以前の記事で「M&A会社を選ぶ4つのポイント」を書かせていただきましたが、今回はその中の「M&Aサービスを提供する会社」をより詳しく解説していきます。
M&A会社を選ぶからには「どのようなサービスを提供しているのか?」、「料金体系は?」等をある程度把握しておいた方が良いと思います。
特に重要な「最低限おさえておくべき4つの事」をまとめてみましたのでご参考としてみて下さい。
具体的な会社毎の違いまでは必要ありませんので、大きな括りで業界を眺めてみましょう。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:最低限把握しておくべき事
1-1 M&Aサービスの種類
会社の種類のご説明に入る前に、M&Aサービスの種類について確認しておきましょう。 M&Aのサービスには種類があることをご存知でしょうか?
ここでは大きな分類として、2種類あることを抑えておきましょう。
サービス内容は大きく分類すると①「仲介形式」と②「FA(フィナンシャルアドバイザー)形式」の2種類に分かれます。
①「仲介形式」
売り手・買い手双方の間に立ち、中立の立場となって双方の意向の調整役となることで、M&Aの成約に向けて尽力するサービスを提供しています。
②「FA形式」
売り手・買い手どちらかの立場に立ち、成約することではなく、顧客の立場でのアドバイスやサービスを提供します。
1-2 M&A会社の種類
次に、サービスの種類を踏まえた上で、会社の種類について見てみましょう。
ここでは会社の種類ごとで提供しているM&Aサービスに偏りがあることがお分かりいただけると思います。
先ほどサービス内容は2種類と書きましたが、「経験値や人的リソースが足りない」といった事情によりどちらのサービスも提供できていないという実態があることを抑えましょう。
M&A専門の会社
文字通りM&Aサービスを専門に取り扱っている会社です。
仲介会社としては上記のとおり「日本M&Aセンター」、「M&Aキャピタルパートナーズ」、「ストライク」といったところが有名です。
DMが多く届いていますので、社名をご存知のオーナー様も多いのではないでしょうか。 FA会社としては、やはりGCAが有名ですが、中小企業のM&Aにおいてはあまり聞きなれないかもしれません。
銀行、証券会社
みずほ銀行や野村證券などの「大手金融機関」と「地方銀行・信金・信組」に大きく分けて考えます。
規模の大きい中堅・大手企業のM&Aを手掛けているのが大手金融機関です。
FA業務を手掛けていることが通常で、1案件に関わる人数も多くなるため、最低報酬として数千万円後半や1億円といった金額も当たり前です。
一方で、地方銀行などは中小企業の後継者不在の問題もあり、M&Aサービスを提供するところが多くなってきました。
しかし、完全に銀行内でM&Aサービスを完結できるところはかなり少なく、外部のM&A専門の会社と連携していることがほとんどです。
ノウハウや人材が豊富な銀行であれば、仲介形式・FA形式をとられていることもありますが、実はそれは稀であると理解しておきましょう。
会計事務所・税理士事務所
顧問先に対するM&Aサービスを提供している先も出てきていますが、FA形式・仲介形式まで一気通貫でサービスを提供できるところは非常に少ないと思われます。
基本的に提携するM&A専門会社へご紹介されているケースが多いのではないでしょうか。
コンサルティング会社
経営コンサルティングを行う会社がM&Aサービスも手掛けてきています。
大手コンサルティング会社になると、FA形式・仲介形式どちらも提供されているようです。
その他事業会社
M&Aとは無関係の、上記のどれにも当てはまらない事業会社も存在します。
主に、自社の既存顧客に対してM&Aサービスを提供されているようです。
1-3 料金体系
料金体系は必ず気になるポイントだと思いますが、金額だけで決めることだけは絶対に止めましょう。理由は多くの会社の料金体系はそこまで大きな差が無いためです。
とは言え、「大体どの位の費用になるのか?」を知りたいと思いますので、簡単な計算方法を記載しています。
また、実際にご検討される場合に「確認するべきポイント」も記載してみました。
大まかな費用総額の計算方法
M&A会社へ支払う費用(弁護士・会計士等の専門家へ支払う費用は除く)は以下2つのどちらか高い方になります。
①取引金額(会社の売却金額のこと)×5%
②最低報酬500万円~3,000万円
大体の総額のイメージはこの方法で算出できますが、もちろん実際はもう少し複雑ですので、具体的に知りたい場合には問い合わせをして確認してみましょう。
【留意点】
※「取引金額」ではなく、「移動総資産」をベースにしている会社もありますので、その違いを良く理解してから依頼するようにしましょう。
※5%という数値は取引金額が大きくなるほど下がることが一般的です。
※最低報酬は会社により全く異なりますので注意が必要です。
確認するべきポイント
✔着手金
M&A会社との契約を締結した時点で発生する費用です。
着手金が発生する会社もしない会社も複数存在します。
✔月額報酬
M&A会社と契約を締結してから毎月発生する費用です。
中小企業向けのM&Aサービスではほとんど見ることはありません。
✔中間金
買い手候補先と基本的な条件で合意した時点で発生する費用です。
着手金と同じく費用が発生する会社もしない会社も複数存在します。
✔成功報酬
M&Aが成立した場合に発生する費用です。取引金額×●%という形式がほとんどです。
中には「取引金額」ではなく、「移動総資産」に●%を乗じて計算する会社があります。
会社によっては手数料が倍以上で変わってくるケースもありますので、ここは要確認ポイントです。
4章:ズバリ「完全成功報酬」が良いのか!?悪いのか!?
M&A会社には着手金・中間金がない「完全成功報酬」を謳う会社も少なくありません。かく言う私も実は成功報酬の会社で働いていました。
その経験から申し上げると、「着手金は、オーナー様に支払える余力があるのであれば支払う方が良い」というのが私の結論です。
その理由を記載していますので、まずは「着手金」を支払うこと・支払わないことのメリット・デメリットから順番に見ていきましょう。
【着手金を支払うケース】
「メリット」
・責任を持って進めてもらいやすい。
・手を抜かずに質の高い対応をしてもらえる。
「デメリット」
・売却まで進まなかった場合、着手金・中間金が戻ってこない。
・ノルマの達成のために着手金が目当てであって、契約したものの前へ進まない。
【着手金を支払わないケース】
「メリット」
・金銭的リスクは発生しない。
「デメリット」
・お金を受け取っていないために、担当者の動きが鈍くなりがちになる。
・自社の収益が上がりそうな案件に注力してしまう。
料金について本当に考えるべきリスクとは!?
どちらのケースも見ていて、「あれ!?」と思われたオーナー様は鋭い、、、
デメリットの欄に「M&Aが進まない」といった主旨の記載にお気付きになったと思います。
つまり、ここで考えるべき「本当のリスク・デメリット」とは「M&Aが進まず、いたずらに時間だけが過ぎていくこと」なのです。
それではなぜ支払う方が良いという結論なのかと言いますと、「対価を支払うことで責任を持たせ、しっかりとM&Aを前に進めていただく」ためです。
ちなみに、支払うことのデメリット「ノルマ達成のために・・・」は、ポイント4のM&Aコンサルタントのチェックリストで極力排除することが重要になってきます。
実際にあった売り手オーナー様の話
メリット・デメリットの内容には「M&A会社の都合」が書かれていますが、一部オーナー様のお声も参考にしていますので掲載させていただきます。
【着手金を支払う場合】
着手金目当てで契約する悪質なところもあるようで、オーナー様から聞いた話によると「全く動いている様子がない」ということもありました。
【完全成功報酬の場合】
こちらであっても同様のことが起こり得ます。買い手候補を探すことを諦めてしまい(別の案件に注力してしまい)、同様に動いている様子がないといった話もお聞きしています。
※ここまでであれば、「費用が発生しない成功報酬の会社を選んでおき、動いている様子がなければ他の会社に同時に依頼すれば良い」と考えがちですが、M&Aは多くの場合「専任契約」となりますので同時に依頼することができません。
どうしても変更する場合には、「契約の解除」について交渉が発生しますので、一度選んだら変えられない位の気持ちでM&A会社を見極めましょう。
今回の記事では、M&A会社の概要を知ることを目的にしてみました。
少し面倒だな、、と思うこともあるかもしれませんが、オーナー様の声を聞いてきた私の経験からすると、事前におさえるべきところは把握した上で依頼に動かれた方が良いと思います。
まとめ
【最低限把握しておくべき事】
- M&Aサービスの種類
- M&A会社の種類
- 料金体系
- ズバリ「完全成功報酬」が良いのか!?悪いのか!?
まだまだ「M&A会社の都合」や「オーナー様のお声」はあるのですが、挙げるとキリがないため今回はここまでにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!