売却活動の前に考えるべきこと

M&Aとは検討開始から譲渡完了まで10ヵ月前後の期間を要する長いプロジェクトです。
※もちろん2・3ヵ月で終わってしまったり、1年以上・長いときには2~3年掛かるケースもあります。

当社では、売却活動開始前(当社などのM&A会社との契約前)にできる限り考えてから取り組む事がとりわけ重要となる、と考えています。

決断はしっかりと下すべきであり、売却をするべきか迷いながらするべきことではないということです。

 

どのような条件が出てくるか分からないので、まずはお相手の感触を確かめてみたい、という考えはありだと思っています。

ただし、その場合でも条件が最低このラインを超えていれば取り組むが、ここを下回ったら実施しない、という線引きが非常に重要です。

そこで、売却活動前に考えるべきことを4つのステップでまとめてみましたので、考えるためのご参考にしてみて下さい。

【ステップのまとめ】
 0.自分の役割について考える
 1.解決したい問題の明確化
 2.単独で解決できるのか?第三者の力を活用(M&A)するのか?
 3.M&Aによって解決した後の自分の姿

 

それでは、各ステップを順番に見ていきましょう。

【ステップ0.自分の役割について考える】

これは、自分が会社に対してどのような役割を担っているのかを改めて考える、ということです。

これをステップ0として記載したのには理由があります。

これまでの数多の経営者を見てきた感想として、会社の経営者でいることが目的となってしまっている方が稀にいらっしゃるからです。

これ自体はもちろん悪いことでは無いと思います。

株主兼経営者であれば、自由に運営できる正当な権利を有しているからです。

 

ただ、どんな経営者の方も口を揃えて話されるのは「従業員の雇用だけは守りたい」です。

従業員の家族の生活という責任までも間接的に負ってしまっているからこそのお言葉なのだと思います。

従業員の雇用だけは守る、ということは言い換えると、最低でも会社を維持させなければならない、ということです。

ここで経営者の“最低限”の役割とは

会社を最低でも維持させる

と言えるのではないでしょうか。

これを原点に考えていくと、この先で起きる「枝葉の事象」でブレることなく進んでいけると思います。

 

【ステップ1.解決したい問題の明確化】

先ほどのステップ0で会社を最低限維持させることが役割であると定義しました。

次のステップで、今の会社の規模を維持、そしてその先の発展をするためには、解決するべき問題はなんなのか?を考えてみて下さい。

 「問題例」
 ・受注状況は申し分ないが、採用が進まず人手不足でお断りしており売上が伸び悩んでいる
  →サービス提供(人の採用)の問題

 ・徐々に売上が下がり、借入金が増えている。商圏が限られており、加えて人口減少地域であるため起死回生の一手が思いつかない。
  →集客・販売の問題

 ・売上の8割が1社の取引先で成り立っている。徐々に売上単価が下がり、人件費は微増している状況であり、この先利益がどんどん減っていくことが見込まれる。社内の意識改革や業務効率化等を推進しているが、人材が待ったなしで高齢化していきどこかで飽和することがなんとなく見えてきた。
  →ビジネス環境の問題、サービス提供(人の採用)の問題、販売(取引先の開拓)の問題

【ステップ2.単独で解決できるのか?第三者の力を活用(M&A)するのか?】

前のステップでは、自社が現在解決したい問題を洗い出しました。

このステップ2ではその問題を解決するための具体的方法について考えてみて下さい。

先ほどの例で挙げた問題について、考えるための質問例を以下に作成しました。

 ・サービス提供(人の採用)の問題
  →どのような採用戦略を実行しますか?採用戦略を既に実行済みで効果が無いとすると、次の採用戦略はありますか?

 ・集客・販売の問題
  →これまでと同じ商圏でどのように集客をしますか?何らかの広告でしょうか?
   販売が上手く行っていないのだとすると、営業マンのスキル強化が必要なのでしょうか?
   その場合、誰がどのように営業力を付けるための社員教育を行いますか?
   商圏が限られているのであれば、営業エリアを拡大しますか?
   その場合、営業マンを新たに雇う必要がありますか?

 ・ビジネス構造全体の問題
  →ビジネス環境に問題ある場合でも、特に改善を要する問題はどこでしょうか?
   売上単価減少を食い止める方が先でしょうか?人材の高齢化に対応するべく採用強化でしょうか?
   いわゆる3Kで人が採用できない場合、外国人人材の採用に切り替えますか?
   サービスの提供者が日本人から外国人人材へ変わったことで、顧客からクレームが来る可能性はありませんか?

上記のような質問をご自身にぶつけてみて、いかがでしたでしょうか?

具体的なプランが立ち、

問題を解決できる確率が高いという感触を得ているならば、

おめでとうございます!

後は粛々と実行あるのみです。

 

しかし、残念ながら

具体的なプランが立たない

プランはなんとか立てたが解決できる確率は低いと感じている

という方は単独での解決ではなく、第三者の力を活用する方法を考える必要があります。

このステップでM&Aの活用が必要かなと感じた方は次のステップへ進んでください。
※第三者の力を活用する方法については長くなりますので、別の記事で書いていこうと思います。

【ステップ3.M&Aによって解決した後の自分の姿】

M&Aで具体的にどのような問題を解決するかを考えた後、まだやるべき大事なことがあります。

それは、オーナー個人の今後についてです。

ステップ1と2では会社について考えることがテーマになっていました。

しかし、会社のためではなく、リスクを負って突き進んできたご自身のことも考えていただきたいと思っています。

 

創業者利益という言葉をご存知でしょうか?

名前の通り、創業者(具体的には現株主)がこれまで会社の価値を高めてきたことへの対価として、株式譲渡により利益を得ることです。

ただ、考えるべきことはこれだけではありません。

 

ご自身が代表として残り”第三者の力を自ら活用して会社を拡大していく、という選択肢もあります。

あるいは会長や顧問となり”陰ながらサポートをするという選択肢もあります。

自由な時間を手に入れて、新たなことにチャレンジするという選択肢もありなのです。

当初の目的はなんでしょうか。

会社の維持・発展であり、そのための問題をM&Aによって解決できるのだとするならば、その後会社とどのように関与するかはオーナー個人の権利です。

責任感からではなく”素直に内なる声に耳を傾けて”ご自身の今後についてじっくりと考えてみて下さい。

 

ここまでの4つのステップは、売却前に考えるべきこと、になります。

言い換えれば、ここがある程度固まるまではM&A会社と契約はしない方が良いということです。

ここまで考えて始めて「後悔しないM&A」ができると当社では考えています。

 

長い記事となってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。