「なんだか最近世の中の流れが変わってきている気がする」「以前と比べて何となく事業がしづらくなっているように感じる」
上記のように「具体的に何がどうとはいえないけれど何となく違和感を覚える」というようなことがあれば、それはもしかしたら経営環境が変化しているせいかもしれません。
日々の変化が小さいために、具体的に何が変わっているのかに気付けていない可能性があるのです。
しかし経営環境の変化は見過ごしてしまうと経営の悪化につながり、会社の存続にまでかかわり得る重大な事項といっても過言ではありません。
この記事では、主な経営環境の変化の原因と対応策を解説しています。
経営変化の波に呑み込まれて倒産に追い込まれたくないと考えている社長は、ぜひチェックしてくださいね。
登場人物紹介
インバースコンサルティング株式会社の代表取締役で現役のM&Aコンサルタントでもあります。記事内ではM&Aに関する疑問にどんどんお答えしていきます!
中小企業を経営している社長です。後継者不在に悩んでいて、M&Aを検討している真っ只中にいます。いつもは困った顔をしていますが、たまに笑顔になります。
1章:経営環境の変化についていけない会社は衰退の一途をたどる可能性
会社を取り巻く環境は日々変化しており、その度合いも小さなものから大きな変化まで様々です。
小さな変化もしくは一時的な変化なら、特に対策を立てなくても乗り越えられるかもしれません。
しかし大きな変化の波がやってきたときや、小さな変化が長期に渡って続いているときなどは、経営に大きな打撃を与える可能性が高いため注意が必要です。
経営環境の変化についてけないと、業績が悪化し会社は衰退の一途をたどる可能性が高いのです。
時代に取り残されてしまった会社に待ち受けている将来は、倒産という名の淘汰かもしれません。
そのような事態を避けるために、ここでは具体的な経営環境の変化を項目ごとに挙げて解説していきます。
自社の周りで起こっている項目がないか、今一度確認してみてください。
1-1 少子高齢化による市場の縮小
現代の日本では人口の減少とともに、少子高齢化が急速に進んでいます。
2021年時点での総人口は1億2,547万2,000人でその内訳は、年少人口(0~14歳)11.8%・生産年齢人口(15~64歳の人々)59.4%・高齢者人口28.8%でした。
これが2055年になると総人口は8,993万人にまで減少し、内訳は年少人口8.4%・生産年齢人口51.1%・高齢者人口は40.5%になると予測されています。
数字から見て分かるように、総人口が減少しているうえに子どもと若い世代の割合が減少し、高齢者の割合が増加しています。
総人口の減少が単純に市場の縮小へとつながっていると思うかもしれませんが、事態はもう少し複雑です。
なぜなら、消費意欲の高い生産年齢人口の割合が減少し、一般的に消費意欲が衰退するといわれている高齢者の割合が増加しているからです。
つまり少子高齢化に伴う市場の縮小は、単純に人口が減少する以上に規模が大きなものであるといえます。
<参考文献>
総務省統計局:人口推計(令和5年(2023年)1月確定値、令和5年(2023年)6月概算値) (2023年6月20日公表)
1-2 経済のグローバル化による競争の激化
昨今では経済のグローバル化が著しく、たとえ中小企業であっても世界中の企業が競争相手となっています。
人件費や材料費の安い海外の企業と競争して勝ち抜くためには、自社独自の技術やブランド力などを確立して、競争力を高めることが重要です。
1-3 仕入れ原価の高騰や円安などのコスト増
世界的な資源高がトレンドとなっている現在ですが、ロシアによるウクライナ侵攻などによりさらに資源高に拍車がかかっています。
それに加えて円安の影響で様々なものの値段も高騰しており、現在はいわゆる「インフレ」の状態にあるといってよいでしょう。
また、国内でも電気代やガス代などが軒並み値上がりし、コスト増の一因となっています。
自社の事業に欠かせない商品の原材料や電気代などの値上がりによりコストが増えると、当然ながら商品の価格も値上げせざるを得ません。
しかし商品を値上げすると、消費者による買い控えが起こる可能性があります。
逆に値上げを見送って販売を続けたとしても、商品1つあたりの利益が少なくなります。
今まで通りの利益を上げていくためにはより多くの商品を販売する必要が出てくる、いわゆる「薄利多売」の状態に陥ってしまうのです。
1-4 顧客ニーズの変化
世の中の移り変わりにより、顧客のニーズも日々変化し続けています。
顧客のニーズを的確に捉えて柔軟に対応できなければ、業績はたちまち悪化してしまうでしょう。
そのため世の中の考え方やトレンドを敏感にキャッチし、自社の業務に反映させていく柔軟さが必要です。
1-5 競合他社の台頭
自社の商品や戦略に大きな問題が見られなくても業績が悪化してしまうケースがあり、その原因の1つに競合他社の台頭が挙げられます。
早急に察知して対策を立てられなかった場合、そのまま大きくシェアを奪われてしまうことになりかねません。
巻き返しを図るためには、なぜ競合が勢力を付けてきたのかを的確に分析し、有効な対抗措置を講じなければなりません。
2章:M&Aで大手の傘下となり経営環境の変化に対応しよう
経営環境の変化は、常に高い位置でアンテナを張り先手先手で対策を講じ、柔軟に対応することで乗り越えていくものです。
しかし変化が大きすぎたり対策が遅れたりすると、自社だけでは対応しきれなくなってしまうケースも。
むしろ大きな経営環境の変化があった場合、中小企業は1社単独で乗り越えることが難しいことも多いでしょう。
会社はしばしば船に例えられますが、小さな船(中小企業)は小さな波でも簡単に転覆してしまいます。
しかし同じ規模の波を受けたとしても、大きな船(大手企業)はビクともしません。
そこで中小企業が経営環境変化の大波に耐えるためには、M&Aで大手企業の傘下になることが有効な手段として挙げられます。
会社という「船」が大きくなれば、少々の波では沈まなくなるのです。
また、大手の持つ技術力や販売網などを自社のそれと併せることにより、相乗効果(シナジー)が得られ、業績が大幅に上がる可能性もあります。
そのため経営環境変化の大波がやってきたときには無理して自社のみで対応しようとせず、早めにM&Aを検討しても良いでしょう。
3章:自分自身を含む家族や従業員の幸せを第一に考えて行動しよう
業績を上げ続けていくためには、常日頃から定期的に経営課題を見直し、経営環境変化に対して柔軟に対応できるよう体制を整えておかなくてはなりません。
また、いざ経営環境変化の大きな波に直面したとき、それを乗り越えるための施策も重要です。
しかしこれらは全て「自分自身を含んだ家族と従業員の幸せのためである」という概念が根底にあることを忘れてはいけません。
経営環境の変化を見過ごしたり対応が遅れたりした場合には、業績の悪化が考えられます。
そして業績悪化が続くとやがて会社は債務超過に陥り、その先に待ち受けているのは倒産の2文字です。
さらに中小企業の倒産は多くの場合、社長個人の破産もセットになっています。
経営環境変化の大波に自社のみで対応できるのか否か。
明るい未来のためには社長としての意地やプライドよりも、家族や従業員の幸せを最優先に考えた決定を下すことが重要です。
まとめ
会社を取り巻いている経営環境は、日々変化し続けています。
もし経営環境の変化に気付くのが遅れたり対応を誤ったりしてしまうと業績が悪化し、会社の存続にまで影響を及ぼす恐れが出てくるほどです。
自社の業績を安定させるためには、経営環境の変化に柔軟に素早く対応していく必要があります。
経営環境の変化にいち早く気づくため、定期的に課題の分析に取り組むなどの対策を講じましょう。
自社のみでは経営環境の変化に対応しきれないと判断した場合には、M&Aで会社を売却し大手の傘下に入るという選択も視野に入れてください。
社長にとって最も重要な仕事は、家族と従業員の幸せを守ることです。
自社のみで乗り越えられるのか、会社売却を行った方が良いのか、迷ったときは専門家への相談をおすすめします。
1人で抱え込んで手遅れになってしまう前に、周囲の手も借りて賢明な判断を下してください。