「M&Aで会社を売却しよう」
そう決断しても、何から手を付けたら良いのか分からない人が多いのではないでしょうか。
会社を売却すると決断を下したら、まずは質の高いM&A会社へサポートの依頼を申し込みましょう。
M&A会社と契約をコンサルタント契約を交わしたら、その後にやるべきことは以下の3つです。
- 資料の収集と提出
- インタビューに応じる(隠し事はしない)
- キーマンの把握
この記事では、上記3点について解説しています。
何も知らない状態でいきなりM&Aに動き出すことに不安を感じる人や、M&Aで会社売却を検討している社長は、ぜひチェックしておいてください。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:資料を収集しM&A会社に提出する
M&Aを決断後、M&A会社との契約を締結します。
その後資料の提出を求められますが、可能な限り応じて下さい。財務関係のみならず、各種契約書関係や届出やその他さまざまな資料の提出依頼がきます。
- なぜそこまでの資料を求めるのか?
- 買い手探索は全ての資料を提出せずともできるのではないか?
あまりにたくさんの書類提出を求められるので、上記のように考える社長もいるでしょう。
しかしこの資料提出は今後の売却活動を左右する非常に重要な作業です。提出された資料を基にM&A会社は「企業概要書(IM)の作成」と「ビジネスモデルの理解」を行います。
特に企業概要書は、買い手候補先が買収の検討を行う上でメインとなる資料です。
質の高い企業概要書は、自社の魅力を買収候補企業へ存分にアピールするために必要不可欠な資料となるのです。
ただし買い手候補は、企業概要書だけを見て買収を決めるわけではありません。
買い手候補企業からM&A会社に対して「実際はどのような方(会社)なのか?」「なぜ売却をするのか?」といった書面上では表現しづらい点も確認されます。
その時にM&A会社が質問に対して回答できなかった場合、買収への意欲が低くなってしまう可能性が高いのです。
M&A会社は、M&Aの売買契約が成立するまで共にプロジェクトを進めていくパートナーといえます。
買収候補企業へ効果的にアピールして売り込んでいくためにも、パートナーが売り手企業についてしっかりと理解し魅力を感じている必要があるのです。
さらに提出された資料を用いて、買い手が決まった後に待ち受けている買収監査=デューディリジェンス(DD)で買い手から確認されるであろう論点を予め整理し、問題の有無を確認できます。
もし問題が発見されたとしても、事前に解決しておける可能性も高いのです。
実際に過去の事例では、提出された資料が不十分だったために問題が発生し、M&Aが破談になってしまったケースも存在します。
提出を求められた資料に関しては、可能な限り全て提出をお願いします。
2章:M&A会社のインタビューに応じる(隠し事はしない)
M&A会社に一定程度の資料を提出した段階で、ビジネスモデルと合わせて会社の全体像や詳細を確認をするためにインタビューを実施いたします。
資料提出のポイントと同様なのですが、ここで隠し事があるとM&Aの破談にもつながりかねない問題が発生する可能性がでてきます。
インタビューでは資料では確認できないことがあればそれも隠さずに伝えましょう。
たとえ隠したとしてもいずれは露見することになりますし、長期に渡って準備してきたことが台無しになってしまう可能性が高まります。
3章:キーマンを把握しリストアップしておく
最後のポイントは社内のキーマンを把握しリストアップしておくことです。キーマンは、M&Aが進んでいくとどこかで必ず重要な存在になってきます。
- 買収監査(DD)時に対応してもらう可能性があるから
- 買い手候補先にとって重要度が高いから
- M&Aを事前に打ち明けなければならない存在であり、正式発表までは内密にしてもらうから
3-1 DD時に対応してもらう可能性がある
ある程度の会社規模になると、社長が全てを一人で把握しているということは考えにくいと思います。
それにも関わらず、DDでは様々な質問が飛んできます。特に多いのは財務関係で、経理に聞かないと分からないということもざらにあります。
ほとんどの買い手候補先もDDを実施しない訳にはいかず、回答が無いことには前へ進まないといったことにもなり得ます。
そのため、キーマンには事前に開示し、DD対応を一部お手伝いいただくという場面も出てきます。
3-2 買い手候補先にとって重要度が高い
買い手候補先にとってはもっと重要かもしれません。なぜなら、買収後も残っていただかないと事業運営に支障を来してしまうためです。
また、事前にどのようなキーマンがいるのかを把握しておくことで、自社からの人材との連携や必要な人材の手当を考える必要があります。
3-3 事前に打ち明けなければならない存在であり、正式発表までは内密にしてもらうため
一般的に従業員への開示は「無事に株式の譲渡が終わったタイミング」で発表をします。
ただ、DD時に対応していただく必要があるキーマンは事前にM&Aという存在を知ることになります。
そこで口止めはもちろん、退職してしまわないようにしっかりと話し合いを行い、M&Aという決断をしたことに理解を得られるように努めなければなりません。
なぜなら、キーマンが抜けるとなった場合にはM&Aが破談になる可能性もあるからです。
株式譲渡後も同様で、株式譲渡契約書には「キーマン条項」が盛り込まれることもあります。※キーマンが辞めたら譲渡代金の一部を返還するといったペナルティを取り決めたもの
またキーマンは一人だけでなく、財務・経理・営業といったそれぞれの部署にキーマンが存在する会社も多いでしょう。
このキーマンについても良くM&A会社と会話し、M&Aのことを伝えるタイミング(正解はありません)を考えていただきたいと思います。
まとめ
会社売却を決断した後には、やるべきことが3つあることが分かりました。
- 資料の収集と提出
- インタビューに応じる(隠し事はしない)
- キーマンの把握
上記3点はM&Aで必ず行うことなので、事前に把握しておいて損はありません。
特にキーマンの把握は、M&A会社に依頼する前でも一人で進められる事項です。M&Aで会社売却を検討している社長は、事前に考えておいても良いでしょう。