい人生を送りたいか、考えながら読んでみてくださいね。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:M&Aで会社売却を行った後には明るい未来が待っている
最初に断言しておきます。
M&Aで会社売却を行った社長には、明るい未来が待っている可能性が高いです。
※経営が順調で、利益の上がっている会社のケースを想定しています。
なぜ明るい未来が待っているのか、以下で詳しく説明します。
1-1 売却益を受け取れる
まず最初に挙げる理由は、M&Aで会社売却を行うと売却益を受け取れるという点です。
- 新しい事業を始めるための元手になる
- リタイア後の生活費として使用できる
「手元に十分なお金がある」ということは、その後の人生においてプラスでしかありませんね。
1-2 借入などの負債から解放される可能性が高い
株式譲渡というM&A手法で会社売却を行った場合は、会社が抱えている借入などの負債を買い手側が引き継ぎます。
また、社長個人が抱えている借入などの負債や個人保証なども、買い手側との交渉次第では外せる可能性が高いのです。
つまり、社長は会社の負債からも個人の負債からも解放される可能性が高いというわけです。
返済計画を考える必要がなくなるため、気持ち的にもかなりスッキリしますね!
1-3 会社への責任から解放される
M&Aで会社売却を行うと、会社の経営権は完全に買い手側へ移ります。
そのためたとえM&A後も会社に残る選択肢を選んだとしても、会社経営への責任からは解放されるのです。
- 会社がいつか倒産してしまうのではないか…
- 借金で首が回らなくなってしまうのではないか…
- 何としてでも従業員の生活を守らなくては…
上記のような不安や重圧のない状態を想像してみてください。
心がずいぶん軽くなると思いませんか?
2章:M&Aで会社売却を行った後の人生3パターン
会社売却後の人生は、『十人十色』です。
皆さんそれぞれの人生を歩んでいるのですから、当たり前ですよね。
しかし十人十色な会社売却後の人生も、大きく3パターンに分けられるのです。
それぞれのケースについて見ていきましょう!
2-1 売却後もそのまま代表や役員として残りこれまでどおり働くケース
最近では会社売却後もそのまま代表や役員として残り、これまで通り働くケースが増えてきています。
ただし、株式を手放すことは株主総会の議決権を譲り渡すということです。ずっと代表もしくは役員として会社に残り続けられる保証はありません。
また、自身が会社売却後にも代表として会社に残るには、M&Aの際に買い手側との交渉で事前に取り決めておく必要があります。
そして大手のグループ会社は役員の任期は1年ということが一般的です。M&A直後は社長として会社に残ることができても、いずれ会社を離れるときのために次の人生について考えておく必要が出てきます。
- 多額の借入金に対する連帯保証債務が解除できる可能性
- リタイア後の人生について考える時間ができる
2-2 顧問等の立場となり会社に関与し続けるケース
役員としては退職しますが、顧問や業務委託先という立場で会社に関与していくというケースです。
なぜ会社に残るのか?
買い手にどんなメリットがあるのか?
という疑問が出てくるかと思いますので、理由を含めて解説していきます。
○会社に残る理由
M&A後も売り手側の社長が顧問などとして会社に残るケースの場合、以下の2つの理由が挙げられます。
- 創業者・代表者に会社のブランドが紐づいてしまっていて、切り離しが難しい
- 売却後の収入が望めないため継続的な収入が欲しい
創業者や代表者に会社のブランドが紐づいてしまっている場合、会社の顔である当人を会社から切り離すのが難しくなります。
これは会社の仕組みに社長本人が組み込まれてしまっているケースで、M&Aの場ではあまり良い状態とはいえません。
買い手側企業としても会社の顔がいなくなってしまっては困るため、M&A後も会社に関与し続けることになるのです。
その一方で、継続的な収入が欲しいという売り手社長の個人的な理由である場合も存在します。
ただしどちらのケースも買い手側とのM&A契約に内容を盛り込んでおく必要があります。売り手社長の「会社に残りたい」という気持ちだけでは実現できません。
また、売却後も社長や役員として会社に残り続ける場合と同様に、会社の引継ぎ機関が終わると退職になるケースも多く存在します。
その場合は退職後の人生も視野に入れて顧問期間を過ごすことが大切です。
○買い手側が得られるメリット
売り手社長が顧問として会社に関与し続けることによって買い手側が得られるメリットはM&Aによるマイナス(代表者の退任によるマイナス)を抑えられることです。
代表者の退任により懸念されるマイナスとは、具体的には以下の事例が挙げられます。
- 従業員の離職リスク
- 取引先の離脱リスク
- 後継者への引継ぎ
- 会社のブランド力の低下
上記のリスクを、代表者が会社に残ることで抑えようというのです。
2-3 売却後は完全に会社から離れるケース
- 会社売却後もそのまま代表や役員として残りこれまでどおり働く
- 顧問等の立場となり会社に関与し続ける
上記のケースでは任期が限られていることが多く、ゆくゆくは会社から完全に離れることになります。また、M&Aが成立し引継ぎが完了次第会社を離れる場合もあります。
いわゆる第二の人生がスタートするのですが、会社から完全に離れた人たちは果たしてどのような人生を送っているのでしょうか。
弊社で実際にM&Aを行ったクライアント様が選んだ第二の人生をご紹介します。
- Aさん:別の会社へ就職した
- Bさん:Webマーケティングのコンサルティング
- Cさん:資産運用をしている
- Dさん:別の会社を立ち上げてもう一度M&Aにチャレンジ!
- Eさん:なんとM&Aコンサルタントに!!
○別の会社へ就職したAさんの場合
Aさんの会社は社長であるAさん自身がまだお若く、売却した際の金額が小さかったために新たな収入を確保する必要がありました。
そのため新たに会社を立ち上げるのではなく、就職という道を選ばれたパターンです。
社長からイチ社員へ。一見すると降格のように感じてしまうかもしれません。しかし社長業の大変さや将来の収入など、多角的に考えて導き出した結論です。
社長業の煩わしさからは解放されたいけれど、安定した収入は必要だ。そう感じている社長にとっては大成功なジョブチェンジだったといえます。
○Webマーケティングのコンサルティング業を始めたBさんの場合
Bさんは会社から完全に離れた後は、ご自身の元々の強みであるWebマーケティング関連のコンサルティングを始めました。
組織を率いる重責あるポジションから一転、元々心からやりたかった道へ進まれたパターンです。
会社を手放して本当にやりたかった道へと進んだBさんのケースを思うと、M&Aは【社長の転職活動】という側面もあるのではないかと感じられます。
○資産運用を始めたCさんの場合
CさんもBさんと同様、会社から離れた後に元々やりたいと考えていた資産運用を始めました。
それなりの金額で会社を売却された方に必ず必要になるのが、【相続対策】という資産運用です。
実は相続対策は、年齢を問わず早めに対策をしておくべきテーマのひとつです。Cさんはこの相続対策から始め、だんだんと本格的に資産運用を行うようになりました。
豊かなリタイアのためにも、資産運用はひとつの選択肢として非常に有益です。
○新たな会社を立ち上げたDさんの場合
連続起業家、という言葉をご存知でしょうか?簡単に言ってしまえば、次々と0からビジネスを立ち上げていく方々のことです。
そして会社がある程度の規模になったところで、より業績を伸ばしてくれる企業に売却するというケースも増えてきています。
Dさんも連続起業家に似たような方です。次のビジネスのネタが思いつくと、手掛けずにはいられない性格のようですね。
社長業から別の会社の社長業へ。このような「第二の人生」もあるのです。
○M&Aコンサルタントに転身したEさんの場合
Eさんはなんと自分でM&A会社を立ち上げたのです。
1年くらいは旅行三昧の日々を送っていましたが、次は何をしようかと思案している中で、M&A会社をやってみようと思いたったそうです。
ご自身のM&A経験を余すことなく活かすとは、素晴らしいハングリー精神ですね。
また、ある程度の資産があれば数十年は無収入でもやっていける方は多いと思います。Eさんのようにしばらくは好きなことをして過ごすのも良いですね。
まとめ
会社を売却した後には、引き続き社長として会社に残る・顧問として会社に関与し続ける・完全に会社から離れるの3パターンがあります。
しかし会社に残ることを選んだとしても、遠くない未来には完全に会社から離れることになる人が多いという現実が待っています。
M&Aによって自由を手にした後にどのような人生を歩むのか。悔いのない人生を送るためにも、M&Aの検討段階から少しずつでも考え始めると良いでしょう。